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小動物の相棒と歩む、土魔術師の冒険譚  作者: 風間 義介
3章、シェスカとカイン
35/64

10、

 巡回している盗賊や仕掛けられた罠を潜り抜け、ハヤトたちは盗賊のアジトを進んでいく。

 ふと、カインが壁の前で立ち止まり。


「このあたりのはずだな」


 とつぶやく。

 シェスカもハヤトもそれに気づき、何があるのか、カインに問いかける。


「いや、この壁の先に例の集会に使われている可能性が高い元会議室があるんだよ」

「けど、『はず』ってのは?」

「あぁ。地図を描いてもらったんだけど、なにせ何十年も前だって話で、話を聞かせてくれた人も爺さんだったから、記憶があいまいになってそうでな……」

「確証がない、ということね?」

「そういうこと」


 普段は不真面目で軽薄な態度が目立つカインだが、仕事に対してはそこそこ真面目に取り組んでいる。

 当然、話を聞いた時に地図を描いてもらったのだが、話を聞いた人物がかなりの老齢ということもあり、情報の確度に不安が残るものをもらってしまったらしい。


「なら、下手に壁を突き破るわけにはいかないか」

「あぁ……だから、ここはアミアの出番ってことになるんだよ」

「へ?」


 突然の名指しに、アミアはぽかんとした顔つきになった。

 基本的にアミアは戦闘に参加することはできず、こういった場所でもハヤトとはぐれてしまうことを考慮し、ハヤトのポシェットに隠れることにしている。

 体躯もそうだが、魔法を満足に使うことができない自分にどんな出番があるというのだろうか。

 身構えながら、カインの言葉を待っていると、カインは悪人のような笑みを浮かべながら答える。


「そこに空気穴があるだろ?」

「うん? あ、あの穴がそうかな?」

「そうそう。その穴がどんな部屋につながってるか、ちょっと様子見てきてほしいんだよ」


 どうやら、その体の小ささを利用して、地図に書かれた情報を確認しようとしているようだ。


「それにアミアだったら、多少物珍しさはあっても、怪しまれることはないだろうしよ」

「それって、僕が小動物だから気にされないだろうって言いたいの?!」


 直接、小動物と呼んだわけではないが、言外に小動物呼ばわりされたことに、アミアは毛を逆立てて憤慨する。

 いつものことと言えばいつものことなので、カインはあっけらかんとした態度で。


「いや事実だろ? それにこれが一番確実に情報を確認できる方法なんだよ。つか、こんなんでいちいち怒ってんじゃねぇよ」

「『こんなん』ってなんだよ! 『こんなん』って!! 僕にとっては十分に侮辱にあたることだよ!! 僕の尊厳を傷つけておいて、『こんなん』の一言で片づけることは僕が許さなーーーーいっ!!」


 売り言葉に買い言葉でアミアはいつも以上に毛を逆立てて反論する。

 だが、その抗議もむなしく。


「けど、ここで確認しなかったらそれはパーティメンバーとしてどうなんだよ? 普段からハヤトの御意見番みたいなことや資金繰りなんかはしてても、依頼に関しては何もしねぇじゃんか」

「うぐっ!」

「それにこの依頼は指名依頼になるほどの難易度なんだぜ? 俺たちが一丸になってあたらなきゃならんだろ?」

「うっ……うぅぅ……」


 確かに、普段のアミアはパーティの経理や判断に迷った時に意見を提示するなどの役に徹しており、戦闘に参加することはない。

 自分の役目がそこにあることを自覚しているし、今まではハヤトと二人三脚でやってきたため、完全分業に近い形になっていたので、あまり気にしたことはなかった。

 だが、この依頼はシェスカの指名依頼。彼女は自分たちの実力を認めてその依頼に同行させてくれているのだ。

 そのため、カインのいう『一丸となって』という部分に、どうにも引っ掛かりを覚えてしまったらしい。

 しばらく腕を組んで唸っていたが、自分がこのパーティの中で今のところまったく活動していないという事実に耐えきれなくなり。


「わかったよ! わかりましたよ!! 行けばいいんでしょ、行けば!!」


 やけくそとも取れえる態度ではあったが、カインの提案を受けることにした。

 ハヤトの手から勢いをつけて跳びあがり、壁に張り付き、そのままするすると空気穴を目指して登っていく。

 空気穴に到着すると、ためらうことなく、穴の中へ入っていき、その向こう側へと姿を消した。

 数分すると、アミアが空気穴の向こうから姿を現し、ハヤトの足元へまっすぐに戻っていき、そのままするすると肩に登る。


「戻ったよ」

「お疲れ。ありがとう、アミア」

「どういたしまして!」


 相棒に労われ、アミアは前足を腰のあたりに当て、胸を張って返す。

 そんな様子のアミアをよそに、焚き付けた張本人は。


「で? どうだったんだ?」


 と、労いもすることなく、穴の向こうの様子を問いかける。

 そのことが不満なのか、上昇していたアミアの機嫌は一気に急降下し、カインを睨め付けていたが。


「地図の通り、この向こうに盗賊たちが集まってたよ。人数はそんなに多くなかったけど、たぶん、幹部連中なんじゃないかな?」


 自分が見てきたものを報告することは忘れていない。

 あまり人数がいない、ということと幹部クラスの人間が集まっている可能性を示唆すると、シェスカがポーチから数枚の紙の束を取り出し、アミアに見せた。


「壁の向こうにいた連中の中に、この手配書に書かれた人はいた?」

「ちょっと見せて」


 シェスカが取り出した紙の束は、どうやら盗賊の手配書だったようだ。

 アミアはシェスカの肩に飛び移ると、シェスカが広げる手配書をまじまじと見つめ、一人の男の顔が描かれた手配書に反応を示す。


「あ、こいつ……」

「こいつはいたのね?」

「うん。上座の方に座って少し偉そうにしてたからよく覚えてる……そうか、こいつがカンダラだったんだね」


 どうやら、壁の向こうには今回の標的であるカンダラがいたようだ。

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