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百合カップルを眺めるモブになりたかっただけなのに。  作者: 蒼風
Ⅱ-Ⅴ.メイドとパフェと、時々恋人
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88.気持ちを変える服を選ぼう。

本日より開始のカクヨムコン7に参加しております。そのため暫くの間毎日更新予定です。よろしくお願いいたします。

「やだ……可愛い……」


「もう好きにして…………」


 十数分後。


 そこには可愛らしい服に身を包んだ、女子高校生……つまりは虎子(とらこ)がいた。


 着ている服は普段彼女が間違いなく選ばないであろうものばかりだ。シャツと二ッとベストはまあいい。くるりとターンしたら、それはそれは綺麗にふわっと波打ちそうなロングスカートは多分、誰かに着せられなければ一生選ばないんじゃないだろうか。


 ちなみにこれらのコーデと名称は全て先ほどの店員さんが教えてくれたものだ。俺が「彼女、いつもこんなかんじなんですけど、もっと女の子っぽくというか、そういう感じに出来ますか?」みたいなことを聞いたら「任せて!」と鼻息荒くして、全て準備してくれたのだ。


 その上、虎子が着替えているうちに、色々話していたら、ちょっと仲良くなってしまった。あるかは分からないけど、新しく服を買うときはここにしようかな。可愛い服が多いし…………はっ、別に俺は可愛くなる必要性ないんじゃないか!?


 虎子の姿を見た店員さんはうんうんと頷き、


「やっぱり私の目に狂いはなかったわね……」


 と呟いていた。彼女曰く、虎子は素材が良いので、それこそ髪型まで含めれば色んな可能性が見えるらしい。俺には分からない世界だった。でも可愛いってのは分かる。


 それでも虎子は必死に抵抗する。


「やっぱり俺にはこういうの似合わないって……」


 それを聞いた店員さんが、


「最初はね、みんなそう言うのよ」


「で、でも」


「でもね。その「似合わないかもな」っていうのはね、心がいつも通りを選びたがってるからなの。私は別に何かの宗教を信仰しているわけじゃないんだけど、物事ってのは時々変化させた方がいいと思ってるのよ。ほら、部屋をずっと閉め切ってたら、空気が澱むじゃない?それと一緒で、たまには違う道を通るとか、いつもとは違う注文をしてみるとか、そういう変化も重要なんじゃないかって思うのよ。で、その変化として、一番手軽で、そして、一番自分の気持ちもがらりと変えてくれるのって、洋服じゃないかって私は思うの」


「な、なるほど……」


 虎子が納得していた。


 でも、それくらい説得力を感じた。


 店員さんは続ける。


「洋服って自分からは見えないでしょ?だから軽視しがち。だけど、そこをちょっと変えたり、自分が好きだなって思うものを思い切って買って、着てみたりするだけでも、世界って案外すぐ変わるもんだと思うの」


 と、そこまで言って苦笑し、


「ま、キミが嫌いなら話は別だけどね」


 と結論付けた。それを聞いた虎子は、割と全力で、


「ぜ、全然!そんなことは、全然ない、です。ただ」


「ただ?」


「ただ…………こういうのその……慣れてなくて」


「最初はそんなもんだよ。そのうち慣れる慣れる」


「そう……ですかね?」


「うん。保証する」


 と満面の笑み。虎子はそれでも不安なようで、俺に、


「なあ、(はな)


「なに?」


「似合ってる…………かな?」


「うん。良く似合ってると思うよ」


「っ…………ありが、と」


 なに!?なにあの生き物!?可愛くない?ちょっと奥さん!大変ですよ!


 と、俺がそんなアホなことを考えている間に、虎子は試着室のカーテンを閉めてしまっていた。ちなみに、この後試着した服は、全てお買い上げした。結構してたけど、この辺は流石お嬢様って感じだ。



               ◇



 虎子がきっちりと買い物を済ませたその後、


「お」


 視界にシュシュが映った。どれもカラフルな色使いをしたもので、デザインも凝っている。だけど、値段的には千円付近と手軽なものが多い。


 虎子が覗き込むようにして、


「どした?何か欲しいものでもあったか?」


「欲しいものってわけでもないんだけど……」


「シュシュ?」


「うん。彼方(かなた)にプレゼントするのにいいかなって」


「あー……そういえば宇佐美(うさみ)先輩って髪長いもんな」


「うん。だけど、本当に「邪魔だからまとめてるだけ」みたいな感じだから。こういうの上げたらいいんじゃないかなって」


 喜んでくれるかは分からない。結局は服と合わせたトータルコーディネートだから、もしかしたら使わずじまいになってしまう可能性もゼロではない。だけど、


「制服とマッチするのなら、使ってくれるんじゃないかなって」


 そう、制服。


 それなら俺にもコーディネートしやすい。なにせ、制服は俺も着ているわけだから。いや、おかしくないか?いつも着ているからってコーディネートしやすいか?

 そんな俺の思考回路を他所に虎子が、


「いいんじゃない?きっと喜んでくれるよ」


 と太鼓判を押す。その自信はどこから来たんだろう。俺の背中を押すよりも、自分の背中を押すのに使って欲しいんだけど。なんで君は自分に関することになると急にヘタレになるんだい?


 ただまあ、別にこれで気に入ってもらえなかったからといって、問題があるわけじゃない。もし何か問題が起きるとすれば、俺のファッションセンスがクソ雑魚ナメクジだってことが彼方と若葉(わかば)にバレるくらいだ。それくらいなら、いや、うん。ちょっと堪えるな。特に若葉には煽り倒されること間違いなしだし。


 だけど、それくらいなら甘んじて受け入れよう。それよりも、今は彼方にプレゼントしたい気持ちの方が買っていた。さっきの店員さんに影響されているのかもしれない。


「これなんかどうだ?」


 そう言って虎子が手に取ったのはピンクに黒の水玉が入っているというデザインのものだった。虎子さん。どうしてそれでいいと思ったんですか……

次回更新は明日(12/2)の0時です。

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