Side:U なりきれないシンデレラ
夜。
華ちゃんとも別れて、家について、晩御飯も、お風呂も済ませた後、漸くトラからの連絡があった。今日はごめん。途中で抜けたまま合流できなくってって。
そんなこといいのにって思った。だって、トラは皆のヒーローなんだから。むしろ私が独り占めしたら悪いから。
でも、華ちゃんは違う。華ちゃんはまだ、トラと会ってから間もないし、そんな風に思ってないかもしれない。だから、彼女にはきちんと埋め合わせをして欲しい。そういう風に伝えたら「分かった」って言った。トラのことだ。きっときちんと埋め合わせをしてくれるだろう。どこかに出かけるにしても、華ちゃんをエスコートしてくれるはずだ。
「はぁ……」
なんだかどっと疲れた感じがして、私は思わず背もたれに全体重を預ける。ぎしってきしむ音がする。だけど、それ以外の音はほとんど聞こえない。耳に届いてくるのは壁掛け時計の秒針の音くらい。部屋の電気も消したままだから、五感を刺激するものなんて本当にわずかしかない。その分思考がクリアになっていく。
笹木華。
最初は「ちょっと目立たない子」だと思ってた。話しかけられた時も「誰?」って思った。本人には内緒だけど。
だけど、友達になって、よく話をするようになってから、分かった。
彼女は凄く芯が強い子だ。
髪を伸ばして、目元を隠しているところとか、地味なヘアピンを選ぶところとかは本当に昔の私とそっくりだけど、その芯は全然違う。彼女は私と違ってきっと強い。
だから私みたいに一歩引いたところから見たりしないんだと思う。自分を見て欲しいと思ったらちゃんとアプローチが出来るし、相手が抱えている問題を一緒に解決するくらいの強さをきっと持ってる。
うらやましいな。素直にそう思う。
きっと華ちゃんなら、トラのことを、本当の意味で自由にしてあげられちゃうんじゃないかって思う。私みたいにただ見守るだけなんてことはしないで。一緒に戦えるんだと思う。
ふと机の上にある写真立てに手を伸ばす。そこに入っているのは私とトラの、小さい頃の写真だ。二人で並んで、公園の前で撮ったその写真は、私の思い出の一枚だ。
だけど、って思う。
トラは私を迎えに来て良かったんだろうかって。
本当は私がトラを、
「……メッセージ?」
その時だった。
スマートフォンのバイブレーションが新着のメッセージを告げる。誰だろう。そう思ってディスプレイを見る。そこには一つの、見慣れた名前があった。
九条虎子。




