04-16 『仲間達』とのひとときの休息
「御主人様達はお休みください」
ギア勢は、姫とポンコツの指示のもと、周りの木々を集めキャンプの準備をしてくれている。
疲れを知らないギア達がいると楽だ。
今はどうしようもないことから、母さんのことは今はもう後回しとした。
ギア達のおかげですぐに休む準備ができて、ギアに囲まれながら休むことにする。
「お兄たんの茶髪姿。しっかり見るの初めてなの」
ナオが珍しそうに俺をじろじろ見る。
碧はすでに相変わらずのトリップ中だ。
「朱だったボクにも、お兄ちゃんの茶髪姿、しっかり見せてあげたかったな……」
少し寂しげな表情を浮かべながら俺の髪を撫でる碧の一言が印象的だった。
朱と碧。
俺が好きになった二人は今は碧として、俺の前にいる。
朱は朱として生きてきたのだと思うと、碧となった今を、朱はどう思っているのだろうか。
そう思っても、今は朱はいない。そう思うと、少しだけ寂しさがあった。
朱は、もう碧の中にはいないのだろうか。
いや、こういう考えもそもそもおかしいのかもしれない。
碧は朱の記憶も持っている。
朱でもあり碧でもある、と言うのは、俺とナギとの関係とも違って不思議だった。
ただ、先程の母さんのことや神夜達のことを碧が忘れていたようなことは、何か引っ掛かる。
もしかしたら碧は、生まれ変わる時の記憶がほとんどないのではないだろうか。突発的に何かの拍子に思い出すようなことも、その為なのかもしれない。
それはそれで、そんなとんでもないことを起こしているのだから、不思議ともあまり思えないのだが……
そう思ったとき。
もしかしたら、碧が。
碧という存在さえも、突発的ななにかで消えてしまうのではないか。
そんな考えが一気に押し寄せてきた。
朱とまた会えるのかもしれない。
だけど、碧と離れるのは嫌だ。
「? お兄ちゃん? どうしたの?」
気づけば、目の前で寂しそうに俺を撫でる碧を抱き締めていた。
離したくない。
やっと会えた大切な人だ。
「『凪様』」
急に、碧が俺をそう呼んで俺の頭を優しく撫でた。
そこにいるのは朱そのもので。
「こうやって、時々『朱』になったほうが、お兄ちゃん、落ち着く?」
碧がいなくなったのかと驚いた。
何だか見透かされたようで恥ずかしい。
碧は碧でもあって、朱でもある。
そんなことを考えるのも何だかおかしかった。
二人であっても一人であっても。
その分愛せばいいだけなんだから。
「うん。ちょっと落ち着く」
俺がそう言うと、碧は少し俺から離れて気まずそうな表情を浮かべた。
「んー……ボクとしては、朱でもあるし碧でもあるけど。他の人好きになられたみたいな感覚があるよ?」
「う……」
「でも、どっちもボクだから。お兄ちゃんがまた悲しくなったら教えてね? ほら、朱の時に慰めさせてくれなかったし」
……はい。すいません……。
・・
・・・
・・・・
外は暗くなり、周りの木々を焚き火の光と、近くの屋敷から漏れる光が照らし出す。
静かな森のなかに、ぱちっと薪の爆ぜる音と木々のざわめきが時折聞こえる静かな世界。
ここ最近の忙しさから解放されて、落ち着く時間が訪れていた。
今は、この場所には俺とナギだけがいる。
碧とナオは、姫に守られながら屋敷の中で旅の汚れを落としているところだ。
「ありがとう」
ナギがふと、そう言った。
「僕の体を止めてくれて」
「ああ……」
ナギには悪いが、あの体には少しだけ恨みを込めて刺した。
俺の左腕やちっちゃい頃の恨みが少なからずはあったからだ。
恨みがないわけではない。特にあの時は記憶が押し寄せてきたこともある。
「悪い。少しだけ、鬱憤を晴らした」
「いいんだよ。それで」
お互いにそれで終わりにしよう。
その想いが伝わったのか、ナギは静かになった。
「これで、新人類に専念できる」
ここは町に近すぎる。いつか何かの拍子にギアが溢れてしまえば町の被害は計り知れなかった。絶機を止めれば、町への被害はなくなる。
おまけに、予想外ではあるが、心強い味方も増えた。
今も、俺達の安全のために辺りを警備しているギア達を見ながら、かなりの収穫があったと思わなくもない。
ナギも一緒にここで消えようとしていたのだろうが、それも防ぐことができた。
俺の中にいた家族の一人。
もう、家族を失うのは嫌だった。
ただそれだけのこと。
「君は、優しいね」
「よせ。優しくなんかない」
笑うように言うナギに照れて、ついつい否定する。
「これからも君と。君や君の仲間を守るために、僕も頑張るよ」
色々俺のことを考えてくれるもう一人の家族に感謝しながら、俺もお前のために頑張るよと、心に思いつつ、戻ってきた碧とナオと一緒に、旅の疲れを癒すために眠りについた。
明日からまた、町へ帰るために安全ではない道を歩く。
今はゆっくり休んで。町に帰ったらすぐに拡神柱を作らないと。
町に帰る……?
……あ。このポンコツ達。どうしよう……。
そんなことを思いながら、眠りにつく。
翌朝。
相変わらずの姫の朝のちゅーなるものをされて起きて、また碧やナオが騒ぎ出す。
そんな中。
碧のスマホが鳴った。
電波がここにも繋がっていることに驚いていると、どうやら、ポンコツ達が情勢を知るために、近場の電波搭を改修して町の情報などを得ていたことを知った。
ポンコツ達は意外と色んな近場の情報を知っていることに、父さんの行方もわかるかもしれなくて希望がもてた。
今度しっかりと話を聞こうと思いつつ、碧に電話を取ることを促す。
スマホの先から騒がしい音と焦った貴美子おばさんの声が聞こえる。
『新人類が攻めてきた』
そんな町の状況が、俺達に知らされた。




