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第41話

 ある日の土曜日。


 この日は伊藤さんとお仕事だったのだけれど、午後からなぜか山本さんも出勤してきた。


 山本さん曰く、「仕事がアホほど溜まってる」ということなのだが、さっきから伊藤さんと話してしかないと思うんだけど―。


 あなたの溜まってた仕事って伊藤さんと話すことなんですか?って言いたいけど言えるわけないよね―。


 わたしは2人の話を聞きながらしっかりと自分の課せられた業務をこなすことにした。


「まさか鈴木さんがエピンを出ていくとは思わなかったわ。ついでに、中村さんも追い出してくれないかな?」

「それは無理ですよ。あの人は魔法使いの間でごみ扱いされてるんですから。ここが最適なごみ処理場なんですよ。」

「それにしても、鈴木さんがここを出ていくと言ってからの中村さんの態度腹立つよね?」

「鈴木さんが出ていった後は中村さんの天下になるでしょうね―。」

「高橋くん、5(ファイブ)にエピンの店長に中村さんのお守りにとたくさん仕事があるけど大丈夫かなぁ?佐藤さんはどう思う?」

「えっ、そ、それは―。」


 いきなり話ふらないでもらえるかな?


 言葉選ぶのに時間がかかるから―。


「そういえば、中村さんがこの前も佐藤さんにめっちゃ頭ごなしに注意してたけど、『あんたもや!』って思ったわ。」

「あー、この間の無理やり連れ戻されたやつですよね―。」


 実は数日前、このようなことがあったのだ。


 ☆


 この日はなぜだからお客様がいっぱい押し寄せていた。


 魔法使いの数が減ったエピンの中は大忙し。


 でも、お客様からするとそんなこと知ったこっちゃないよね―。


 いつも通り、階段をドタバタと降りては販売降りては販売を繰り返していた。


 ある1人のお客様への販売を終えたわたしはお客様を見送っていた。


 そのとき、ふわっと身体が浮いたような感じがした。


 それは気のせいではなく、身体は明らかに宙へと浮いていた。


 そして次の瞬間、身体は言うことを聞かなくなり、壁に何度が打ち付けられながら2階へと 辿り着いた。


「佐藤さん。呑気に1階で休憩してる暇があるならお店のために働かないとダメでしょ?ちゃんとエピンのために貢献しなさいよ?」


 おまえの仕業か高飛車!!!


 わたしは怒りで我を忘れて気がつけばこう言い放っていた。


「すみません。お客様を見送っていただけだったんですけどね。」


 高飛車は何かと言いたそうだったが、わたしは無視して仕事へと戻った。


 高飛車と話せるほど暇じゃないんでね!


 ☆


「中村さんに腹が立つのは分かる。でもね、中村さんはあれでも一応先輩ウィッチだからたとえ腹が立っても表には出してはダメよ?あの後、中村さんの怒りを抑えるのにも苦労したし―。」

「中村さんって伊藤さんにはすごく懐いていますよね?わたしや佐藤さんは完全な下僕扱いなのに対して。」

「同じ懐かれるなら犬がいいわぁ。」


 伊藤さんと山本さんの笑い声が響き渡る。


 この2人も意外に高飛車に対して不満を抱いてるんだなぁ。


「佐藤さんもわたしたちに愚痴吐いてもいいからね?佐藤さんがいろんなことされてるのはちゃんと見てきてるし。」

「結構理不尽なこともありましたよねぇ。」

「あはは―。」


 なんだ、ちゃんとわたしがされてること見てくれてるんじゃん。


 皆、敵だと思ってたからちょっと安心した―。


 ―でも、1つだけ気になることがある。


「―お2人はわたしが何をされていたのか知っていたのですか?」

「うん、知ってた。正直、腹立たしいこともたくさんあった。でも、店長である鈴木さんに『佐藤さんの前では中村さんの悪口は言わないこと。中村さんとの不仲なところは見せないこと。とにかく、佐藤さんに中村さんのことについて深く触れないこと。』って口止めされてたのよね。」

「でも、もう鈴木さんもここを去りますし、もう無視していいってことですよね?」

「もうそれでいいんじゃない?ってことで、佐藤さん。これからは愚痴を受け付けるよ!」


 伊藤さんは親指を立ててにっこりと笑った。


「ありがとうございます―。」


 わたしもにっこりと微笑み返した。


 ☆


 ―あり得ない。


 仕事終わりに箒をとばしながら心の中でひたすら呟いた。


 この1年間、鈴木によってエピンの全員がわたしのことを見て見ぬふりをしていたということが判明した。


 高飛車はわたしをいじめているということを理解しながらも鈴木は高飛車のことを守った。


 ―あり得ない。


 今となっては、他の店にとばされる鈴木をざまぁと思えてしまう。


 わたしを見て見ぬふりした罰だよ。


 これからもエピンの魔法使い全員に不幸なことが起こればいい―。


 自分でも恐ろしいことを考えているのは分かっていた。


 でも、今はこれしか考えられなかった―。

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