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第24話

 朝からなんとなく違和感はあった。


 箒で飛ぶときにまた顔面墜落したり、箒で飛んでいる間にいきなり魔力切れを起こしたかのように急降下したり―。


 最近、特に生物は食べていないので魔吸虫の仕業ではないはず。


 いや、魔吸虫の場合は一気に魔力を抜き取られる。


 こんな不安定な感じではなかった。


 寝不足かな?


 まぁ最近忙しかったからなぁ―。


 明日頑張ったら3連休だし、後2日頑張ろう!


「ねぇねぇ、伊藤さん。最近子育てはどう?」


 この耳障りな声さえなければもっと頑張れる。


「子供3人はしんどいですね。一番下はまだまだ目を離せませんしね。」

「うちの子も落ち着きがないのよね~。でも、そこがかわいいのよね!」


 口動かす暇があるなら手を動かせよ。


 高飛車の代わりにわたしが倍働かないといけないって言うのが本当にアホらしい。


 あいつの言葉はシャットアウトして仕事に―。


 ん?今何て言った?!


「仕事から帰る度にママ遊んでって。もうかわいくてかわいくて―。」


 コトン―。


 何かが落ちる音がして、2人は同時に音の方へ向く。


 音の方へ向けられた視線だが、なぜかわたしの方へ視線が向けられている。


 足元に目をやるとサメモドキの犬歯が転がっていた。


 これ、わたしがさっき手に持ってた素材じゃん―。


「大切な素材なんだから大切に扱ってよね~?」

「すみません―。」


 たぶん、無意識のうちに動揺して落としたんだ。


『あんだけ高飛車なら独身だろうね。』

『あいつを嫁にもらった旦那さんがかわいそうすぎる。』


 吉田さん、山田さん、佐々木くん、事件です―。


 高飛車は既婚者でかつ子持ちでした―。


「でも、伊藤さんって本当に尊敬するわ!家事も料理もしながら仕事でしょ?わたしは家事も料理も出来ないからもう羨ましくて―。」


 家事も料理も出来ない嫁って、それどうなん?


 あーもう、高飛車の言葉にいちいちつっこんでたら仕事に集中出来ないや。


 わたしは右手にサメモドキの犬歯、左手に吸血コウモリの血を持った。


 持ったつもりだった―。


 しかし、手に持っていたのは透き通った赤色をした疑似魔力。


 周りを見るがサメモドキの犬歯も吸血コウモリの血も見当たらない。


 えっ、もしかしてこれはわたしが何の呪文もかけずに生成した疑似魔力だろうか?


 もしかして、わたしは何も唱えずに疑似魔力を作れるほどに成長したのだろうか?


 本当はこの2つに丸呑みイグアナの心臓を入れなければならなかったのだけれど、それは後で作ればいいや。


 まずはこの素晴らしき成長を誰かに伝えたい。


「田中さん!聞いてください!この疑似魔力なんですけど―。」


 と、足を踏み出した瞬間、つまずいて床に顔面殴打した。


 パリンという音と共に床に赤い液体が広がる。


「きゃぁぁぁ!佐藤さんのお顔から血が―。」

「あっ大丈夫です。わたしの顔は平気でこの赤いのは疑似魔力です。」


 なんかベトベトすると思ったけどやっぱりこれ頭から被ったか―。


 痛くもないし、たぶんさっき作った疑似魔力、だと、思う―。


「あーあ。せっかくの疑似魔力が台無しじゃない。早く廃棄書きなさい。」

「最近の佐藤さん、こけてばっかじゃない?本当に大丈夫?」


 一部を除いて皆が心配してくれるのが少し嬉しい。


 でも、気のせいだろうか。


 さっき、足を踏み出した瞬間に誰かに足を捕まれた気がする―。


「最近、寝不足で。すみません。すぐに作り直します。」

「大丈夫?今日は早退する?」

「大丈夫です!しっかり働きますよ!」


 まさか、そこまでしてわたしを恥さらしにする理由はないよね。


 今も普通に歩いたけど、特に捕まれる感覚はない。


 気のせいだということにしとこう。


 しかし、この時から危険は完全にわたしの身体を蝕んでいるのだった。

ちなみに、高飛車は家事のすべてを自分の母親に任せているみたいです。

子供としてそんなお母さんってどうなんですかね?

わたしはちゃんと家事もこなせるお母さんになりたいですね。

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