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小動物の相棒と歩む、土魔術師の冒険譚  作者: 風間 義介
4章、遺跡探求は帝国からの試練?
57/64

15、

 シェスカが岩巨兵(ロックゴーレム)の注意を引き付けていた頃、ハヤトの隣に到着したカインは、シェスカと話したことをハヤトに伝えた。


「てわけだから、もうちっと威力高めのやつ、頼む」

「いや、いきなりだなおい……」

「いきなりってもんでもないだろ? さっきの見てたなら、生半可な攻撃じゃあいつ、倒れてくれねぇぞ?」

「いや、それはわかるんだけどさ……わかった、わかった! とりあえず、シェスカに負担がかからないようにかく乱、頼んだ」

「了解!」


 ハヤトの言葉に、カインはにやりと口角を吊り上げ、再び、岩巨兵に向かって走り出す。

 その背中を見送りながら、ハヤトは岩巨兵に視線を向ける。


――威力高めのやつっていってもなぁ……さっき、あいつの体を削った岩槍(ロックランス)も、結構魔力込めてから撃ったんだよなぁ……


 遺跡を崩落させる危険性が少なく、かつ、威力が高い魔術となると、いまここでハヤトが使用可能となる魔術の選択肢はかなり絞られてしまう。

 だが、それは攻撃魔術に限った話。


――動きを制限するくらいなら……


 ハヤトはそう考え、ポシェットに隠れているアミアに声をかける。


「アミア、さっきのカインの話、聞こえてたよな?」

「う、うん。けど、どうするのさ? こんな狭っ苦しい場所じゃ、大型の魔法なんて使えないんじゃ」

「だから、あいつを拘束する。少し、力を貸してくれない?」

「……どうするの? ハヤトの魔力を別の属性に変換するってわけじゃないよね? 僕の魔力と君の魔力、どっちも土属性の比重が高すぎるし」


 ハヤトの言葉に、アミアはため息をつく。

 そもそも、理由はまだわかっていないのだが、ハヤトは土魔術以外使用できない。

 だが、魔術を発動させるために必要な術式の記述さえあれば、そこに魔力を流すことで、土属性以外の魔術を発動させることもできる。

 そのためにハヤトは依頼に出発する前に巻物を用意し、自分の属性だけでは対応できない状況に備えているのだ。

 そして、その属性変換のために必要なものは、術式が記された巻物である必要はない。

 その役割は人間であっても可能ではあるが、他者の魔力を体外から取り入れ、自分の属性に変換し、相手に返すということは、かなりの高等技術であり、理論だけを頭に叩き込んだとしても相当な年数の修練を経て修得する必要があるものだ。

 霊獣であり、人間よりもはるかに長い時間を生きてきたアミアならば、あるいは片手間に行うこともできるだろう。

 だが、アミアの魔力とハヤトの魔力はともに土属性の比重が高く、属性を変換するために魔力をやり取りする意味がない。

 そのことをハヤトは失念しているわけではなかった。


「うん。だから、ちょっと別の力を使いたいんだ」

「別の力?……あぁ、そういうことね」


 ハヤトの一言に、アミアは何かを理解したらしい。

 ポシェットから素早く飛び出すと、ハヤトの肩に乗り、振り落とされないよう、がっしりとその服をつかむ。

 同時に、アミアの体毛があふれ出た魔力の流れで逆立ち、波を打ち始める。


「僕を通じて、ハヤトの魔力でも植物を扱えるようにすればいい。そういうことだよね?」

「あぁ。負担をかけることにならないように気を付ける」

「それだけはほんとに頼むよ? あ、あとできれば」

「今度の食事、干した果実もつけるってことで」

「さっすが! わかってるねぇ」


 にへら、と笑みを浮かべるアミアに苦笑を返しながら、ハヤトは自分の魔力をアミアに流し込む。

 アミアに流れ込んできた魔力は数秒とすることなく、ハヤトへと戻っていくが、戻ってきた魔力にハヤトは少しばかり違和感を覚えた。

 だが、その違和感は決して不快なものではない。

 むしろ、自分の試みが成功している証である。


「地に根を張り、あまねく生命に祝福もたらす大樹よ。その力の根源をいまここに――」


 ハヤトは目を閉じ、アミアとの魔力循環が切れないように注意しながら、魔術の詠唱を行う。

 普段ならば、ハヤトは魔術を使う際に詠唱を行わない。

 それだけ自分が扱う魔術の使用に慣れていたということなのだが、今回はアミアという第三者との間に魔力のリンクを結んでいる。

 そのリンクが切れてしまうと、どのような悲惨な結果が生まれるかわからない。

 最悪、魔力が暴走してしまい、周囲一帯を魔力の爆発が包むことになる。

 それを避けるため、魔力の安定と使用する属性や特色を無意識下に固定する魔術詠唱を行っているのだ。


「――かのものに戒めと罰の鎖を! 棘持つ根の束縛(ソーンバインド)!!」


 詠唱を終え、魔術を発動させると、ハヤトの足元から茨のような棘を供えた太いツタが伸び、岩巨兵の腕や足、胴体に巻き付く。

 当然、岩巨兵はその拘束から逃げ出そうともがく。

 だが、もがくたびに締め付ける力をさらに強くし、体に食い込んだ棘がひびを入れ、ハヤトたちをより優位にさせていることに、岩巨兵は気づいていない。

 その様子に、カインは笑みを浮かべ。


「注文してた魔術と違うけど、これはこれでグッジョブだ!」


 もがいている岩巨兵との距離を詰め、かなりの数になってきた亀裂の中で、とりわけ深い箇所に楔を打ち込む。


「シェスカっ!」

「これで、終わりっ!!」


 カインがシェスカの名前を叫ぶと同時に、シェスカは拳を構えたまま岩巨兵との間合いを詰め、カインが突き刺した楔に向けて、拳を振り下ろす。

 シェスカの拳に押され、打ち込まれた楔はより深く突き刺さる。

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