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第28話

 小林様と加藤様のトークショー兼握手会から2日が経った月曜日。


 お2人の柔らかな声の記憶がある人の声で掻き消される。


「佐藤さん。疑似魔力の生成依頼が来たわよ~。」


 小林様と加藤様の柔らかな声がこいつの声で上書き保存されるのが非常に腹立たしい―。


 が、そのような感情を表情に出さずにわたしは注文表を高飛車から受け取る。


「じゃあ、わたしはあがらせてもらいます~。お疲れ様です~。」

「お疲れ様です。」


 挨拶をするとさっさと保管室から姿を消した。


 この人は帰るときとわたしに仕事を任せるときだけは行動が早いんだよね。


 販売とかもそのぐらい素早く動いてくれないかね?


 まぁそれはおいといて、わりと当初から思っていたんだけど何で高飛車だけこんな早々と帰るんだろう?


 鈴木さんたちも含め、エピンの魔法使いは開店から閉店まで働く。


 それが普通だとは思っていたんだけど、高飛車だけはどんだけ仕事が残っていたとしても仕事をほったらかして夕方には帰る。


 ちなみに、残っている仕事はすべてわたしに押し付けられます。


 子育てに忙しいのかな?


 でもあいつ、前に家事は一切しないと言ってなかったっけ?


 それに、もし子育てのために早く帰るならばなぜ3児の母である伊藤さんは夕方で帰らないんだろう?


 うーん、分からないなぁ―。


「佐藤さん、どうしたの?何か悩み事かしら?」

「あっいえ、何でもないです!」

「そう?じゃあ、はいこれ。来月のシフト表が完成したからまた確認しといてね。」

「ありがとうございます!」


 まぁ早く帰ってくれるとわたしも呼吸が楽になって嬉しいんだけどね。


 高飛車がいるといつも息がつまるんだよね―。


 わたしは鈴木さんから受け取ったシフト表に目を通す。


 そして、とある箇所に目を疑った。


 それは、来月の半ばに高飛車が1週間のお休みをとっていることに対してだ。


 エピンでは年に1回だけ1週間の連続のお休みをとることが出来る。


 2年目以降の魔法使いが対象だからわたしは対象外なんだけどね。


 ほら、夏に田中さんが南の島にバカンスに行ってたでしょ?


 あれもこのお休みを利用してたんだよ。


 高飛車はどこに行くんだろう?


 いや、ぶっちゃけそんなことはどうでもいい―。


 今は高飛車が1週間でも姿を消すことを喜ぼうではないか!


 その1週間は非常に伸び伸びと過ごせそうだ。


 しかし、この喜びは一瞬にして絶望に変わるのである―。


 そんなことは知るはずもないわたしであった。

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