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小動物の相棒と歩む、土魔術師の冒険譚  作者: 風間 義介
4章、遺跡探求は帝国からの試練?
58/64

16、

 ハヤトとアミアの共同作業によって発動した魔術により、岩巨兵(ロックゴーレム)を拘束したことでできたチャンス(勝機)

 それを逃すことなく、カインが岩巨兵の体にできたひびに楔を打ち込み、そこにシェスカが渾身の拳を叩きこんだ。

 その結果、岩巨兵は崩壊し、再生する様子もなく沈黙を保っていた。


「終わった……のか?」

「再生する様子もないから、多分、そうなんじゃないかな……」

「つ……疲れた……てか、もう撤退しない? 俺、もうこれ以上魔術使えない……」

「僕も、もうだめぇ……」


 動き回ったせいか、大量の汗を浮かべ、呼吸が少し荒くなっているカインとシェスカに対し、ハヤトとアミアは汗一つかいていない。

 にもかかわらず、ハヤトは地面に座り込み、アミアはハヤトの肩の上で力なくうなだれている。

 体力自体は、二人ともたいして消耗していない。

 だが、今までで経験したことがないほどの量の魔力を消耗してしまった。

 自身が保有する以上の魔力を必要とする魔術を行使するために、二人は自分の生命力を魔力へと変換したため、スタミナも消費されてしまったらしい。


「どうするよ? 一応、この先があるみたいだけど……」

「今の状態で先に進んで、無事でいられると思う?」

「……無理だな」


 ハヤトを助け起こしながら、カインがこの先の通路を進むかどうか聞いてきたが、逆にハヤトから問いかけられてこの先へ進むことは危険であると判断し、口に出した。

 物資もそうだが、何より、先ほどの岩巨兵との戦闘でかなりの体力と魔力、そして武器を消耗している。

 少し休んで先へ進む、という選択肢もなくはないがあの岩巨兵から考えるに、この先にはより討伐難易度の高い存在が控えている可能性が高い。

 ならば、ここまで到達したという証拠を集めて、さっさととんぼ返りしたほうが自分たちの安全につながるというもの。

 安全を確保して、誰一人欠けることなく帰還することを第一の目標としているハヤトたちにとって、ここで引き返すという選択がもっとも正しいことになる。

 それをわかっているからか、このパーティの中で一番欲深いカインも。


「だな。ここらで撤退ってのか、一番無難だな」


 と、撤退することに対してまったく文句を言うことなく、その提案を受け入れていた。

 方針が決まったハヤトたちの動きは早い。

 動きが鈍くなっているハヤトにカインが肩を貸し、カインではなくシェスカが先行する形で一行は大広間を出る。


「まさか、カインに肩を借りる日が来るとは……」

「おいおい、なんだよその言い草は」

「いやぁ……ねぇ?」

「うん。正直、意外」


 助け合いの精神、などというものは欠片も持ち合わせていなさそうな性格のカインが、まさか肩を貸してくれる日が来るとは、ハヤトもアミアも思っていなかったようだ。

 もっとも、カイン本人は一応、助け合い精神は持ち合わせているつもりらしい。

 それを発露するタイミングがいままでなかっただけであり、本人は本人なりに、いつもパーティメンバーを気にかけていたようで。


「ちぇっ……やっぱ普段やらないことはするもんじゃないなぁ……」


 若干、いじけ気味にそう呟いていた。

 もっとも、本人としても、助け合い精神を表に出すこと自体、普段はやらないことであると自覚しているようで、あまり気にしている様子はないのだが。


「ごめんごめんて」

「あ、そういえば、カイン」

「んぁ? どしたよ、アミア」

「ゴーレムの(コア)、持って行かなくていいの?」

「それがよぉ……いや、どうせまとめて報告することになるからいいか」


 魔物との戦闘を行った場合、ギルドに報告を行い、その魔物に見合った分の追加報酬を受け取ることができる。

 その報告の際、討伐証明として耳や手足の爪、牙、体毛など、体の一部分を採取し、提出しなければならない。

 巨兵(ゴーレム)の類を討伐した場合、その原動力となっている核と呼ばれる部品、あるいは体の一部分が討伐証明箇所となる。

 それらを持ち出し、騎士団に報告する必要があるのだが、それを持ち出している姿を見ていない。

 だが、そのわけをカインは教えてくれなかった。


「どういうことだよ、それ……」

「まぁ、こっから出たらわかるって。あ、心配しなくても、岩巨兵の討伐部位はしっかり回収したからよ」

「……そういう問題じゃないんだけど」


 まぁ、いいか。

 うまくはぐらかされたような気がしないでもないが、ひとまずここで問答をして体力どころか気力まで消耗してはたまったものではない。

 ハヤトもアミアもそう考えてそれ以上の追及をあきらめた。






 ハヤトたちが大広間から立ち去って数分後。

 崩壊した岩巨兵のがれきの中で、赤い光が点滅を始めた。


《実力測定、完了。測定の結果を分析……》


 がれきの中の赤い光が点滅すると同時に、無機質な音声がどこからか響いてくる。


《分析完了》


 無機質な声がそう言葉を紡ぐと、遺跡の奥から足音が響いてくる。

 足音は徐々に大広間へと近づき、足音の主は姿を見せた。


《測定用人形の記録核。ならびに動力炉を回収。これより、最深部へ帰還する》

《帰還中に分析結果を報告》

《承認》


 足音の主はがれきの中から点滅する岩を発掘すると、軽々と持ち上げ、通路の奥へと戻っていく。


《特定属性特化魔力の保有者、ならびに同行する霊獣に『かの大樹』の魔力を確認》

《測定場所の残留魔力を確認……確認終了。『かの大樹』に由来する魔力をこちらでも確認》

《崩壊の大きな要因として、属性特化魔力保有者ならびに霊獣の間で行われた魔力交換および増幅によって使用された魔術を報告》

《問う。属性特化魔力保有者に『宿すもの』の可能性は?》

《分析から、魔力保有者は『つながるもの』、霊獣は『宿すもの』である可能性あり、と結論付ける》


 その言葉を最後に、岩巨兵と足音の主が出てきた通路への扉は閉じてしまった。

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