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第21話 ギルバートとシェリルのデート(?)(6)

 そんなギルバート様を見ていると、私はなんだか不思議な気分に陥ってしまった。ただ、「そうなのですか」ということしか出来なかった。婚約を解消されたしたという話は、聞いていて気分の良いものではない。割り切っている私だって、出来れば触れられたくない部類の話題なのだから。


「元婚約者は、他の貴族の男と遊び歩くのが趣味でな。それでも、俺は家の為だと思って我慢していた。……だが、遂に『あんたに飽きた』と言って、婚約を解消されたんだ。今思えば、笑える話だな」

「……何も、言えませんし、笑えません」

「だろうな。ま、今となってはその元婚約者が何をしているかは見当もつかないが。なんといっても、実家から勘当されたと聞いている。今は平民として生きているのではないだろうか」

「……当然の処遇だと、思います」


 簡単に婚約は解消するものではない。普通ならば、相手の家のことを考えてかなりキツイ処遇を言い渡すものだ。まぁ、私の元婚約者であるイライジャ様は、とても高貴なる身分だったため、そこまでキツイ処遇は受けていない……と思う。なんといっても、イライジャ様のお父様は元王弟殿下ですし? 元を辿れば、彼は王家の血を引いているのだ。……そんな、キツイ処遇をすることも出来ないはず。


「でもな、俺は大層傷ついたんだ。……だから、今の今まで新しい婚約者も結婚相手も、必要ないと思っていた。特に、家に送られてくる娘たちはわがままだったり、問題児ばかりだったしな。……元婚約者を思い出して、嫌な気分になった」

「さようで、ございますか。……ですが、今の今までということは、今は違うのですか?」


 ふと、ギルバート様のお言葉が引っかかってそう言えば、ギルバート様は「……今は、少しずつ前を向けている」とボソッとおっしゃった。……前を、向けるようになったのならば、良かったじゃないですか。そう言おうとした。でも、言えなかった。……ギルバート様が、真剣に私の目を見ていらっしゃったから。……今まで、私はギルバート様とこんなにもしっかりと目を合わせたことがない。だから、照れて視線を逸らしてしまう。


「サイラスに言われた。……俺の言い訳は、シェリル嬢も使えるものだと。だが、シェリル嬢はそんな言い訳を使っていない。……そんなシェリル嬢を見ているとな、俺もこのままじゃダメだって思ったんだ」

「……そう、なのですね」


 ……私が、ギルバート様を変えたということなのだろうか? だけど……ううん、そう言うのはあまり好ましくないわよね。謙遜も時には必要だけれど、行き過ぎた謙遜は嫌味になってしまう。褒め言葉は、素直に受け取るべき……なのよね。


「褒めて、くださっているのですよね?」

「あぁ、もちろん」


 また空を見上げられたギルバート様は、私の言葉にそう返してくださった。……褒められた、のか。なんだか、やっぱり褒められるのって嬉しいかも。この年齢になって、ようやくそれに気が付けた気がするわ。……ここに来て、良かった。たとえ、いずれは出て行かなくてはならなくても。


「……シェリル嬢。俺、考えたんだ。……シェリル嬢さえ、よかったら――」

「――あっ!」


 ギルバート様が、何かをおっしゃろうとした時、不意に強い風が吹いた。そして、私のつばの広い帽子をかっさらっていく。……クレアとマリンが、せっかく用意してくれたのだから無くしたりしたくない。その一心で、私はひたすら手を伸ばした。


 幸いにも、風はすぐに止んだこともあり、少し先で帽子は拾うことが出来て。……良かった。そう思って、私はホッと一息をつくけれど……そう言えば、ギルバート様が先ほど何かおっしゃろうとしていなかっただろうか?


「ギルバート様。あの、今、何とおっしゃろうとされたのですか?」


 ベンチに戻って、私はギルバート様にそう問いかける。そうすれば、ギルバート様は「……もう、いい」なんておっしゃって、残りのサンドイッチを口に突っ込まれていた。……ご機嫌、悪くされてしまった?


「あ、あの、私何かやらかしましたか……?」

「いや、違う。……俺の、タイミングが悪かっただけだ」


 私が恐る恐るそう問いかければ、ギルバート様はそっぽを向かれてそうおっしゃると、「食べたら行くぞ」と続けられた。……あ、私が食べ終わるのを待っていらっしゃるのよね。


「すみません、急いで食べますね」

「……急がなくてもいい。喉につめるぞ」

「そんな、子供じゃないのですから」


 その心配は、絶対に子供にするべきことだろう。私はこれでも一応立派な成人女性だし、そんなことはやらかさない。……初日に、胃が食事を受け付けなかったのは、もう笑い話になっただろうし。


(本当に、美味しい)


 心の中でそうぼやいて、私はサンドイッチをパクパクと口に運んで食べた。……やっぱり、美味しいなぁ。そう思ったら、自然と口元が緩む。そんな私を、じぃーっとギルバート様が見つめられていたことに、私は気が付かなかった。

あと少しで二人のデートは終わりです(n*´ω`*n)引き続きよろしくお願いいたしますm(_ _"m)

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