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第33話

 ある日の土曜日。


 今日は鈴木さんと2人きりで出勤。


 高飛車はいないし、鈴木さん優しいし、今日は平和に過ごせそうだね!


「おはようございます!」


 エピンに入り、わたしは元気よく挨拶した。


 しかし、誰からの返事もない。


 おかしいなぁ?


 鈴木さん、まだ来てないのかな?


 2階に上がり、保管室を覗き込むと椅子に座って項垂れている鈴木さんがいた。


「鈴木さん?!どうされたんですか?!」

「あぁ佐藤さん?おはよう―。」


 そう言うと、鈴木さんは大きなため息をついた。


「しんどいんですか?」

「ううん、憂うつなだけ。心配ありがとう。」


 鈴木さんはニコッと笑って見せるが、その表情は若干やつれていた。


 本当にどうしたんだろう?


 合コンがうまくいかなかったのかな?


「実はね、今から少しエピンを離れなければいけないの。それがちょっと憂うつでね。」

「今からですか?」


 まだ開店して間もないんだけど―。


 まぁこんだけ憂うつなのだからデートってことはなさそうだな。


 あれっ?


 ってことは今からわたし1人なのかな?


 それはちょっと厳しいぞ―。


 そんなわたしの不安を感じてか、鈴木さんは口を開いてこう言った。


「心配しなくても大丈夫よ。スケットはちゃんと呼んでいるから。」


 鈴木さんはニコッと微笑んだ。


 なんか嫌な予感しかしない―。


「おはようございます~。」


 誰かがエピンに入ってきた。


 その声を聞いて、一気に血の気が退くのがわかった。


「おはようございます。もう鈴木さんったら、いきなり予定が入ったとかやめてよね!さぁこのわたしが来たからもう安心よ!」


 鼓動が激しく鳴り響く―。


 呼吸も小刻みなのが自分でも分かる―。


 読者の皆さんはこのスケットの正体が誰かはもうお分かりだろう―。


「おはようございます、中村さん。本当に助かりました。夕方には戻ってきますので、それまで佐藤さんをよろしくお願いします。」

「任せなさい!」


 鈴木さんは手を振ると足早にエピンを後にした。


 冗談じゃない―。


 今日は鈴木さんと2人きりで平和に過ごせると思って来た。


 なのに、いきなり高飛車と一緒に働けなんてあまりにも酷い話である―。


 何で、どうして鈴木さんはこんな奴を信頼しているのかさっぱり分からない。


「さぁ今日も頑張りましょうね~。」


 高飛車は他の魔法使いの前では絶対に見せないような微笑みをわたしに見せつけてきた。


 さぁ地獄の1日の始まりである―。


 ☆


 と思ったのだが、午前中は意外にお客様が来なかった。


 わたしは相変わらず、高飛車の召使い状態である。


 今日も店内を隅々まで綺麗に掃除するわたし。


 今日も持ち込んだ本を隅々まで読みふける高飛車。


 たぶんだけど、この働かない真の姿はわたしにしか見せていないんだろうな。


 でないと、あそこまで鈴木さんが高飛車を頼る理由にはならない。


 さて、そんなこんなを考えていたらお腹が鳴った。


 時計を見ると、時計は12時をさしていた。


 もうこんな時間かぁ―。


 早く鈴木さん帰ってこないかなぁ―。


「こんにちは!」


 お客様だ。


 もう、お昼の時間を狙って来るのやめてよね―。


 お昼ご飯が遅くなるじゃん―。


「こんにちは。注文表をお預かりしますね!」

「あぁ注文表は持ってないんだ。もしかして、君が佐藤ちゃん?」

「はい、わたしは確かに佐藤ですが―。」


 誰だこいつ?


 なんでわたしの名前を知ってるの?


 しかも、見た目も口調もえらくチャラいなぁ。


 新手のナンパか?


「あら、林さんじゃないの!こんにちは!」

さっきまで本を読みふけっていた高飛車が降りてきた。

「こんにちは。今日は中村さんが出勤でしたか。」

「鈴木さんが帰ってくるまでの間限定だけどね。」


 この2人、すごく仲がいいように見えるけどどんな関係なのだろう?


「佐藤さんは初めてお会いするのかしら?この方は林さん。高橋さんと同じ5(ファイブ)の1人よ。」

「―初めまして!佐藤と申します!」


 わたしは何も言ってないからね?


 チャラいとか新手のナンパとか言ってもないし、思ってもないからね?


 わたしは焦りを隠すために全力で微笑んだ。


 高飛車が現れたとき以上に鼓動が早鐘を打っている。


「高橋から話は聞いてるよ。仕事を効率よくこなすいい子なんだって?」

「それは―。」

「あらやだ林さん。佐藤さんは別にそういう子ではないわよ。業務が忙しいという理由で心臓の管理をすっぽかしたりするもんね~?」

「あはは―。」


 最低だ―。


 完全に林さんのわたしへのイメージは悪いものになっただろう。


 他の人と会話していると思わせてわたしの悪口を言うの本当にやめてほしい―。


「それで、林さんは何しに来られたの?」

「あぁちょっとエピンを覗きに―。」

「2階に上がる?」

「残念。今から5(ファイブ)の集まりなんだなぁ。」

「あら、残念。では、あまり引き留めない方がいいわね。」

「申し訳ない。じゃあね、佐藤ちゃん!」


 林さんは手を振ると、そのままエピンを後にした。


 完全にわたしに興味がなくなったんだろうな―。


「何ボケッと突っ立ってるの?早く掃除しちゃってよね。」

「すみません―。」

「わたしがお昼終わるまでにちゃんと綺麗にしておくのよ?」


 そう言うと、高飛車は見るからにご機嫌な態度で2階に姿を消していった。


 ―先にお昼とられた。


 ☆


 あの後、17時頃にちゃんと鈴木さんは戻ってきた。


 その間、わたしが高飛車とどのように過ごしていたかは読者の皆さんの想像にお任せする。


 ―正直、思い出したくはない。


 鈴木さんは朝と変わりなく暗い表情をしていた。


 高飛車がどんなことがあったの?と興味津々に聞くが鈴木さんは曖昧な返事をするだけで明確には答えようとはしなかった。


 その態度が気に入らなかったのか、高飛車は明らかに不機嫌な態度をとると適当に挨拶だけ済ませて帰ってしまった。


 そりゃ魔法使いだって言いたくないことの1つや2つあるよね。


 高飛車ってこういうところの空気が読めないんだよなぁ―。


 その後も閉店まで鈴木さんとの会話はなく、この日は終了した。


 鈴木さんと別れて携帯を見ると、メールが2件。


 そういえば、今日は加藤様たちのライブの座席発表だっけな?


 ほら、前に12月にライブがあるって言ったじゃん?


 わたしはドキドキする気持ちを抑えてメールを開いた。


 結果は―。


「えっ―。」


 座席を確認した表情が自分でもひきつったのがわかった。


 座席は2日とも後ろから数えた方が早い席。


 ―なんで?


 ―わたし、ずっと高飛車のいじめに耐え続けて頑張ってきたんだよ?


 ちょっとショック―。


 でも、チケットが当たることはめったにないから当たったことを喜ばないとダメなんだろうね。


 わたしは大きくため息をついて家路へ急ぐのであった。

はい、ということでライブの席はとても残念な席でした。

まぁすごく楽しかったですけどね(笑)

ライブって言うぐらいなので推しのためにブンブンとサイリウムを振り回して、声が枯れるまでコーレスしました。

ただ、そんだけです(笑)

なので、佐藤の休日ライブバージョンはカットします。

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