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小動物の相棒と歩む、土魔術師の冒険譚  作者: 風間 義介
3章、シェスカとカイン
32/64

7、

 カンダラ一味を取り押さえるため、急遽建造された関所を抜け、森の中を進んだハヤトとシェスカは、岩山へと通じる吊り橋の前にやってきた。


「あの岩山が目的地よ」

「カンダラ一味の本拠地……」

「そう。あの岩山の中にある洞窟をねぐらにしているという情報があるわ」

「確度は?」

「ギルドと帝国の警備兵が捕らえたこうせいいんから聞き出したものだから、かなり高いとみていいわ」

「聞き出したって……偽の情報って可能性は?」


 アミアがシェスカにそう問いかけると、シェスカは黒い笑みを浮かべながらアミアに視線を向け。


「それはないわね……なにせ、彼らにはごうも――きつぅい取り調べを耐えきれるほどの精神力はなかったみたいだから」

「……い、いま拷問って……」

「きつい取り調べよ? そこを間違えないでね??」

「ア、ハイ」


 グランバレア帝国では、人道を重んじ、捕虜や囚人に対して拷問や人体実験、暴力などを行うことを禁じている。

 だが、それはあくまで表向きの話。

 現場では、特に危険性の高い犯罪組織の人間に対しては『厳しい取り調べ』と称した拷問が行われているようだ。

 もっとも、それを知ったところでハヤトとアミアにどうすることもできないし、公表したとして帝国の上層部に目を付けられ、よくても国外追放。悪くすれば死刑に処される可能性も十分考えられる。

 実際はそんなことはないのだろうが、なんとなく嫌な予感がよぎってしまった二人は、ひとまずこれ以上、このことについて追及することはやめることにした。


「で、ここからどうするの?」

「ひとまず、夜が来るまでここで待ちましょう」

「夜襲を仕掛けると?」

「えぇ。夜の時間帯なら、奴らも油断しているはず」

「比較的安全に戦うことができるかもしれない、と?」

「えぇ」


 どれほどの手練れでも、奇襲や夜襲といった搦め手に対しては、ほんのわずかな隙を見せる。

 特に盗賊団は騎士団や軍と異なり、厳しい規律は存在しない。

 規律がないということは、飲酒や喫煙などの快楽をむさぼる時間が多くあるということ。

 見張りの一人や二人は存在するだろうが、アジトの内部を巡回警備するようなことはない。

 シェスカはそう読んでいるのだろう。

 ともかく、今から攻め込むような無理をするつもりはないということだ。


「ともかく、夜になるのを待ちましょう。それまではこのあたりで休憩しましょう」


 ということになり、ハヤトたちは夜まで休息を取ることにした。

 数時間後。

 太陽はとうに沈み、あたりを暗闇が包み込んだころ。

 仮眠から目を覚まし、準備を終えたシェスカは、同じく準備を終えたハヤトに視線を向ける。


「準備はいい?」

「準備オーケー」

「いつでも大丈夫」

「それじゃ、いくわよ!」


 ハヤトとアミアがシェスカからの問いかけに返し、出発しようとしたその瞬間。

 二人と一匹の背後にある茂みが揺れる音と同時に。


「おいおい。いきなり正面突破ってのは、リスキーなんじゃないか?」


 聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 その声に、ハヤトとシェスカが振り返ると、そこにはニヤケ顔を浮かべている見慣れた男。

 その男の顔を見た瞬間、アミアは驚きの声をあげる。


「カインっ?!」

「んだよ、幽霊でも見たような顔しやがって」

「いやぁ、来るとは思ってたんだけど、まさかこのタイミングだとは思わなくて」

「……予想してたタイミングと違ってても、来ることはわかってならなんでそんな驚くんだよ。ちょっとショックじゃねぇか」


 ヨヨヨヨ、とわざとなく振りをしながらアミアの言葉に返すカインの様子に、ハヤトは苦笑を浮かべていた。

 一方のシェスカは、カインが何かを企んでいるのではないかと警戒しているようで。


「で、何の用なの? あなたは最初からお呼びじゃないのだけど」

「ひっでぇ言い草だな。戦力の差が明らかだってのに正面突破なんて馬鹿でもやらねぇことを止めてやったってのによ」

「誰が馬鹿ですってっ?!」


 カインの言葉に、シェスカが語気を荒げて返す。

 その様子に、ハヤトとアミアは。


――いや、確かに正面突破じゃなくて、もうちょっとやりようはある気がするけど

――いまそれを言ったら、こっちにも余計な火の粉が飛んできそうだなぁ……


 と、実のところまさか正面突破することを考えていたのだが、それを口に出すことはしなかった。

 だが、いつまでもこうして口げんかをしていては、見張りに気づかれてしまう。


「……そろそろ、いい?」


 その展開だけは避けたいと考えていたハヤトは、どすの効いた声で絶賛口げんか中の二人に問いかける。

 ハヤトが普段は出さない声を出すときが、どういうときなのかを知っているカインはその一言で顔を青くして口を紡ぐ。

 付き合いの短いシェスカは、ハヤトが出している雰囲気に驚き、目を丸くして黙ってしまう。

 二人の件かが収まると、ハヤトではなくアミアの方がカインに問いかけてくる。


「で、カイン。調べものの成果はあったの?」

「ん? あ、あぁまぁな」

「遅刻して集合場所にこなかっただけじゃなく、ハヤトに伝言をさせるような気遣いもさせたんだからね。それなりのものでないと、今度は僕が怒るからね?」

「いや、小動物が怒ってもあんま怖くねぇだろ」

「あんだってぇっ?!」


 恐ろしい、というよりも可愛らしいという印象を抱かせる相棒が怒る姿を想像しても、確かに恐怖は覚えない。

 カインの言葉にハヤトは、アミアには申し訳ないが、そう思ってしまっていた。


「ほらほら。ここで遊んでても仕方ないだろ? カイン、そろそろ真面目に頼む」

「お、了解だぜ。そんじゃ、お前ら、ついてきてくれ」


 また余計な口げんかが始まる前に、ハヤトがカインに真面目にやるよう伝えると、カインは笑みを浮かべてハヤトとシェスカについてくるよう告げてきた。

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