第6話
月曜の朝から魔法使いたち(主に中村さん)の怒号が響き渡る。
「ちょっと、何で商品に傷つけるようなことするの?!」
ごめん、わたしに怒号を響かせるのは中村さんだけだったわ。
中村さんが怒り狂う理由はこれ。
わたしはいつも通り、暇人なので素材を片付けていたのだがどうやら知らないうちに吸血コウモリの血が入った瓶に傷をつけてしまったらしい。
「すみません―。」
「高橋さん、どうする~?このままだったら売れないよ~?」
また聞こえるように嫌みを言ってる。
だったら、自分で片付ければいいじゃんか!
「まぁそれは疑似魔力を作るのに使いましょうか。」
「じゃあ、売らないってことでいい~?」
腹立つ腹立つ腹立つ腹立つ!!!
わたしはあまりの悔しさに唇を噛み締めた。
目頭が熱くなっているのも分かる。
『ウィッチって辛いよね。でも、僕も応援してるから。だから、頑張れ!』
『何で泣くの~?笑っていよう!笑ってないと人生楽しくないぜ?』
ここで泣いちゃダメ。
お2人に誓ったじゃんか。
でも、このように聞こえるように嫌みを言われるだけまだまし。
最近は2階で2人きりになったときに心を抉るような嫌みを言われることが増えた。
「あんたのせいで仕事が全然進まない。わたしが怒られることになるわ。」
「暇なら暇人らしく仕事を探せば?」
気がつけば、こういったいじめがほぼ毎日続くようになった。
でも、「助けて」と声に出して言う勇気はなかった。
助けを求めた事が中村さんにバレたら何をされるかと考えるだけで怖かったからだ。
だからこそ、誰かこの現状に気がついて―。
切実にそう願った。
しかし、誰にも気にされることなく時は流れる。
『ウィッチって辛いよね。でも、僕も応援してるから。だから、頑張れ!』
『何で泣くの~?笑っていよう!笑ってないと人生楽しくないぜ?』
―ごめん、小林様、加藤様。
もう無理だよ―。
助けて―。
わたしはたった1人、休憩室で誰にも見られることなく涙をぼろぼろ流しながら心の中で叫ぶのであった。