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小動物の相棒と歩む、土魔術師の冒険譚  作者: 風間 義介
3章、シェスカとカイン
40/64

15、

「わかった。ひとまず、こいつは生かして検問まで連れて行く」


 アミアに説得され、ハヤトはカンダラを生き埋めにしてその遺体を持ち帰ろうとすることをやめることにした。

 もっとも、カンダラ本人から降伏勧告を聞いていないため。


「どうする? ここで降参しないと、本当に泥の中に埋めて溺れさせるけど?」


 と、再び魔術を展開させながら問いかけた。

 一度、死の恐怖に直面したことが効いたのか。


「わ、わかった! 降参するっ!! だから命だけは助けてくれ!!」


 ようやく、カンダラから降伏勧告を引き出すことができたハヤトは、壁を作っていた魔術を解除し、カンダラを解放しようと考えた。

 だが。


「……うーん、実は嘘でしたぁ、みたいなことになっても困るからなぁ」


 盗賊に対して、何か恨みでもあるのか。それとも、偏見を持つような何かがあったのか。

 カンダラの降伏勧告を素直に受け取れないハヤトがそう漏らす。

 簡単に信用してもらえないことは、カンダラも承知していたようだが、さすがに死を目前にして嘘やはったりをかます余裕はないらしい。

 嘘ではないしおとなしく従うから命ばかりは助けてくれ、という必死の訴えがそれを証明していた。

 結局、ハヤトはその言葉を信じることにして、壁を解除すると同時に、ため込まれた泥を利用してカンダラの両足を拘束する。


「足は拘束しておくから、武器の回収と腕の拘束は頼んでいい?」

「あ、あぁ」

「わかったわ」


 ハヤトの言葉に従い、カインとシェスカはカンダラが所持していた装備を回収し、両腕と手首を縛り上げた。

 カンダラが拘束されたことを確認すると、ハヤトは両足を拘束していた魔術を解除する。

 そのまま走って逃げることもできたのだろうが、下手に抵抗すれば、今度こそハヤトによって命を刈り取られると直感しているらしく、カンダラはおとなしくしていた。


「それじゃ、検問までこいつを連れて行きましょうか」

「なぁ、ほかの連中はどうすんだ? このまま放っておいたら残った連中が新しい盗賊団を作りかねないが……」


 盗賊団の頭目は確かに落ちた。

 だが、このまま秘密裏に検問まで連行したとしても、残っている盗賊たちの中から新しい頭目が誕生し、盗賊たちを率いることになることは明白だ。

 そのことに対策を講じているのか、カインはシェスカに問いかけてみると。


「問題ないわ。カンダラが捕縛あるいは討伐されたことを確認次第、警ら隊が突入する手はずになっているから」

「頭目と幹部たちがいないことで生じた混乱に乗じて、一気に片を付けようってことか?」

「そういうことでしょうね。そろそろ、さっきの検問に突入部隊が到着しているはずよ」


 本来、いるはずの人間。それも自分たちを率いるトップたちが何も言わずに姿をくらましたとなれば、そこの混乱が生じることは必然。

 頭目だけでなく、幹部も姿をくらましているとなれば指揮系統も一時的に麻痺するため、討伐はより簡単なものとなる。

 そのための下準備として、今回の依頼が存在したのだろう。


「……あれ?」


 そこまで話を聞いて、ハヤトは何かに引っ掛かりを覚え、シェスカに問いかけてみた。


「てことは、このままもたもたしてたら盗賊だけじゃなくて突入部隊も相手しないといけなくなるかもしれないと?」


 言い方がおかしいかもしれないが、露払いのような役目を冒険者に依頼したが、相打ちになったために帰還できなかった可能性を考慮していないとは考えづらい。

 となると、ある程度のタイムリミットが存在する可能性があると考えてのことだ。

 正直なところ、外れていてほしいとハヤトも思っているのだが、シェスカから返ってきた答えは。


「えぇ。業腹だけどもね」


 その期待を裏切るものであった。

 そうとなれば、取るべき行動は一つ。


「だったら、急いだほうがいいよね?」

「えぇ。早くカンダラを連れて脱出しましょう」

「えっ?! こいつらのため込んでるもの持ってっちゃダメなの?!」


 ハヤトとシェスカがカンダラを連れて早くアジトから出る方針を打ち出すと、カインは悲鳴を上げた。

 盗賊のアジトなのだから、当然、強奪した金品がため込まれている。

 当然、それらは警ら隊が回収することになるだろうが、長期間の活動をしていた盗賊たちだ。ため込んだ金額も相当なものとなるだろう。

 多少くすねたところでばれはしないだろうというのがカインの考えだったようだ。

 だが、時間がないことを理由に、その考えを行動に移すことを禁じられてしまった。


「ちょっとぐらいいいじゃねぇかっ! まだ時間に余裕はあんだろ?!」

「ちょっとの余裕が取り返しのつかないことになることもあるんだ。今回はあきらめろ」

「いや、だがよぉ……」


 ハヤトの一言に、カインは反論しようとするが、さきほど見せた黒い暴走を自分に向けられてはたまったものではない。

 さすがにあの狂気じみた行為を仲間に向けてくるということはないだろうが、これ以上ごねたらその予想を裏切り、あの拷問が自分に向けられるということは十分に考えられた。


「……わぁったよ! さっさと脱出して、警ら隊の連中からたっぷり報酬をふんだくってやる!!」


 できることなら、あんな恐怖体験はしたくないため、カインはしぶしぶといった様子ではあるが、お宝捜索をあきらめ、脱出することを選択した。

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