第22話
季節は9月に入った。
照りつける陽射しは少しはましになり、ほのかに身体を温めてくれるぐらいに降り注いでいた。
心地よく風も吹いており、非常に過ごしやすい気候だ。
さて、あの日以来、わたしは高飛車のことをよく観察するようにした。
「鈴木さん。店長業務は大丈夫ですか?よければまた業務に集中しますか?」
「お気遣いありがとうございます。でも、大丈夫ですよ。」
数日間、高飛車を観察し続けて分かった事がひとつある。
「高橋さん。今日は5(ファイブ)の集まりの日ですよね?早く用意しないと遅れますよ。」
「あぁ忘れてましたね。また声かけてください。」
それは日常的な会話に耳を傾けて分かったことである。
「山本さん。これの使い方が分からないのですけど―。」
「これはですね―。」
周りとの丁寧なコミュニケーションを忘れない高飛車。
「田中さん。それはわたしがやっておきますから、出来るだけ佐藤さんに付き合ってあげてください。」
「ありがとうございます。」
周りに気を遣える高飛車。
「伊藤さん。その疑似魔力はわたしが作ります。」
「本当ですか?助かります。」
高飛車は伊藤さんから注文表を受け取り、
「はい、早く作って。他の人たちはあなたみたいに暇じゃないんだからあなたが率先して動かないとダメでしょ?」
注文表を荒々しく手渡してきた。
今日分かったことは、高飛車はわたしに対してだけため口で他の魔法使いにはしっかりと敬語を使うということ。
しかも、態度も明らかにわたしに対してだけ上から目線。
しかし、なぜ高飛車がわたし以外の魔法使いには敬語でかつ下手に出るのかが分からない。
ウィッチ歴として長い高飛車に対して皆が敬語を使うのは分かる。
高飛車が5(ファイブ)である高橋さん、店長である鈴木さんと自分より立場が上である存在に敬語を使う意味も分かる。
しかし、なぜ高飛車は自分よりウィッチ歴が短いであろう田中さんや山本さんにも敬語を使うのだろう?
田中さんは4年目のウィッチだと鈴木さんが言っていた。
高飛車はとてもではないが4年目以下のウィッチだとは思えない。
魔力的にね?
見た目的にとか思ってても口に出して言ってないはからね?
では、わたしと田中さんと山本さんとで何が違う?
自分より仕事が出来ない魔法使いはすべて下に見ているのだろうか?
現段階ではまだまだ分からない。
もう少し、高飛車を観察する必要がありそうだ。
☆
その日の終わり―。
なぜ高飛車はわたしに対してだけ上から目線?
未だにその事を考えていた。
そんな事を考えていたからバチが当たったのだろう。
箒で飛んだ途端に顔面から地面に墜落してしまう。
「大丈夫、佐藤さん?!」
泥だらけになった顔を優しく拭ってくれながら心配してくれる鈴木さん。
「えぇなんとか―。」
高飛車の呪いかな?
考えていることがバレた?
「もう気を付けなよ?こんなことで怪我して仕事休むなんて許さないんだから。」
「あはは―。」
それは高飛車から嫌みを言われる原因となるのでわたしも避けたいです。
改めて鈴木さんとお別れをして、わたしは箒を飛ばした。
今度は墜落することもなく、普通に家路に着いたのだった。




