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第10話 異母妹との日々(2)

 今だったら、間違いなくこう言える。だから、私はゆっくりと口を開いた。


「エリカ。死んだら、ダメ」


 私は噛みしめるようにエリカにそう告げる。そうすれば、エリカは目を見開いた。多分、私がこんなことを言うとは思わなかったのだろうな。私も、自分の変化に戸惑っているくらいだもの。


「……お義姉様」

「貴女は、私のたった一人の異母妹。私の……大切な、家族」


 たとえ半分しか血が繋がっていなかったとしても。その血が、忌々しいものだったとしても。それでも、エリカは私の大切な異母妹。私は、この子のことを許している。だから、この子のことを絶対に守る。


「……私、貴女のことを守るわ。だから……私と、関係を修復して頂戴」


 エリカのことを強く抱きしめながら、私はそう告げた。そうすると、エリカは「……ごめんなさい」と震える声で言う。


「ごめんなさい、ごめんなさい……! 私、お義姉様に酷いことをたくさんした。ごめんなさい……!」


 その声は、徐々に涙交じりのものに変わっていく。私に大人しく抱きしめられながら、エリカは私に縋っていた。そんなエリカが愛おしくて、私はゆっくりと彼女の背を撫でる。


「私も、貴女の孤独に気が付いてあげられなくて、ごめんなさい」


 エリカの孤独は、きっと私よりも酷かった。私はあの両親に諦めの感情を抱いていたけれど、エリカはずっと愛されようと頑張っていた。そして、認められるために私を虐げていた。浪費をしていたのも、心を満たしたかったからなのだろう。もっと、私が分かって支えてあげるべきだった。あの頃は、そこまで心に余裕がなくて、気が付いてあげられなかった。


「私、お父様とお母様に愛されたかった。お前は劣っているって裏で言われるたびに、悔しくて苦しくて。……だから、イライジャ様を奪えば私の方が優れているって、示すことが出来ると思ったの……!」

「……そう」

「でも、結局イライジャ様にも捨てられて、家は没落して。辛かった。なのに……何処となく、清々しかった」


 それだけを告げて、顔を上げたエリカの表情は……とても、可愛らしくて本当に清々しそうだった。まるで、憑き物が落ちたかのような。そんな雰囲気。


「あぁ、もう無理をしなくていいんだ。自分を偽らなくていいんだ。お義姉様への罪悪感で潰されなくていいんだ。……そう、思えたの」

「……エリカ」

「私、お義姉様のこと怖かった。なんでも出来て、私のことを置いていく。本当は私――お義姉様に、憧れていた」


 エリカはそう言うと、私にもう一度縋ってくる。……この時、私はさらにこの子のことを守ろうって思えた。お父様とお義母様のことは、正直どうでもいい。でも、この子だけは。弱いこの子だけは、守らなくちゃって。


「エリカ。大丈夫。私が、貴女のことを守ってあげる」


 上から目線の言葉だった。きっと、前までのエリカだったら怒っていただろう言葉。それでも、エリカは怒ることなくただ一言「ありがとう」とはにかみながら言ってくれる。


「……お義姉様、私――」


 エリカが、何かを私に告げようとした時だった。不意に、サイラスさんがこっちに駆けてくる。そして「……貴女に、お届け物です」と言ってエリカに対し真っ赤な箱を見せてくれた。……お届け物? 一体、何? というか、どうして――……。


「……どうして、エリカがここにいることを、知っているの……?」


 エリカがここに来たのは今日。だから、エリカがここにいることを知っているのは、このリスター家の人たちだけのはず。


「ねぇ、エリカ」


 私がエリカに声をかけようとした時、私は気が付く。エリカが、露骨に震えていたことに。その後「それ、捨てて!」とエリカは叫ぶ。


「エリカ、どうしたの?」

「……それ、多分、あの人からのものなの。だから、捨てて!」


 私に抱き着きながら、エリカはそう叫ぶ。だから、私はサイラスさんに「……とりあえず、遠くに置いておいてくれる?」と問いかけてみる。そうすれば、サイラスさんは「かしこまりました」と言ってくれた。


「ねぇ、エリカ。ここに来ることを、誰かに話したの?」


 例えば、お父様とかお義母様とか。


 私はそう問いかけるけれど、エリカはただ静かに首を横に振るだけ。……だったら、エリカの友人とか? そう思うけれど、いまいちそれは想像出来ない。


「……あの人、ずっと私のことを追いかけてくるの。……私の行動を、監視しているの……」


 震える声で、エリカはそう訴えてくる。……もしかして、それってストーカーとか、そういうこと、なのかな。


「シェリル様。とりあえず、彼女を落ち着かせましょう」

「……そうね、マリン」


 慌てて側に寄ってくるマリンの言葉に、私は頷く。エリカは私に抱き着きながら、ずっと震えている。その背を撫でながら、私はゆっくりと「大丈夫よ」と言葉をかける。それでも、エリカの震えは止まらない。


「クレア、とりあえず客間に連れて行こうと思うの。……準備、してくれる?」

「……かしこまりました」


 クレアは私の指示を聞いて、不満そうな表情をするけれど颯爽とお屋敷の方に向かってくれた。

あけましておめでとうございます(o*。_。)oペコッ

今年も当作品をよろしくお願いいたします……!

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