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小動物の相棒と歩む、土魔術師の冒険譚  作者: 風間 義介
2章、軽薄な冒険者カイン
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9、陰鬱なカイン

 トネリコ村に到着して二日目。

 アリシアと約束した通り、魔法を教えていたハヤトとアミアの下にカインがどんよりとした空気をまといながらやってきた。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

「おいおい、顔見るなりいきなりため息って」

「ちょっと失礼なんじゃない? カイン」


 宿泊の世話になっているアリシアの家に上がり込んできて早々、ため息をついてきたため、半眼になったアミアに苦情を言われていた。

 だが、文句を言われた本人は。


「これがため息をつかずにいられるかよぉ」


 再び大きなため息をついて文句を言い出す始末。

 大体の理由は察している。

 おそらく、マークスに専属の護衛として雇用してもらおうとアタックをかけたが玉砕したというところだろう。というのが、ハヤトとアミアの推測だ。

 だが、あくまで推測であり、真実ではない。

 一時的のつもりではあるが、パーティを組んでいる以上、ある程度のことは知っておきたいという気持ちがハヤトにはあり、好奇心と相まって思わず。


「マークスさんに何か言われたのか?」


 カインの口から真実を聞き出すことを選んでしまった。

 ハヤトが問いかけた瞬間、カインは目に涙を浮かべてハヤトに詰め寄ってくる。


「そうなんだよ! 聞いてくれよ!!」

「ち、近い近い……聞くから、少し離れてくれ」


 鼻の頭同士がくっつくのではないかと思えるほど近づいてきたカインに、ハヤトは引き気味になりながらカインにそう頼んだ。

 その頼みを素直に聞き入れたカインは、若干ながら落ち着きを取り戻し、ハヤトから少し離れ、落ち込んでいた理由を語り始めた。


「この依頼で正式に護衛として採用するつもり、全くなかったんだと」

「まぁ、そうだろうな」

「あくまでけがで休養してる人の臨時補充なわけだし。ここで正式採用されるなら、もっと頑張んないとね」

「だからってよぉ。俺、結構頑張ったと思うぜ?」

「普段の態度が耳に入ったんじゃない?」


 アミアの言葉に、カインは再びうなだれる。

 冒険者の横のつながりというものは、意外と広い。

 今まで交流がなかった冒険者であっても、自分の情報を持っていることもある。

 カインの普段の生活態度があまりよろしくないことを、専属雇用している冒険者たちが知っていても不思議ではない。

 そして、その情報は当然、上司であるマークスの耳に入る。

 正式雇用しない方向に考えてしまうことは、ある意味、必然だろう。


「うぅぅぅぅぅぅぅ……」

「まぁ、これを機に普段からの態度に気を付けて過ごすようにすればいいんじゃない?」

「……それができれば苦労してねぇよ」

「まぁ、もう遅いだろうな」


 喉の奥でくつくつと笑いながら、不貞腐れるカインに返す。

 その瞬間、カインは目くじらを立てながら。


「お前はどっちの味方なんだよ!!」


 慰めてほしかったのか、励ましてほしかったのか。

 いずれにしても、カインが思っていたこととはまったく違う内容だったことに怒りをあらわにしていた。

 だが、そんなカインの怒りをまったく気にする様子を見せず、ハヤトはアミアの背中をこしょこしょと掻きながら、アリシアの様子を見ている。

 現在、アリシアは両手を自分の胸の前にかざし、両手の間にできた空間へと意識を集中させていた。

 意識と視線を向けているその先には、砂粒よりも少し大きいくらいの石ころが浮かんでいる。


「むむむむむむむむ……」

「お? いい具合じゃないか」

「ほんと?!」


 ハヤトに褒められたことがうれしかったのか、視線を石ころから外し、ハヤトの方へキラキラとした目を向けた。

 だが、それと同時に石ころは砕け、砂粒になってしまう。


「あ……」

「あらら、集中が切れちゃったか」

「うぅ……せっかくあそこまで大きくなったのにぃ」

「あぁ……なんか、ごめん」


 魔法で石を作り上げるという、土魔法を習得するうえで誰もが触れる技術をものにしようと頑張っていたのだが、集中が切れてしまったためにせっかく出来上がってきた石が砕けてしまった。

 しょぼくれるアリシアに、ハヤトは本当に申し訳なさそうに謝罪する。

 だが、もともと負けん気が強い性格なのか、アリシアはすぐに気を取り直し、両手を胸の前に掲げ、再び魔力を集め始めた。

 その様子を見ていたカインは、驚いたような表情を浮かべ。


「ひゅ~。まだちんちくりんだってのに、気持ちの切り替え早いな」

「こらこら、本人を前にしてちんちくりんとか言わないの!」

「あ? いやガキンチョって言ってないだけましじゃないか?」

「だとしても! デリカシーってもんが欠けてるよ君は!!」


 全身の毛を逆立てながら、アミアはカインの言葉に文句を言う。

 だが、カインは飄々とした態度で、まったく気にする様子がない。

 もともと、カインのアミアに対する態度は不遜と言えるものであり、最初に出会った時からそうだったので、もはや慣れてしまった。

 とはいえ、自分やハヤトならばともかく、知り合って間もない、しかも幼い子どもに対してとる態度ではない。

 マナーがなっていないと感じ、アミアはめげずにカインに苦言を呈し続けたが。


「別にいいじゃねぇか。ガキンチョなんて呼ばれる方が腹立つだろ?」

「だからって、本人を目の前にして言っていいことじゃないでしょうが!」


 アリシア本人を差し置いて、、あれやこれやと議論を繰り広げていた。

 なお、その間にもアリシアは。


「よし、さっきと同じくらいまでいったな。そのまま集中して」

「は、はい!!」


 ハヤトに見守られながら、魔法の練習を続けていた。

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