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娘の転職物語

作者: 黒い折り紙

 娘が明日から「忍者」になるそうだ。折り紙で作ったボロボロの手裏剣をパジャマのポケットに突っ込んですやすやと眠っているが、既に手裏剣は山ほど逃げ出している。明日になれば多分全部出てしまっているだろう。可愛い娘が丸腰で任務に当たらなければならないと考えると、父親でなくとも不安になるだろう。よだれを垂らして爆睡する娘よ。父に忍者の知り合いがいないことを呪ってくれ。どれだけ頑張っても明日までに忍者とのパイプを持つのは無理だ。でも父は頑張るぞ。潜入する城を教えてくれれば、図面くらいは用意してあげられる。出来たら、エレベーターがあるお城が良いな、と父は思う。だから今はゆっくりと、眠れ娘よ。


 次の日、またいつものように娘の寝顔を見に来た。散乱していた手裏剣は全部無くなっていた。全部投げつけてきたのか、エラいぞ娘よ。しかしどういうことか、今日はデッキブラシを両手で抱えて爆睡している娘。枕元には分厚い本と、つばの広い大きな帽子が置かれている。まさか、と思い妻に確認してみたらやはりそうだ。娘は「忍者」から「魔法使い」に転職するようだ。まず、よく忍者を1日で辞めてきたものだ。素晴らしい勇気だ娘よ。しかし、世の中そう甘い物ではない。まず、魔女はデッキブラシを持たない。ホウキとデッキブラシは全く違う。まぁ、デッキブラシでも飛べないことはなさそうだが、それを周りの魔法使いが認めるかどうかが心配だ。馬鹿にされないだろうか、いじめられないだろうか、心配事は尽きない。よだれを垂らして爆睡する娘よ。父に魔法使いの知り合いがいないことを呪ってくれ。どれだけ頑張っても明日までに魔女とのパイプを持つのは無理だ。でも父は頑張るぞ。どういう方向の魔法使いになるのかを教えてくれれば、話し口調くらいは教えてあげられる。出来たら、男を誘惑するタイプの魔法使いになってくれるな、と父は思う。だから今はゆっくりと、眠れ娘よ。


 そのまた次の日、家に帰ってきたら玄関にデッキブラシが転がっている。もしや、才能がありすぎてホウキを使わなくても空を飛べるようになったのか。凄いぞ、娘よ。褒めてあげようと寝室に向かう。そしてドアを開けると、出迎えてくれたのは「馬」だった。更に馬の足下には弓と矢が落ちている。まさか・・・。心の騒ぎを抑えるために娘の寝顔を確認する。いつも通りよだれまみれで何より。ただ今肝心なのは手に何を持っているかだ。そして娘が抱える者を見て、ほっと安心した。刀だ。不安だったのは、あの馬と弓矢のせいだ。あれだけを見ると、今度は「ケンタウロス」に転職するのかと思って焦りに焦った。トップレスはさすがに、だ。まぁ、今度の手掛かりを鑑みて、次の転職先は「サムライ」と言ったところだろう。これは多分間違っていない。なぜなら娘の髪の毛が頭の上で結われているからだ。ただ娘よ、言わせてくれ。サムライのチョンマゲは頭頂部を剃り上げて出来たものだ。長い髪の状態で髪を上で結んだだけでは、それはお相撲さんのまげでしかない。父はサムライは許してもお相撲さんは許さないぞ。トップレスだからね。お相撲さんは一度土俵から降りて貰って、今度はサムライと来たか娘よ。サムライに興味があったなら忍者からの流れでサムライに行けば良いのに、何故魔法使いをはさんだ。社会経験という意味では良いが、あまりにも世界が違いすぎると思うのは父の考えすぎか。よだれを垂らして爆睡する娘よ。父にサムライの知り合いがいないことを呪ってくれ。どれだけ頑張っても明日までに戦国大名とのパイプを持つのは無理だ。でも父は頑張るぞ。もしも弓の名手になりたいと思っているのなら、元アーチェリー部の父と元弓道部の母が基礎から教えてあげることが出来る。出来たら、軍師になってお殿様の隣で居られるサムライになって欲しいな、と父は思う。だから今はゆっくりと、眠れ娘よ。


そしてどうか、「お嫁さん」に転職するのだけはやめておくれ、可愛い娘よ。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。


こんな可愛い娘さんが居れば、明るい家族生活になるでしょうね。


子供の移ろいやすい心を、転職というものに置き換えてみました。子供の頃は漫画やゲームに触発されて真似ばかりしていたものです。興味が移るたびに欲しい玩具も変わって、今思えば親って大変ですね。でもそれが楽しかったりもして。家族って素敵ですね。


もしよろしければご評価の方、よろしくお願いいたします。

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