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小動物の相棒と歩む、土魔術師の冒険譚  作者: 風間 義介
3章、シェスカとカイン
39/64

14、

 魔術で作り上げた岩の壁にカンダラを閉じ込めたハヤトは、最終勧告を聞き入れないカンダラに、最終手段を使うことに決め、塀の中に泥を流し込み始めた。


「ちょっ?! な、何しやがるんだ?!」

「何って、泥を流し入れてるだけだけど?」

「見りゃわかんだよ! 何のために泥なんぞ流し入れてんのか聞いてんだっ!!」


 あっけらかんとした態度で答えるハヤトに、カンダラがわめきながら返す。

 だが、ハヤトは意に介する様子もなく。


「あ、蓋もつけとかないと逃げるか」


 と、思い出したように呟き。


「同時展開、石網(ストーンネット)


 何も置かれていない塀の上部に、石の網を作り上げ、設置する。

 その網目は、子どもの頭がようやく出るか出ないか程度の大きさしかない。

 このまま泥が塀の中に流れ続けて、網の部分まで到達してしまったら、カンダラは泥の中に埋もれてしまうことになる。

 そのことに気づいたカンダラは。


「ちょっ?! おいおいおいおい、待て待て待て待て待て!! お前、俺を殺すつもりかっ?!」

「降参する気がないんだから、しかたないだろ?」

「いやあっさりしてるな、おいっ!!」


 投降するつもりはないが、やはり命は惜しいらしい。

 降伏勧告をしてくるあたりから、ハヤトたちが自分たちの命を脅かすことをしたくないということはわかっていたため、返答を遅らせることで手下たちが異変に気づくまでの時間を稼ごうとしていた。

 だが、ここに来て唯一、人の好さそうな魔術師が自分の命を刈り取ろうとしている。

 そのことを自覚しているのか問いかけたつもりだったのだが、意外とあっさりと返答されたため、カンダラは余計に困惑し、わめき始めた。


「さぁ、降伏しようかぁ? でないと、どんどん、泥に埋もれてくぞ~? まぁ、動かなくなってくれた方が持ち運びは楽だから、俺はそっちの方がいいけど」


 わめき散らしているカンダラに対し、ハヤトは黒い笑みを浮かべながらそう問いかけていた。

 あっさりと降参してくれればそれでよかったかもしれないが、戦力の差と優位性の低さを見ても徹底的に抵抗していたことから、それなりにむかっ腹を立ててしまっていたらしい。

 もはや聞く耳持たぬという状態で、カンダラを閉じ込めている塀の中へ砂を流し続けていた。


「……な、なぁ、そろそろ止めた方がいいんじゃないか?」

「そう思ってるなら、あなたが止めてくれない? わたし、こんな状態のハヤトくんを見るのは初めてなんだから、どう扱っていいかわからないもの」

「俺だってここまで黒いハヤトは見たことねぇよっ!! てか、これ大丈夫だよな? マジで()っちまったりしねぇよな?!」


 その姿に一番困惑していたのは、パーティを組んでいるカインとシェスカだったようだ。

 一応、手配書には『生死問わず(デッドオアライブ)』の文字が記載されてはいたが、できる限り、生きた状態で連行したいと考えていたカインが、シェスカにそう問いかけた。

 だが、普段の穏やかな態度と戦闘時の様子しか見たことがないため、シェスカも及び腰になってしまったようだ。

 これを止めることができるとしたら。


「けど、アミアが止めてくれるかしら?」

「祈るしかねぇだろ……あぁ、けどさっきかららしくないことやってるから、そろそろ気づくんじゃないか?」


 自分たちの中で、唯一、ハヤトの暴走を止めることができる存在がいるとしたら、それは長期間、行動を共にしてきた相棒のアミアだけだ。

 そのことはシェスカもすぐに思いついたのだが、戦闘を行っていたということもあり、現在のアミアの居場所はハヤトのポシェットの中。

 外の様子は音で察知しているのだろうが、果たして、ハヤトの異変に気づいているかどうか。

 そのことがカインも心配ではあったが、小動物と揶揄されるその姿に見合った身体能力を持ち合わせているため。


「ちょ、ちょっとちょっとハヤト!! さすがにそろそろやばいんじゃないの?!」


 相棒が普段なら行わないことをしていることに気づき、ポシェットから飛び出し、ハヤトに声をかけていた。

 アミアの声に気づいたハヤトは、一度、魔術を止め、声をかけてきた相棒の方へ視線を向ける。


「いや、さすがにここまで抵抗されるとは思わなかったからさ。さすがに生きたまま連行すると、わめき散らしたり抵抗したり、挙句は逃げ出したりしそうだからやっぱり永遠に黙っておいてもらった方が早いかなぁと思って」

「あぁ……それは一理あるかも」


 これまでのハヤトたちとカンダラとのやりとりはポシェットの中で聞いていた。

 そのため、カンダラたちが抵抗を続けていたことも当然知っているので、ハヤトの言い分も理解できなくはないようだ。

 しかし、できることなら少しでも報酬を高くしたいと思っているアミアは、その言い分を理解したうえで説得を始める。


「けどさ、報酬は生きてる状態の方が高いみたいだよ?」

「連行している間に逃げられたら大損だと思うけど?」

「そこはそれ、検問で馬と移送用の馬車を借りればいいんじゃないかなって思うけど? あるいは、念書を書いてもらうとか」

「う~ん……けど、検問まで連れて行くのがねぇ」


 多少減額されても、大損するよりもここで抵抗も逃亡もできないようにしておきたいというハヤトと、自分たちがカンダラたちを連行する距離を縮めることでどうにか報酬を高く受け取ろうとするアミア。

 二人の議論はしばらく続き、ようやく出てきた結論は……。

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