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第31話

 季節は11月。


 外の空気はだいぶ冷えてきて肌寒くなってきた。


 箒を飛ばしている間に風が吹けば震え上がるほどに寒くなる。


 そして、わたし的には今日から地獄の生活が始まる。


 そう―。


 今日から高飛車と開店から閉店まで働かなければならない。


 結局、わたしは高飛車にいじめられるのを我慢してまでやりたいこと優先させることにしたのだ。


「おはようございます!今日から改めてよろしくお願いします!」


 朝から耳障りな声が響き渡る。


 この声を聞くだけですごくうつな気分になる。


「佐藤さんもこんな初心者のわたしをよろしくね!」

「よろしくお願いします。」


 この会話も周りには普通の会話だと思われてるんだろうな―。


 真の意味は「朝から晩までおまえをこき使いたい放題」というのに―。


 いや、そんなことを考えるのはよろしくないな―。


 高飛車にいじめられても、たとえ誰も助けてくれなくてもやりたいことを優先するためにエピンに残ると決めたのは佐藤、あなたなんだぞ?


 余計なことを考えないためにも働くんだ!


 そう自分に言い聞かせて、わたしはせっせと仕事にとりかかるのだった。


 なぜか、11月に入ってお客様の数が一気に増えた気がする―。


 たぶんだけど、気温の急な変化とかがあったからかなぁ?


 とにかく、絶え間なく階段を上り下りする。


 ほんと、何でこんな店の作りをしたんだろう―。


 結局、この日は1日中階段を上り下りしていた。


 夕方になると、お客様の波も引きやっと自分の時間を持てるようになった。


 グッと背伸びをしていたとき。


「佐藤さん。心臓の温度チェックした?」

「あっ!!!」


 やばっ!


 朝から大忙しで忘れてた!


「心臓は傷みやすいって言ったやろ?1回温度チェック忘れるだけでも命取りなんやで?」

「はい、すみません―。」

「もうわたしもおらんくなるからちゃんとするんやで?」

「はい―。」


 久しぶりに田中さんから叱られたな―。


 他にも仕事が溜まってるからやっとかないと怒られるな。


 わたしは心臓の温度チェックをした後、爬虫類の棚の片付けをした。


 これを明日以降に回したら大変なことになる―。


「佐藤さん。ちょっといいかしら?」


 鈴木さんに呼び止められ、わたしは作業の手を止めた。


「どうしましたか?」

「田中さんの担当してた範囲をわたしが受け持って、わたしの範囲を中村さんに受け持ってもらおうと思ってるの。それで、中村さんの範囲を佐藤さんにお願いしたいなと思って!」

「いやぁわたしには荷が重すぎるかと―。」


 今さっき心臓の温度チェック忘れて怒られたところだからね?


 これに新たな仕事が増えたら本当にすっぽかすわ!


「じゃあ、詳しくは中村さんから教えてもらってね!中村さん、お願いします。」

「任せてください!佐藤さん、こっち来て!」

「えっ、ちょっと―。」


 わたしがやりますとも言っていないのに強引に説明を始めようとする高飛車。


 こうなればもう逃げ出すことは出来ない―。


「わたしが担当していたのは資源よ。例えば、ダルクアクアやダルクマグマを管理するの。これらは一気に出ることが多いからきっちり数は見ておくこと。最低でも壺5つは必要かしら?その他にもシェイネの土やペトロニーラの石―。」


 中村さんは絶え間なく、資源についての説明をしてくれた。


 もうそれはそれは楽しそうに―。


 ―で、やっと説明が終わった。


「分かったかしら?」

「はい!」


 そんな怒濤の説明で分かるはずないだろ!


 あーもう当たって砕けろだな、これは。


 説明を終えた高飛車は「お疲れ様です!」と機嫌よく帰っていった。


 時計を見ると閉店時間を過ぎている。


 マジで早く仕事終わらせないと帰れない―。


 内心焦っているというのに、今度は伊藤さんと山本さんに声をかけられる。


「佐藤さん。人からものを教えられるときはちゃんとメモとらないとダメよ?」

「そうそう。あんな怒濤の説明で無理かもしれんけど―。」


 実際、わたしはメモをとらずに高飛車の説明をふむふむと聞いているだけだった。


 それに異論はない。


 だけど、怒濤の説明で無理かもと分かっているならあえてつっこまないでほしかったなぁ。


 それに、何でこの2人は半笑なの?


 とにかく、わたしは早く仕事を終わらせたいんだって!


「佐藤さん。もう閉店時間過ぎてるで?」

「はい、知っています。ですが、業務を明日に残すのはしんどいので今日中にやっちゃいます。」

「業務に励むのはいいけど店が開いてる時間内に終わらせる努力はしないとダメやで?」


 いろんな人に話しかけられなければ時間内に業務なんて終わってたけどね!


 そんなつっこみは心の奥底に押し込めて、わたしは業務に集中するのであった。


 結局、この日帰ったのは閉店から1時間ぐらい経ってからなのであった。

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