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第15話

 今日も雨はしとしとと降っている。


 そのせいで湿気も激しく霧が目立つ。


 エピンでも湿気は激しく、また室内なので蒸し暑い。


 少し動くだけでもだるい。


 魔法使い全員がだらけきっているところに、ある叫び声が響いた。


「何よ、あの客!女狐のくせに失礼にもほどがあるわ!」


中村さんだった。


 こんな蒸し暑いのによく元気ですね。


 中村さんは涙をボロボロと流し、必死に訴えを続けた。


「あの客ったら、わたしのことを高飛車呼ばわりしたのよ!あまりにもひどいわ!」


 1階の待合室にまで聞こえるのではないかというぐらい大きな声で訴える中村さん。


 もしも、その女狐のお客様がまだ待合室にいたらどうなるんだろう―。


 我を失った中村さんにそっと高橋さんがハンカチを差し出す。


「とにかく、落ち着きましょう。何があったんですか?」

「実はね―。」


 中村さん曰く、女狐のお客様にお釣りの渡し間違いをしてしまったらしい。


 本来のお釣りより少なめに渡していたらしいので、それに気付いたお客様が激怒。


『あんたの態度は高飛車だわ!』


 そう吐き捨てて出ていったらしい。


 まぁよくあるクレームではあるかな?


 しかし、そのお客様も少し言い過ぎではないかな?


「それは大変でしたね。今日はもう疲れたでしょう?家に帰って心身共に休んでください。そんなぐちゃぐちゃな顔では接客はさせられませんよ?」

「ありがとうございます―。」


 どうやら中村さんの怒りは収まったらしく、おとなしく店を後にしたのだった。


 ☆


 中村さんが帰ったのを確認してから数分後。


 伊藤さんがふと重い口を開いた。


「高橋くん。さっきの中村さんと女狐のお客様とのやり取りを見ていたんだけどさ―。」


 伊藤さん曰く、女狐さんは見た目は気が強そうに思えるが会話を聞いてみるとみるとすごくおっとりした優しい性格の女狐さんだったようだ。


 そんな女狐さんが激怒したのはお釣りの返し間違いではなく、中村さんの態度そのものだったようだ。


 お釣りが少ないことに気が付いた女狐さんは中村さんに間違ってはいないかと声をかけたらしい。


 しかし、中村さんはわたしが間違えるはずがないと相手にしなかったと。


 それでもお釣りが足りないと言い張る女狐さんに中村さんが痺れを切らせて、


「では、レジの中のお金を調べましょうか?そうすれば、あなたの気も済むでしょう?」


 結果、中村さんのお釣りの返し間違いが発覚。


 中村さんは何度も謝罪をしたが女狐さんの怒りは収まらなかった。


 そして、最終的に、


『あんたの態度は高飛車だわ!』


 こう吐き捨てて店を出ていったらしい。


 ―これはお客様としては激怒する内容だわ。


 ってか、あたかも自分は被害者であるかのようにするために話端折りすぎでしょ?


「これは大問題ですね―。」


 雨は今もまだ降り続いている。


 その重たい雰囲気が高橋さんの心までもを重くしていたのだろう。


 今までに聞いたこともない大きくて深いため息をついていた。


 ☆


 翌日、中村さんは何事もなかったかのように普通にエピンにやって来て普通に接客をしていた。


 まだ、わたしは接客を任されていないから中村さんがどんな接客をしているのか分からない。


 でも、下手な態度をとるとお客様から激怒されるということは今回のことでよく分かったぞ。


 以後、参考にさせていただこう。

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