48.さよならお気楽な過去、こんにちわ四面楚歌の現実。
回顧終了。
時は無事に巻き戻る。
と、同時に、
「ほら、絶対可愛いから、ね?」
「大丈夫だって……皆やってるから」
四面楚歌レベルの現実も一緒に戻って来た。どうしよう。いや、どうしようもない。人数の上でも二対一でこっちの方が不利だ。全面的な勝利は望むべくもない。それならば、
「あのっ!」
美咲が、
「なあに華ちゃん?あ、もっときわどいほうが良かった?」
そんなことは一言も言ってない。捏造するんじゃないよ。そこからもっと際どくした水着なんて着たらいろんなものがポロリするだろう。健全な夏のビーチがいかがわしいお店に早変わりしちゃうからやめなさい。
「そ、そうじゃなくて……あの、下着、とか、水着はまた今度にしませんか?割と、その、持ってはいるので」
そう。
この際着せ替え人形になることは甘んじて受け入れよう。
でもいくら何でも二人がもってるのはアウトだ。水着はまあ、物によると思うけど、あんな紐の延長線上みたいなやつはどう考えてもお断りだし、下着姿をさらすのはもっとなしだ。
特に後者だと、試着室のカーテンを大っぴらに開けるわけにもいかないだろうから、最悪二人をこの中に招き入れることになってしまう。
狭い空間に女の子が三人。うち一人は下着姿なんてシチュエーションは、客観的に見ればご馳走様以外のなにものでもないんだけど、当事者になるのは正直避けたい。興奮状態にある二人が何をしてくるか分からないっていうのもあるけどね。
それを聞いた美咲が、
「ホントに?今度着て見せてくれる?」
と、催促する。怖いよぉ。なんで俺の水着姿をそんなに熱望するんだよぉ。虎子と水着姿でいかがわしいプレイでもしててくれよぉ。
その虎子も幼馴染同様に、
「俺も見たいな。っていうか、夏になったら海行こうぜ、海」
「あ、いいわね。海。ね?華ちゃん」
「う、うん」
美咲は持っていた紐と布の集合体を、足元のカゴに戻して、
「それじゃ、これは夏に着てもらうとして」
今なんていった?着ないよ?別に夏のビーチでなら開放的な気分になったりはしないよ?海は行きたいけど、それを着るとは一言たりとも言ってないよ?
「これなんかどう?」
「お」
そう言って美咲が取り出したのは、さっきもちらりと話題に出ていた純白のワンピースだ。夏の日に麦わら帽子と一緒に身にまとって、ひまわり畑をバックにして立っていたら、ひと夏の恋が始まりそうな感じのやつ。うん、これなら、まあ、いいかな。
「えっと、それなら、うん」
俺の反応を見た美咲はワンピースを俺に押し付けて、
「はい、これ。それから……」
自らの鞄をごそごそと漁ったうえで、小さな袋を取り出して、俺に手渡してくる。
「これも」
「これ、は……」
「開けてみて」
「う、うん」
俺は言われるままに中身を確認する。
ヘアピンだった。
「取り合えず華ちゃんに似合いそうなの、全部持ってきてみたから、つけてみて?」
俺は受け取ったそれらをじっと眺める。サイズから色からかなりの数がある。当たり前だが、ヘアピンは一度にこんなに大量につけたりしないから、本人の言う通り「好みが分からないから片っ端から持ってきた」と言った感じだろう。全体的に女の子女の子しているのは持ち主の影響だろうか。
まあ、いいや。これは断るようなことじゃない。そもそも何で碧の描いた絵を見る機会があったのかとか、そもそも彼女がなんで俺の“前髪を上げた状態”での絵を描いてたのかとか気になることがあるにはある。
が、それをここで聞いたところで、笹木華着せ替えファッションショーが中止になってくれるわけではない。仕方ない。俺は腹をくくって、
「えっと……それじゃ、これ。つけてみますね?」
美咲は笑顔で、
「うん。きっと似合うと思うな」
そう言い切った。別に俺に似合う必要性は無いと思うんだけどなぁ……
次回更新は明日(10/14)の0時です。




