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第7話

 とある金曜日。


 今日の魔法使いたちは少しそわそわしている。


 特に高橋さんと山本さんがめっちゃそわそわしている。


 実は今日、わたしの歓迎パーティがあるのだ。


 ただ、居酒屋でのむだけだけどね。


 高橋さんと山本さんはお酒大好きだから、この日を楽しみにしてたんだって。


 ってか、まだまともに山本さんと話してなくて人柄掴めてなかったけど、こんなにもウキウキ出来る人なんだ―。


 もちろん、わたしもウキウキ―。


 してるわけないじゃん。


 どちらかというと憂うつだわ。


 だって、歓迎されていないと分かった上で歓迎されるんだから。


 どうせこれもお世辞でしょ?


 お・世・辞!


「佐藤さん、今日はすごく楽しみね!」

「はい!」


 わたしは鈴木さんに満面の笑みを送った。


 ☆



 仕事を終え、鈴木さんたちと居酒屋に向かった。


 中に入ると、金曜日ともあって仕事終わりの妖怪たちが大いにお酒を楽しんでいた。


 大声で歌う者、大声で上司の悪口を言う者、大声で彼女への愛を誓う者―。


 とにかく賑やかである。


 店の中へ足を進めると、すでに高橋さんと山本さんがのんでいた。


「おい、遅いぞぉ!お酒がなくなるぞぉ!」

「早くのめのめぇぇぇ!」


 ―これ、わたしの知ってる高橋さんと山本さんかな?


 高橋さんって本当に5(ファイブ)なのかな?


 戸惑うわたしを鈴木さんは優しく席へと誘導してくれた。


 皆が席について、


「「「「「「「乾杯!!!」」」」」」」


 高橋さんは生ビールを一気に流し込む。


 山本さんは左手にビール、右手にタバコを持ち、交互に嗜んでいる。


 わたしは無難にオレンジジュース。


 テーブルには魔コッケイの焼き鳥やタタキ、だし巻き卵などなどたくさんの料理が並べられた。


 ヤバい―。


 すごく美味しそう―。


 垂れそうになるヨダレを必死で隠す。


「「「「「「「いただきます!」」」」」」」


 あっ本当に美味しい。


 わたしは無我夢中でご飯を食べまくる。


 この際、品がないとかどうでもいいや。


 しばらく経ったところで、


「では、場が盛り上がってきたところで佐藤さんに意気込みを言ってもらいましょう!」


 気がつけば田中さんも出来上がっている。


 鈴木さんもワイン片手に盛り上がっている。


 ここの人たちの素性ってマジでどっちなん?


「これからたくさん迷惑をかけると思いますが、それでも立派なウィッチになりたいと思います。」


 わたしが言い終わると同時に拍手が沸き起こる。


 その後も趣味の話とか、休みの日は何をしているのとかいろいろと話をした。


 普段あまり話さない渡辺さんや伊藤さんともお話しできた。


 エピンでもこんなに話せたことないのにすごい不思議。


 ちょっと楽しいかも?


 わたしが心の底から楽しめる理由はもうひとつ。


 読者の皆さんはお気付きかもしれないが、この場に中村さんの姿はない。


 まぁあの人が一番わたしの事を歓迎してなさそうだもんね。


 ただ、そのおかげで怒号に怯えることもなく普通に楽しめている。


 歓迎会は3時間程度でお開きとなり、楽しい時間はすぐに過ぎてしまった―。


 ☆


 エピンを出た頃は少しだけ明るかったのに、この時間ともなればもう真っ暗である。


 星が元気に光輝いている。


 帰りは途中まで渡辺さんが送ってくれた。


「今日は楽しかった?」

「はい、とっても!」

「皆、お酒が入ると人が変わるから驚いたでしょ?」

「いつもと違う人に変わってたので驚きはしましたね。」


 渡辺さんと別れるまで終始話し続けていた。


 気がつけばもうお別れ。


「じゃあね、気を付けてね。」

「はい。ありがとうございました。」


 なんか、本当に楽しかったな―。


 お世辞とか思って本当に申し訳ないな―。


 わたしはにやける顔を必死で隠しながら箒をとばすのであった。


 身体にある危険が迫っていることも知らずに―。

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