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68.音楽プレイヤーの中身はトップシークレット。

「ここ、ここ」


「わぁ……」


 たどりついたのは所謂スポーツショップだった。地上数階建てのその建物には有名ブランドのスニーカーや、アウター、バッグに小物と、様々なアイテムが勢ぞろいしている。


 階層によってジャンル分けされており、野球のフロアならバッドやグローブ。水泳のフロアなら水着や水泳キャップなどが中心に置かれている。そして、今俺たちがいるのはランニングのエリアだ。


宇佐美(うさみ)先輩が今も運動をしてるのかはわかんないけどさ、この辺だったら普段使いも出来るしいいかなぁって」


 確かに。


 ワイヤレスのイヤフォンはランニング中やトレーニング中に音楽を聴く用途だけではなく、室内で使うことだって出来るはずだ。程度にもよるだろうけど、防水のものを選んでおけば風呂場で使うこともできるかもしれない。


 上着類だって、普段着として用いることは出来る。彼女の手持ちと合わせるのに適しているかは分からないけど、パーカーの類ならそう邪魔になることも無いだろう。きっと喜んでくれる気がする。


 虎子(とらこ)は両手を打ち合わせ、


「うし。それじゃ見ていこうぜ」


 あの、別に誰かと戦う訳ではないですよね?



               ◇



「これなんかどうよ。防水機能付き」


「防水かぁ」


「あんまピンとこない?」


「いや、うーん……そんな濡れるような状況で使わないからなぁ……」


「そうなの?じゃ、普段はどうしてるの?音楽聞く時とか」


「普段は普通に部屋とかで……っていうか、そもそもあんまりワイヤレスのイヤフォンってあんまり使わないんだよね」


「マジ?便利なのに」


 まさかそんな言葉を虎子からかけられると思わなかった。文明の利器を利用するのが苦手そうな性格をしているのに……(※華の勝手な感想です)


「うん。便利なのは分かってるんだけど……やっぱり音質を考えると有線の方が好きかなって。それになんだかんだ言って充電とかしないといけないし」


 虎子は手元にあったワイヤレスイヤフォンの箱を持って、


「それはそうだけど……え、じゃあ、こういうの使ったことない?」


「使ったことないってわけじゃないんだけど、そんなには使わない、かな」


「そんなには……どういう時なら使うの?」


「それはAS…………さ起きた後に、有線のイヤフォンが遠くにあるとき、かな」


 あぶねえ。


 とんでもないことを口走るところだった。だって、軌道修正しなかった場合、俺の口から出た言葉はこんな感じだもん。



「いやーASMRとか、サイニー音声とかを聞くときはさ、コードがあると、没入しにくくなるんだよね。だけど、ほら、AirP○dsみたいな完全独立型だと、意識しなくていいから、その分没入できるんだよね」



 言えるかーーーー!!!!


 危ない。ホントに危ない。虎子って割といい意味で性別を感じないって言うか、男友達みたいな距離感を持ってるから、ついつい口が滑りかけたよ。そんなことが虎子にバレたらどうするんだ。


 きっと美咲(みさき)と違って(※華の以下略)理解なんてないだろうし、なんなら一切知らない可能性も有るから、一から解説することになるぞ。耳舐めボイスってのもあってとか。拷問か。ライダー助けて!


 当の虎子は、そんな俺の心の叫びなどどこ吹く風で、


「なんか不思議な使い方してんだな―……もっと有効活用してやれよー」


 と文句を垂れる。よかった。取り合ず誤魔化すことは出来たみたい。それならいいやもう。俺が良く分からないタイミングでワイヤレスイヤフォンを使う変な奴だって思われても。寂しくなった夜は甘やかしボイスが無いと生きていけないとんでも野郎だって思われなければもうどうでもいいや。うん。


「まあでも、防水はいいよ。雨の日とかでも気にしなくていいから」


「雨の日って、外で使うってこと?」


「おお。まあ雨って言っても小雨だけどな。あんまり降ってるとシューズも濡れちゃうし」


 え。


 シューズも濡れちゃうってことはつまり。


「え、もしかして虎子ってランニングとか」


「するよー。週末だけだけどな」


 へえ。


 意外な気もしたけど、イヤフォンを耳につけて、スポーツウェアを身にまとってランニングをしている虎子を想像したらしっくりきた。助っ人でソフトボールの試合に出るくらいだもんな。それくらいはしててもおかしくはない。


「あとはまぁ……剣道、とか」


「剣道?」


 虎子は「やってしまった」という顔をして、口に手を当てながら、


「あ、いや、今のはなし!なし!」


 と否定する。そんなに否定されたら気になるじゃないか。なので、


「なんでー?いいじゃない。剣道。カッコいいとおもうけどなー」


 と意地悪たっぷりの口調で追及する。すると虎子ががくっと肩を落とし、


「……はい。すみません。剣道やってます。申し訳ありません……」


「いや別に謝ることではないと思うけど……」


 そう。


 謝ることなんて何もない。剣道にランニング。立派な運動習慣じゃないか。休日なんて放っておいたら一日中引きこもって百合漫画を読んでる俺みたいなのよりもよっぽど健全だ。むしろこの場合、俺がまずいだけとも言えるかもしれないけど、その辺は目を瞑っておいた、見ないふり。見ないふり。


 だけど、虎子は肩身が狭そうな感じに、


「うう……ばれてしまった……なんでこんなことに……」


 と後悔していた。ううーん……剣道にコンプレックスを抱いているなんて初めて聞いたかもしれないな……

次回更新は明後日(11/9)の0時を予定しております。

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