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第5話

 ある日のことだった。


 午前中は珍しくお客様がまばらに来る程度だった。


「今、お客様が少ないし挑戦してみる?」


 そう言って伊藤さんから手渡されたのは10種類ぐらいの素材が書かれた注文表だった。


 普通は1つや2つの素材を買いに来る客が多いんだけど、たまに10個ぐらいまとめ買いする客がいるんだよね。


 でもさ、勝手なことすると教育係怒るんだよなぁ―。


「やっていいんですかね?」

「今暇だし、いいんじゃない?」


 何事も経験かなと思ったわたしは注文表を受け取り、素材を集め始めた。


 えっと、1つ目ヤモリのしっぽと水中ミミズ、それに斑点イモリの頭部と―。


 わたしは棚割表を見ながら素材を揃えていく。

すべての素材を揃えて終えて、それらを中村さんに手渡す。


 このエピンでは集めた素材を第3者にチェックしてもらい、そのままその人が販売に行くという方法をとっているらしい。


 ほら、わたしもあれじゃないこれじゃないとか言われてたでしょ?


 理由は、素材が増えてきたせいで素材の取り間違えが多発したからだとか?


「佐藤さん、丸呑みイグアナの心臓じゃなくて胃袋。」

「あっすみません―。」


 このように指摘されない日は今のところないです。


「佐藤さん。今その素材を集めるのに何分かかったか分かってる?優雅に素材集めをしている間にお客様を待たせてるということを理解してる?出来ないのなら勝手なことしないで!」


 田中さんの怒鳴り声が店内に響き渡る―。


 だから、教育係の許可なしに勝手なことやりたくなかったんだよ。


 気がつけば今はお客様が増えて少しだけ周りがバタバタしている。


 そう、それはわたしが空気も読めずに自分がやりたいことを好き勝手してるという状況を作り上げていた。


「はい―。」


 わたしは素直に返事をした。


 そりゃ反論はしたかった。


 「伊藤さんに指示されただけだ。」と。


 しかし、そんな伊藤さんが知らん顔してるのに下っぱのわたしが反論出来るはずがない。


 わたしは何も悪くないのに何でこんなに怒られなければならないんだろう―。


 その後も理不尽なことで怒られる事が多かった。


 まぁ主には中村さんかな?


 全然動かないとか暇人とか悪態を吐かれることが多かったかな。


 直接悪口を言われるならばまだましだ。


 わたしに聞こえるようにわざわざ大きな声で高橋さんに、

「注文表を取りに来るしか能がないのね。」

と言ったりする。


 まぁそれを聞いた高橋さんも特にわたしを守るような言葉を発することもないので本当にわたしは能無しだと思われているのだろう。


 エピンに来て2週間ぐらいしか経っていないのだけどそろそろしんどくなってきたなぁ―。


 本当は今すぐにでもこのエピンから離れたい。


 でも、「やりたいこと」をするためには今エピンを離れるわけにはいかなかった。

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