最終話 未来への約束
その言葉がなによりも、誰からの賛辞よりも嬉しい。
「……私も、一緒の気持ちです」
はっきりとそう告げて、旦那様から離れようとしたとき。
ふと「シェリル」と名前を呼ばれて――唇に温かいものが触れた。
「――っ!」
今までだって何度も口づけはしてきた。けど、なんだろうか。不意打ちは、ズルいというか。
……こんなの、嫌いになるなんて、いつか離れるなんて無理じゃないか。
「……好きだ、一生、誰よりも」
「は、い」
私は頷くことしか出来なかった。だって、そうじゃない。
人間肝心なときに頭の中が真っ白になって、上手い返事が思い浮かばない。
そっと手を重ねて。もう一度指を絡めて。私は星空に視線を向ける。
「いつか、子供が出来たら。……また、ここに来ましょうね」
「……あぁ」
約束ともいえない希望的観測論。
それでも私はその未来があると信じている。
彼の肩に頭を預けて、目を瞑る。
「本当に、ありがとうございます。そして、今後ともどうぞよろしくお願いしますね、旦那様」
きっと今後もたくさん嫌なことも辛いこともある。
喧嘩だってするだろうし、嫌になることだってあると思う。
(でも、このお人とだったら大丈夫)
そう思う私の気持ちは、間違いじゃないはずだ。
今後も私は、この人と生きていく。
十五歳年上の旦那様と――ずっと、一緒に。
次のエピローグでお話は終わりになります。