第27話
「おはようございます。」
3連休が終わって火曜日。
わたしはいつも通り出勤した。
もちろん、魔力は全然戻っていない。
「おはようさん。声出るようになったんやな?よかったよかった。」
最初に話しかけてくれたのは高橋さんだった。
そう言えば、あのとき高橋さんが帰れと言ってくれなければわたしは死んでたんだっけ?
薄々、わたしの異常に気づいていたのかな?
一瞬でも高橋さんのことを悪く思ってしまったことを今は後悔している。
「はい。ご迷惑をおかけしました。」
「佐藤さん、おはよう。元気になったんだね?今日も無理せず頑張ってね!」
鈴木さんも声をかけてくれる。
他の魔法使いからも大丈夫かと声をかけられた。
もちろんこの人も―。
「佐藤さん、ちょっといいかしら?」
「はい、何ですか?」
「あっ、まずはおはようございます。それでね、素材を片付けてくれるのは嬉しいんだけど取り出しやすいように閉まってくれなきゃ困るわ。ちゃんと皆のことも考えて直してね?」
「―はい。」
心配してくれたのかなと思ったでしょ?
わたしもまさか病み上がりにいちゃもんつけられるとは思わなかった。
ってか最近、素材を直してるのは高飛車自身ではなかったっけ?
あーもう考えるのやめよう。
ついこの間まで魔力回路の異常という重症だったというのが嘘みたいに普通の生活がいきなり始まったなぁ―。
今週土曜日はどうしてもはずせない予定があるから鈴木さんの言う通り無理しない程度に頑張らせてもらおう。
―と、思ったのだが予想異常に忙しく結構働くはめになってしまった。
体力がさほど戻ってはいないが階段の昇り降りもたくさんした。
魔力をあまり使ってはいけない状況でもあったが、普通に疑似魔力も作った。
その際、チラッと隣を見てみた。
そこには呑気に棚の整理をする高飛車がいた。
―今回の魔力回路の異常を引き起こした原因は絶対にこいつだな。
結局、この日は高飛車の代わりに働いたといっても過言ではないぐらいに働いた。
おかげで軽く魔力切れを起こしてしまっているようだ。
魔力を補うために体力もかなり消耗している。
「佐藤さん、お疲れ様。疲れてない?」
「お疲れ様です。大丈夫ですよ!めっちゃピンピンしてます!」
こんな調子で今週土曜日までもつかな?
でも、体力を消耗していても、倒れる前みたいに足を掴まれるという感覚はないかな?
あれは本当に魔力回路の異常によるものだったのかな?
もしかして、加藤様が行くなと必死で止めていたとか?!
四肢を拘束していたのも加藤様だったりして?!
―やめよう。
非常に虚しくなる―。
まぁまた倒れてもいいや。
だから、どうか土曜日まではわたしの身体よ、耐えてほしい―。
わたしは切実に願うのであった。




