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小動物の相棒と歩む、土魔術師の冒険譚  作者: 風間 義介
4章、遺跡探求は帝国からの試練?
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7、

 スケルトンの襲撃を受けたハヤトたちだったが、ハヤトが作り上げた石の杖を武器に、弱点である頭蓋を打ち砕いていた。

 だが、砕けども砕けだけども、その数が減っているようには感じない。

 さすがに疲労と違和感からか、前衛を担当するシェスカが声をあげる。


「キリがないわ! ここは一度、態勢を立て直しましょう!」

「けど、どうすんだよ、これ!」


 態勢を立て直すといっても、具体的な作戦があるのか。その疑問から、カインがシェスカに問いかける。

 だが、カインの言葉に返ってきた声はシェスカの者ではなく、ハヤトの者だった。


「通路に撤退して、魔術で壁を作る。ある程度の高さと厚さがあれば、こいつらに突破は難しいはずだ」

「オーケー、それでいこう!」

「しんがりはわたしが! ハヤトは先行して」

「了解!!」


 方針を決めるや否や、ハヤトはシェスカの提案通り、通路へと撤退していく。

 カインも少し遅れてその後に続き、シェスカがカインの追いかけるように走りだす。

 三人が通路に入ると。


「今よ!」


 シェスカがハヤトに合図を送る。

 同時に、ハヤトは通路の壁に手を当て、自分の体内で魔力を練り上げると。


岩壁(ロックウォール)、複数展開!」


 魔術を発動させると、天井と床から厚みのある岩の板が伸び、シェスカを追いかけてくるスケルトンの行く手を遮る壁となったのだが、スケルトンの頭が見える程度の隙間が残っている。

 スケルトンたちはその隙間から入り込もうようとしてくるが。


「はっ!」

「もういっちょ!!」

「はははっ! こりゃ楽勝だな!!」


 シェスカの拳やハヤトの魔術で作られた棒でタコ殴りにされていた。

 頭だけを隙間に入れるということは、反撃を許されない状況で、ハヤトたちに弱点だけをさらけ出すということでもある。

 少しでも知性のある魔物、緑小鬼や森狼のような魔物であれば、現在の状況が罠であることを察し、突入してくることをためらっていただろう。

 だが、スケルトンにそんな知性は存在しない。かといって、防壁を無理矢理破壊できるような膂力も持っていない。

 もはや、この戦術にはまってしまった時点で、ハヤトたちが接敵したスケルトンたちの運命は決定してしまった。


「これで、おしまいっ!!」


 シェスカの鋭い拳が残っていた最後のスケルトンを貫くと、壁の向こう側からの襲撃は収まった。

 少ししても追撃が来ないことを確認すると、ハヤトは再び通路の壁に手を添え、魔術で作った壁を再び魔術で破壊し、襲撃にあった部屋への通路を空ける。

 するとカインが我先にとばかりにスケルトンの破片の中へと分け入っていく。

 その場にうずくまると、カインは何かを探すように手と視線を動かす。


「お、あった! これなら買い取ってもらえそうだな」

「おぉ、結構立派なのが残ってたな」


 スケルトンの上腕部や大腿骨のような太い部分の骨は魔道具の素材や魔術巻物を作成するためのインク、肥料や飼料などに使用されるため、それなりに需要がある。

 そのため、遺跡や墓地などでスケルトンに遭遇し、退治した冒険者たちにとって貴重な収入源の一つだ。

 ここ最近は金欠気味ということもあり、カインはスケルトンの素材を少しでも売って懐を温めようと考えているようだ。

 カインに便乗するように、ハヤトもスケルトンの欠片の中に入り、骨や魔石と思われる光沢のある小石をどんどん回収していく。

 その光景を、シェスカがどこか複雑そうな表情を浮かべながら見ていることに気づき、いつの間にかポシェットから出てきていたアミアがシェスカの肩へと移動する。


「どうしたのさ、シェスカ。なんか浮かない顔しているけど」

「えぇ……」

「さっきの戦闘でどこか怪我したとか? それとも、さすがに少し疲れたとか?」

「そんなことじゃないの。ただね……」


 矢継ぎ早に問いかけてくるアミアに苦笑を浮かべ、少し考えこみ。


「魔物とはいえ、人間の姿をしていたのだから、もう少し、敬意を持ってもいいような気がしていただけよ」


 シェスカの言葉に、アミアは腕を組む。

 確かに、スケルトンは人型の魔物だ。

 意思の疎通ができない以上、戦う以外の選択肢が存在しないのは事実だし、魔物の素材が冒険者の収入源であることも、シェスカはわかっている。

 わかっているのだが、死体を漁っているようなその光景には、どこか考えさせられるものが彼女にはあるらしい。

 シェスカのその言葉に、アミアは腕を組んで唸ってしまう。

 その気持ちはわからなくはないのだが、アミアはどうにも感覚がつかめない様子だ。


「う~ん……いや、気持ちはわからなくはないんだけど、そんなに気になることかなぁ?」


 ハヤトと出会ってから、アミアは人間の冒険者暮らしというものを見てきた。

 生活のために何かを犠牲にすることは当然のことだし、利用できるものはどんなものでも利用し、稼げるときに稼ぐ。

 そんな生活が続いているため、アミアもハヤトやカインと同じく、スケルトンから使える素材をはぎ取る行動に何の違和感も覚えていない。

 気持ちを理解できないわけではないのだが、やはりそのあたりの感覚にズレのようなものはあるようだ。


「ほっとけほっとけ」


 不意に、素材の採集をしていたカインがアミアに声をかける。

 どうやら、二人の会話が聞こえていたようだ。


「シェスカはいままで護衛とか犯罪調査の手伝いとかしかしてこなかったんだ。俺らみたいな平凡な冒険者がどれだけ泥にまみれてんのかを知らねぇのさ」

「ちょっと、カイン! いくらなんでもそんな言い方はないんじゃない?!」


 カインのあまりといえばあまりな言い方に、アミアは文句を言おうとするが。


「いいのよ、アミア。本当のことだから……それより、早く奥に進みましょう?」


 シェスカ本人がアミアを止め、奥へ進むことを提案してくる。


「え……う、うん」


 いつもならばここでカインとシェスカが大喧嘩をするところなのだが、シェスカの方から身を引いたことに、アミアは少しばかり面食らったが、促されるまま、ハヤトの方へと戻っていく。

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