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長月の明けと、一枚のメモ用紙 浦川編

作者: 三島和人

前作「長月の明けと、一枚のメモ用紙」の女の子視点バージョンです。前作を読んでいないと、話がわからないと思います。


※この作品には、様々な文学作品が登場します。


 その夕暮れは、校舎を照らしても、私を照らしても、私の心までも照らしてはくれなかった。あかく染まる世界も私も、私の心を置き去りにしていた。……そんな文章さえ思いつく自分が腹立たしかった。手に持っている小説は、宮沢賢治の「シグナルとシグナレス」のところで栞がしてある。シグナル柱同士の、可憐で悲痛な恋の話。シグナルとシグナレスは、悲痛ながらもそこには楽しさがあった。私は物語の最後の二人と同じように、ほっと小さな息をした。雨の跡が残る透き通った空に、一瞬で私の息は溶けて、跡形もなくなった。その一連の出来事は、さらに私の心を世界から切り離した。


 学校から駅までの帰り道。歩いて十五分ほどの距離。その短い距離の間に、いったい何人の人々がそれぞれの生活を送っているのだろう。そう思うと私はこの道に、言葉に余るいとおしみを覚え、同時に同位の怖さも覚える。瓦葺きの家の前には、いつも三毛猫がいた。家は空き家で、猫の住処になっている。その三毛猫は、まるで管理人のようにその空き家に居座り、他の猫を迎えいれていた。私はその光景がたまらなくおかしくて、一日のうちで数えるほどの笑顔を猫に見せるのだった。


 帰りの電車の中、私はいつのまにか疲れきっていて、座席に座り目を瞑っていた。小説を読む気力はなく、外を見ることもできない私には、目を瞑るか床をじっと見る以外、選択肢はなかった。乗客は多く、少し騒がしい。私はその狂想曲が好きだった。決まったものに縛られることもなく、重苦しくなることもない、軽快で晴れやかな旋律。しかし、私は同時にその旋律を狂おしく想っていた。車両のどこかで、同じ学校の女の子が高い声をあげて笑っている。その耳障りな旋律に少し顔をしかめても、何も変わることはない。降りる駅のアナウンスが聞こえてくるまで、私は眠っていたかのように世界から目を覆っていた。


 家に帰ってからの私は、女であり、男であり、また、子供でもあり、大人でもあった。小説を書いていると、本当にいろいろな人が登場する。それは自分が創り出したキャラクターではあるのだけれど、やはり何かが違っていた。もっと近くて、同時に、最も遠い存在だった。今書いているのは、ただの恋愛話。何か不思議なことが起こるのではなく、病気や事故や事件があるわけでもなく、浮気話や別れ話、三角関係などがあるわけでもない、それだけの物語。しかし、それは私には必要だった。それは憧憬なのか、羨望なのか、それとも希望なのか。私はそれを知ることができず、筆を進めていた。暗い部屋で、電気スタンドの灯火を頼りに、原稿用紙に言葉を並べていく。そう、ただ言葉を並べているだけの、どこにも公開していない自己満足の世界。その世界は、すでに二千枚の紙の束となっていた。その紙の重さが、私の全てなのかもしれない。目の焦点を合わせると、いつの間にか筆が止まり、私の世界は消えていた。それと同時に、私の意識も途切れていった。



 翌日、目が覚めたのは三時だった。机で目を覚ますのは、これで何度目だろうか。鏡で顔や手にインクの跡がついていないか確認すると、昨日書いていた小説を読む。途中で消えた私の世界は、ひどく惨めだった。よくわからない場景が並び、よくわからない人物が登場し、よくわからない話を演じている。しかし同時に、それらを胸が張り裂けそうになるほど理会できる自分もいる。たった数枚に綴られたそれを、いますぐに白で塗りつぶしたかった。何も見えない世界を、白で塗りつぶして見えなくしたかった。しかし、それができない私には、いつものように紙束に積むことしかできない。これでまた私の世界の重さが増えた。これでまた――。


 三時半。寝ることができず、私は一冊の小説を取り出し、その中のとある話を読みはじめた。芥川龍之介の「蜜柑」。その主人公が感じた「不可解な、下等な、退屈な人生の象徴」。客車の中にもプラットホームにも誰もおらず、ただ檻に入れられた子犬だけが時々悲しそうに吠え立てている。おそらく、その子犬が私だ。遠くに行く列車と、主人公と、やがてやってくる三等の赤切符を握り締めた小娘を見送りながら、ただ鳴いている、泣いている。ちらりと見えた小娘が持つ蜜柑は、なんて鮮やかな色をしていたことだろう。私は電車の外が見えない。見ることができない。鮮やかな色をした人々の生活を、横目で追い越して行くことなんて決してできない。元気に走り回っている子供。懸命に水田を整頓しているおばあさん。郵便配達をしているお兄さん。そんな彼らを、蜜柑の鮮やかさすら持たない私が追い抜いていく景色なんて見えない。――いったい、どれだけの嘘を重ねればいいのだろうか。


 自分の心の中を迷っているうちに、私はいつの間にか駅のプラットホームに立っていた。午前四時過ぎ。たまにあることなので、家族は心配しないだろう。私はここに、芥川龍之介のようなあの人生の象徴は感じられない。いままさに動こうとしている町に、敬愛の念すら感じる。そしてそれは、私を除いた歯車の集まりで回っている。私はそれを追いかけても、追いかけても距離は縮まらない。それはそうだろう。いくら走ったところで歯車はただ回るだけで、その場から移動することは許されていない。ならば、車輪ならどうだろう。回れば回るだけ、遠くへ連れていってくれる。しかし、それは電車と同じだった。ちょっと押すだけで、慣性によって止まることなく、ただ乗っているだけで、あっという間に人々の生活を追い越して、自分は何も進んでいないようなもの。では、私は私をいったい何に思えばいいのだろうか。


 やがて電車がホームに入ってきた。中に乗ると、ざっと乗客を確認する。作業服の男の人が一人と、おばさんが一人。二人とも寝ている。男の人は仕事帰りだろうけど、おばさんは飲み会か何かに参加して、終電に乗り遅れた感じだった。運転手は私が乗り込んできたことを見ると、少し首をかしげていた。それはそうだろう。こんな始発に、制服姿の女が乗ってくるんだから。その運転手に定期券を見せる。朝の早い時間は駅員もいないので、電車の乗員が切符等を扱うことになる。しかもワンマンなので、運転手直々に。私はそのあと、座席に座るかどうか迷った。ただなんとなく、このがら空きに座るのが寂しかっただけだ。結局私は立っていることを選び、運転手の首をさらにかしげさせることになるのだった。


 走っている電車の中で、外を一切見ないよう、小説を精読する。晴耕雨読という言葉を引例にするなら、私からみる外の天気はずっと雨ということだろうか。雨は好きなので、それで差し支えはなかった。小説は、島崎藤村の「千曲川のスケッチ」。まだ読んだことはなかった。適当に買ってきていた本の山から、適当に持ってきただけだ。「シグナルとシグナレス」や「蜜柑」のように思い入れもない、私にとって真っ新な物語。それを読み進めていると、電車が次第に減速していくのを感じた。この時間に停まることが意味あることなのかと考え、私のような例外がいるかもしれないということに気づく。電車は誰もいないからといって停まらないことは許されない。その虚しさのために、私が外を見られることはなく、電車は停まった。


 ――予想に反して、今日は例外がいた。小説から目を離し、その人を見る。意外にも、私はその人のことを知っていた。古井知也先輩。元生徒会長。目立ったことはしなかったが、なぜか人気があった。彼には不思議な存在感があった。それが自然に、すっと解けこんでいくような感覚。だから私は、彼を小説の主人公にしたことがあるのだろうか。彼は私をちらりと見てから、座った。それと同時に、電車は動き出した。私はまた小説を読み始めた。「千曲川のスケッチ」は小説や詩などというよりは、日記のような一面を持っていた。いわゆる写生文の部類に位置するものだが、北陸に行ったこともなく、その時代の場景もほとんど知らない私には、想像するのは難かった。集中力が途切れ、仕方なしに本を読むのをやめ、外に焦点を合わないようにしながら、少し周りを覗く。男の人とおばさんは相変わらず寝ていた。降りる駅は大丈夫なのだろうか。古井先輩は忙しげに視線をいったりきたりさせていた。広告を見たり、外を見たり、私を見たり――。私は読んでいる振りをしようと、時折知らないページをめくっていた。


 やがて電車は、トンネルの中に入っていった。電車の照明以外に、光は何もなかった。私はおもむろに外を見た。誰もいないその空間は、私にとってある種の天国だった。

”そこには誰もいない。誰もいないから、決まり事がない。決まり事がないから、罪がない。罪がないから、地獄ではなく、人の世でもなく、ここは天国なんだ――。”

そんな小説の一文を思い出す。自分で書いたのか、誰かのを読んだのかすらも覚えていなかった。それでも、一言一句違えていない自信があった。

 すっと光が差し込んでくるのを感じると、外を見るときとは逆に、すぐに本に視線を注いだ。不思議なことに、「千曲川のスケッチ」は先程とは姿を変えていた。私はその情景をすんなりと受け入れ、私はその場景の中にいた。青い野面のらには蒸すような光が満ちている。彼方此方の畑側にある樹木も活々とした新葉を着けている。雲雀ひばり、雀の鳴声に混って、鋭いヨシキリの声も聞える――。

 気がつくと、右側から街の光が入らなくなっていた。おそるおそる顔を上げて見てみると、そこは海だった。どこかの灯台の光か、海は少し明るかった。海面では何かの木の板が波に揺れていた。少しずつ遠くなる木の板は、まるで羽根のように見えた。ゆらゆらと降って、やがてはどこかへ消えてしまう、羽根のように。波の花がその手助けをしている。その板は、少しずつ遠くなると思うと、いきなり消えてしまった。それが私には悲しかった。しばらくして海は遠ざかり、電車は再び街の中を走っていく。「千曲川のスケッチ」は、再びその姿を私に見せなくなっていた。少しページを飛ばしても、それは変わらない。ちらっと電車の中を見ると、古井先輩が寝ていた。その寝顔はどこか可愛くて、その姿は何故か、さっき見た羽根の様子と重なって見えた。そして、いつの間にか私は、彼が消えていく――私の前から離れていく――のが怖くなった。じっと彼のことを眺める。次に、自分の手を望む。小説しか握っていない手は、他の何かをつかみたがっていた。その先にあるのは、きっと、きっと――。

 だから私は、彼に話しかけた。


 昔、夏休みのあの日。私の心は高い空よりも、もっと高い場所にあった。青に溶けて、消えているのと同じだった。何も考えられなくて、何も見えなくて、それでも世界は何故か真っ青で。私はおぼつかない体で、足元に存在しない道を歩いていた。そこは不思議にも、気持ち良かった。隣には何かが在った。それが何かは、気がついていた。私はそれを求めていた。それが間違いだと気がつかせてくれたのは、一人の新社会人だった。隣の何か――死を求めて、自らを殺そうとしていた私を。



 そのとき、私は公園にいた。公園には高い崖があった。私は崖を確認したあと、のどが渇いていることに気づき、ごみ箱から空のペットボトルを拾って、蛇口から水を注いで飲んだ。その水を飲んでいると、公園に一人のサラリーマンが、タオルで汗をふきながら入ってきた。平日は誰もいないはずの、人気のない公園なのに。人がいるところで自殺なんてできるはずもなく、私は早くそのサラリーマンが出ていくことを願った。しかし、そのサラリーマンは私に話しかけてきた。

「休憩中ですか」

休憩という言葉に、違和感を覚える。しかし、ペットボトルの水を飲んでゆったりしている私の姿は、客観的に見たらまさしく休憩だった。サラリーマンは、若い男だった。たぶん、二十歳くらい。まだ新しいだろうスーツなのに、色あせている。ああ、何を考えているんだろうか、私は。そうしている間も、青い世界は確かに私の中にいる。そのまま無視していれば、サラリーマンはどこかへ去っていってくれるかも知れなかった。しかし私は、その言葉に答えてしまった。

「そうですね、休憩中です」

ふと、この人が最期の話し相手になることに気がついた。何も知らない他人との会話が最期。なんとなく、私らしいと思った。

「それにしても、暑いですね」

……言われてからやっと、夏の暑さが降りこんできた。自分がのどを乾かしている原因さえも、わかっていなかった。気がつけばそこは夏。セミの声が耳障りだ。ペットボトルの水はぬるかった。

「僕、新入社員なんですよ。営業を担当しているんですが、新人は自転車で営業回りしないといけなくて。せっかく車の免許も取ったのに、つまらない規則ですよね。まるで学生生活みたいですよ。学校につまらない規則を押しつけられて、先輩にもつまらない規則、押しつけられて」

この人は何を思って、私に愚痴をこぼしているのだろう。疲れているのなら、一人で座って休んでいればいいのに。私は適当に下手な相槌を打っていた。ああ、何してるんだろ、私。ほら、今だってあの青い世界――が、消えていた。

「それでは、そろそろ行かないといけないので、失礼します」

サラリーマンの人が去っていく。私は呆然とそこに立ちつくした。ここに来た目的すらも忘れそうになった。世界は夏だった。生命が一番栄える夏だった。私は青い世界を探した。少し探すと、ようやく見つけた。そこは、何も変わっていなかった。私は青い世界を歩いていた。その世界は自分で自分を殺す気がないひとが訪れるまやかしの世界だと知ったのは、すぐ後のことだった。そう、本当に死と直面している人は、こんな生易しい『場景』ではないのだ。



 駅のホームには誰もいなくて、私は何かに吸い込まれそうになった。しかし、そこには歯車も車輪も、蜜柑も存在しなかった。あるのは小さな、とても小さな長月の明けに生まれた、奇跡だった。それから離れるのがこわくて、私がホームのベンチに座ると、古井先輩は飲み物を買いにいっていた。私も少しのどが乾いていることに気づき、水筒を取り出してお茶を飲む。ガコンと音がすると同時に、電車は次の駅へと走りだした。静かな町に騒がしい音を残して行く。古井先輩はいつの間にか私の隣に座っていた。二人で電車を見送る。電車の音が聞こえなくなった後、もう一度お茶を飲んだ。どこかで緊張しているのかもしれなかった。

「私、浦川朋子(うらかわともこ)っていいます。一年生です。えっと……先輩さんですよね?」


 古井先輩と話していると、色々なことを思えた。楽しいことも、悲しいことも、つらいことも、青い世界も、全てが流れこんできた。でも、それを全て受けとめることができた。私は誰も通らない街を歩いていた。駅のホームで話したあと、突然そうしたくなったのだ。いつもの気まぐれ。やがて、公園が見えた。周りから切り取られたような、暗い公園だった。そこが私にふさわしいと思った。それに、古井先輩ともっといたかった。あのときのサラリーマンのような心地よさが、彼にはあった。……いや、同類の心地よさでも、その強さは全く違う。さすが大人気の元生徒会長、と皮肉みたいに敬慕する。私は、その不思議な感覚に溺れながら、公園のベンチに座る。古井先輩が、公園の入り口にまだ立っていることに気づき、私はちょっと手招きをする。彼は、私には理会できない人間だ。彼を主人公にした小説も、きっと彼の表面上や、根拠のない噂しか捉えきれていないのだろう。彼の存在を頭の中で膨らませているうちに、今度は心の方が熱くなってくる。私はそれを静めるために、水筒でお茶を飲む。熱いお茶は、私の体を流れて、全てを拭い去った。しかし、熱いという残留は、いつまでも消えなかった。私は、その残留にまだ溺れていることに気づき、それを自覚する。古井先輩と離れたくない。もっと古井先輩を理会したい。それが恋愛感情かと問えば、現時点ではそうではない。しかし、慕わしいことには違いなかった。古井先輩が隣に座ると、少し決心をしてから、古井先輩との接点を望み、いつも持ち歩いているメモ用紙に、さっと自分の電話番号とメールアドレスを書きこむ。しかし、それをいつ渡したらいいかわからず、ポケットにしまいこんでしまった。


 学校が好きか、その彼の質問に、私は迷うことなく好きと答える。学校でいろんな人を見る行為を、私は愛していた。教室にいる三十数人の行動が、一度に見られる。もちろん休み時間などは教室の外にいる人も多かったが、それでも半数は教室の中にいる。それは憧憬であり、羨望であり、そして希望でもあった。私は彼らから遠い存在だったが、同時に、彼らの仲間でもあった。でもそれはクラスメイトという仲間の枠で、それが重い枷になっているということを感じているのも、事実だった。

 そんなことを考えていると、寝不足からか、一つ欠伸が出る。それを古井先輩に見られ、少し恥ずかしい。そういえば、今朝はいったい何時間寝たのだろうか。そんな意味のない思考を少しだけ巡らせたが、すぐにそれを振り払う。そして古井先輩の質問の意図を考える。その答えはあっさりと見つかった。私は同じ問いを古井先輩に返す。憐察するような作業の心地よさを、私は感じていた。憐察とか、憂いとか、そんな感情が生まれるのは、いつ以来だろうか。……たぶん、それはあの青い世界が生まれた日以来、一度もなかったことだろう。そんな余裕すらなく、何かに猶予していたのか。

「ほら、三年生って受験だろ? 周りの人間は勉強ばかりでさ。いや、別に勉強が嫌ってわけではないんだけど、なんていうか」

”なんていうか”、それが古井先輩の憐察とか、憂いとかなのだろう。


 古井先輩がN大学志望だと聞いて、何故か嬉しかった。ただ遠くに行きたくないだけ。ここしか知らない私は、電車と同じように、外を見ることができなかった。外を見るのがいつの間にか怖くなっていた。井の中の蛙は、大海の存在だけを知っていた。だから、その大海に押し潰されそうになっていた。――だから、私の世界は青いのだろう。


 唐突に生まれたあの青い世界は、一生消え去らないという確信があった。いや、一生私が離れられない、という方が正しいのかもしれない。私はずっと、あの青い世界に甘えていたい。良くも悪くも、あれが私の世界なのだから。

「そこには、そこに住む人の営みがある、町がある。私はそれをあっさりと通り越していく、そう考えると嫌になって」

古井先輩に聞かれて、そう答えた私。やっぱり私は、自分の世界に劣等感を抱いているのだろう。

「もともと好きなんですけどね、外を見るのは」

でも、そんな劣等感も包容できたら、私はようやく、私を認められる。そして、それは――古井先輩の手は、暖かかった。

「ほら、こんな公園より、もっといい場所に連れていってやるよ」

私はしっかり繋がった手を見ながら、「はいっ」と笑った。ポケットの中のメモ用紙を、もう一方の手でしっかりと確かめた。この長月の明けの情景は、ずっと私の心に刻まれるのかな。

個人的な趣味全開の作品。

前作と対比させるべき場面は丁寧に対比させましたが、それ以外は好き勝手に書いている印象があります。

一応続編を書ける猶予なども残しているのですが……これ以上書くのもどうかな、と思ったりもします。たぶん浦川が可愛くなっていくだけの話になると思います(笑)

部分的には自分の過去の経験も入っていて、ここに公開している・していないに限らず、自分の作品としては一番のお気に入りです。

最後に、宮沢賢治先生、芥川龍之介先生、島崎藤村先生には御感謝と変わらぬ御冥福を。

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