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第17話

 今日も相変わらず暑い―。


 しかし、家でゴロゴロするわけにもいかなかった。


 なぜなら、今日は年に一度の総会があるからだ。


 総会というのは魔界すべての魔法使いが集まってドンチャン騒ぎする集まりのこと。


 この前は1年目の魔法使いの集まり。


 だから、内容も規模も違うんだけど面倒くさいことにはかわりない。


 でも、この前知り合った吉田さん、山田さん、佐々木くんに会えるのは楽しみかな?


 それでも行きたくない理由が2つある―。


 1つ目は総会でまさかの受付嬢を任されたこと。


 なぜかは分からないがわたしの元へ依頼が来た。


 5(ファイブ)がいる店の1年目ウィッチだからかな?


 受付嬢の何が面倒くさいってかなりの人数の魔法使いの出席とらないといけないんだよね―。


 ってか、総会ごときに出欠とる必要あるかな?


 ちょっとだけ救いなのが、一緒に受付してる人が5年目のベテランウィッチで優しく手順とかを教えてくれること。


 たまに話しかけてくれて少しリラックス出来たかも?


 もう1つ、わたしが総会に行きたくない理由。


 実は昨日、中村さんからこんなメールが届いたんだよね―。


『お店にネックレス忘れてなかった?もしあったら、それわたしの物だから明日の総会で持ってきてくれる?』


 わたしはあなたのパシりではないぞ?


 でも、わたしは優しいので、


『分かりました。しかし、総会開始前は受付を任されていますので、総会中にお渡ししますね。』


 これで絶対に中村さんに会わなくてはならなくなった。


 まぁ皆と一緒にいるときに来るだろうし、ちょうど中村さんについて紹介出来るかな?


 中村さんのことは一旦おいといて、わたしは受付に集中した。


 何人か受付をした後、ふと見慣れた顔が現れた。


 中村さんだった―。


 そうだ、当たり前だけど中村さんも出欠確認するのか。


 ここで顔を合わせなくてはならないのを忘れていた―。


「あら、お疲れ様。」

「お疲れ様です。出席確認しましたので中へどうぞ―。」

「それよりさ、ネックレスは?」

「ちゃんと持ってきましたよ。鞄の中に入っているので後で渡しますね―。」

「今ちょうだい。」

「受付中はここを離れることが出来ないのでできれば総会中にお願いしたいのですが―。」

「あんたの行動なんて知ったこっちゃないんだから今すぐちょうだい。」


 これに続く言葉が思い付かなかった―。


 これ以上の話し合いは無意味と悟ったわたしはもう1人の受付の先輩に一言謝り、中村さんとその場を離れる。


 鞄は仲間が見てくれていたので、突然のわたしの登場に少し驚いたようだった。


「あれっ?受付もう終わり?」

「いや、まだだよ。」


 鞄の中をがさごそとあさり、とある箱を取り出す。


 中村さんはひったくるようにそれを受け取るとまじまじと中身を確認した。


 中に入っていたのはダイヤモンドがついたネックレス。


 何カラットのダイヤモンドなんだろう?


 ってか、普通そんな大事な物をお店に持ってくる?


 そして、それを忘れるか?


「これこれ!ありがとう~」


 特に心のこもっていないお礼を言って中村さんは去っていった。


 何が起こったのか知りたげな仲間のもとを一旦去り、わたしは受付に戻った。


 もう1人のウィッチさん、怒ってないかなぁ―。


 わたしは恐る恐る声をかけた。


「あの、先程はすみませんでした―。」

「気にしないで。ああいう人だということは知っているから。」


 わたしたちは気を取り直し、受付を再開した。


 ☆


 全員の出席を確認し、無事に総会が開始された。


 ベテランの魔法使いたちが多いので大声で笑いあったり、お酒を頼む声が聞こえたりと1年目の魔法使いの集まりに比べたら結構騒々しい。


 受付を無事に終わらせたわたしも仲間の吉田さん、山田さん、佐々木くんのもとへ戻り、皆に聞こえるように少し大きめの声でさっそく中村さんについて語った。


 もちろん、周りに中村さんがいないことを確認して―。


「へぇ?それでついでにパシりも担ってるわけ?」

「好きでやってるわけではないけどね。一応、ちゃんと受付中に来ないでと頼んだんだよ?」


 わたしは証拠メールを仲間に見せる。


 わたしの文章の後にはしっかりと『分かりました。』の文字が刻まれていた。


「うわぁこれを言っときながら受付中に取りに来るのはひどい。」

「受付を離れた佐藤さんがサボったと思われないか心配だね。」


 あれっ、仲間の言葉が心に染みて涙が出てきそう。


 お店ではこんな心配1つもしてくれないもんなぁ―。


「でも、見た目は普通のウィッチよね?」


 そう―。


 仲間の言う通り、口さえ開かなければ見た目は普通のウィッチ。


 ウィッチ歴も長いだろうし、魔力は高橋さんといい勝負するのではないだろうか?


「見た目はね。ただ、態度と口は問題あり。」


 わたしはこの前の女狐と中村さんの口論を話した。


「それで、最後には『あんたは高飛車だわ!』って怒鳴って帰ったらしい。」

「うわぁ―。それってお店の信用問題にもなるんじゃないの?」

「まぁ高橋さんは問題視はしてたかな?」


 わたしは周りを見渡して高橋さんもいないことも確認する。


「見た目は普通のウィッチ、でも態度は絵に描いたようなクズ―。」

「何それ、めっちゃ面白いんだけど。」


 お酒のせいもあり、中村さんの話が弾む。


 周りに中村さんのお友達とかいないよね?


 これ聞かれて、告げ口されたりしないよね?


 どちらにせよ、名前を出すのは危険かな―。


「ねぇ、あいつの悪口言ってるとバレるのも困るし、今日からあいつのあだ名は高飛車でいいかな?」

「「「めっちゃいいあだ名!」」」


 わたしたちはグラスで乾杯をした。


「あんだけ高飛車なら独身だろうね。」

「あいつを嫁にもらった旦那さんがかわいそうすぎる。」

「佐々木くん、もらってあげたら?」

「いえ、結構です―。」


 久しぶりに高飛車のことについて不満を爆発させることが出来た。


 仲間ってやっぱりいいなぁ―。


 わたしはグラスを口に運ぶが、どうやらグラスは空になっていたらしい。


 そりゃこんだけ喋れば喉が乾いて自然に潤いを求めるよね。


 わたしはウェイトレスにお酒のおかわりを求めるのだった。

悪口ととれるような描写が多いのは許してください。

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