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小動物の相棒と歩む、土魔術師の冒険譚  作者: 風間 義介
4章、遺跡探求は帝国からの試練?
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18、

 騎士団からの依頼を終えて自分たちの寝床へ戻ったハヤトたちは、そのままベッドに倒れ込むと泥のように眠ってしまった。

 特にハヤトとアミアはありったけの魔力をつぎ込んで魔術を使ったのだ。

 精神的な疲労もそうだが、肉体的な疲労も重なり、カインとシェスカよりも深く、長く眠っていた。


「あいつ、まだ起きてこないのな……」

「普段からあんな感じではないはずよね、ハヤトとアミア」

「なんだったら俺よりも早起きだからな、あいつら」

「あなたは普段からだらしなさすぎるのよ。酒場で情報集めてるつもりかもしれないけれど」


 シェスカからの一言に、カインは息を詰まらせる。

 普段なら、シェスカが一番早く一日の行動を開始し、ハヤトとアミアがシェスカに続き、最後がカインという順番だ。

 これは、カインがほか三人と比べて就寝時間が遅めであることが要因の一つなのだが、カインは夜遅くまで酒場を練り歩き、ギルドに寄せられていない仕事がないか、どこかで魔物の大反乱や盗賊の発生がないか、情報収集をしている。

 ハヤトとアミアが気づいているかはわからないが、まさかシェスカにばれているとは思わなかったようだ。


「まぁ、それはそれとしてよ。さすがにちと遅い気がしないか?」

「そうね……魔術を使った後は、いつもあんな状態になるの?」

「いんや。ここまで寝坊助になったことはないぞ? こないだのカンダラの一件でも知ってるだろ?」


 ハヤトとアミア、そしてカインがシェスカとパーティを組むきっかけとなった盗賊団の討伐依頼。

 その依頼を終えて宿に戻った翌日、ハヤトとアミアは自分より遅く起きてきたものの、今の時間まで眠りこけているということはなかったはず。

 シェスカはそのことを思い出し、そういえばそうだった、と口にする。


「……けど、だったらあの時と今回と何が違うのかしら? そりゃ、岩巨兵(ロックゴーレム)の動きを止めただけでなくひびを入れるほどの力がある茨を作り上げたんだから、かなりの魔力を使ったんでしょうけれど」

「それもあるかもしれねぇけど、たぶん別のことが原因だぞ」

「別のこと?」

「あぁ。多分、自分が使うことができない属性の魔術を無理矢理発動させたんじゃないか?」

「自分が使うことのできない属性の魔術?」


 シェスカはカインの言葉に首をかしげる。


「あぁ、そういや話してなかったっけ? あいつ、魔術の属性は一つしか扱えないんだとさ」

「え……そんなこと、あるの?」

「さぁな。けど、俺が初めてあいつらと組んで仕事した時、自分の苦手な相手の対策するのに巻物を大量に買ってたし」

「大量の巻物って……そんなのどうするのよ? というか、巻物なんて高級品を大量にって、いったいどんな手を?」


 魔法陣が記入されている巻物はそれなりに高価なものが多い。

 シェスカから見て、ハヤトたちはとてもではないが裕福な冒険者パーティとは言い難いパーティだ。

 かといって、その日暮らしにも苦労するほど貧乏というわけでもないが、金銭に余裕があるというわけでもない。

 とてもではないが、大量の巻物を購入することができるとは考えにくく、いったい、どんな汚い手段を使っているのかと疑いたくなってしまうことは、仕方のないことではある。


「あ。言っとくが、あいつは変なことして金の稼ぎ方してるわけじゃないぞ?」

「それはわかってるわ。あなたじゃないんだし」

「おいおい……」

「で、ハヤトとアミアはどうやって、そしてどうして大量の巻物を生活資金を削らないで購入してるのかしら?」


 シェスカのその疑問に、カインが堪えようと口を開いた瞬間。


「巻物それ自体が製造過程のミスでうまく機能しないから廃棄処分になる予定のものだから、だよ」


 ギルドの依頼受付カウンターのあたりから声が聞こえてきた。

 声がした方を見ると、ぼさぼさ髪に寝ぼけ眼の状態になっているハヤトと、まだ眠気から完全に抜け出せていない様子のアミアがいる。

 どうやら、ようやく二人が起きてきたらしい。


「おぅ、おそようさん。お二人とも」

「おそよう……だいぶ寝ちゃってたみたいだけど、あれからどれくらい経ったの?」

「まだ一日しか経過してないわ。いまは……お昼を少し過ぎたくらいかしら?」

「かな? だいぶ眠りこけてたみたいだな」

「うん、まぁ……けっこう魔力使ったし、慣れないこともしたからねぇ」


 あくびを噛み殺しながら、カインの言葉にアミアが応じる。

 慣れないこと、という言葉に反応したカインが問いかけようとする言葉を遮り、シェスカがハヤトに問いかけていた。


「それはそれとして、どういうこと? あなたほどの魔力ならほかの属性の魔術も使えるものだとばかり思っていたけれど」

「ん~……どういうわけか、俺、一つの属性しか魔術を使えないんだよ。ただ、魔法陣に属性変化の術式が加わってればほかの属性の魔術も使えるんだ。けど、俺、魔法陣を描いたこと、ないんだよ」

「だから、巻物を……」

「そういうこと。そういや、騎士団から連絡はあった?」


 一日しか経過していないといっても、すでに昼を過ぎるくらいまで眠りこけていたというのなら、騎士団からの連絡もあったのではないか。

 そう思ってハヤトがシェスカとカインに問いかける。


「それがまだなんだよなぁ……」

「話し合いに時間がかかっているのかしらね」


 報酬の受け渡しにてついて、報告にあった魔物の証明部位が本物であるかどうかを宮廷魔導士たちに鑑定してもらい、さらにはハヤトたちが最後に到達した大広間の装飾についての会議も開かれることになるのだろう。

 受付をしていた騎士はそうなることを予見し、後日の報酬受け渡しを提案し、報酬受け渡しについては、決定次第、ギルドに連絡がいくことになった。

 だが、その知らせはいまだに来ていないのだ。


「時間がかかるのはわかるけど、せめて、報酬の受け渡しはさっさと決めてほしいな……」

「だよなぁ……」

「だねぇ……先立つものへの不安をさっさと解消させるって意味でも」


 決して、報酬の受け渡しが遅いことに対する不満を述べているわけではない。

 そういうわけではないのだが、その時その時に受けた依頼の報酬で生活をしている冒険者にとって、報酬未払いは絶対に避けてほしいため、早く通達が来てほしいとハヤトたちは願っているのだ。

 とはいえ、言葉にすることはさすがにどうなのだろうか。

 シェスカが文句を言おうとしたその瞬間、ハヤトたちの願いが通じたのか、ギルドの職員がハヤトたちに声をかけてきた。

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