第13話
中村さんと仲良くなろう作戦1日目。
保管室内でのこと。
なにやら鈴木さんと伊藤さんがこそこそと話をしている。
「渡辺さんへのプレゼントって何にする?」
「無難にお箸とかじゃない?」
何の話をしているのかすこぶる気になるけど、わたしは黙々と疑似魔力を作っていた。
普通に輪に入って会話すればいいじゃないか、と?
それがね、もう無理なのだよ―。
4年目以上の魔法使いたちの結束された輪の中に1年目の魔法使いがいけしゃあしゃあと入る隙など無いのだよ―。
それに、こうして疑似魔力作ってる方が会話をするよりも楽しい。
「お疲れさん。きりのいいところでお昼入りや。」
田中さんに声をかけられて時計を見ると、もうお昼の時間を過ぎていた。
わたしは作った疑似魔力を田中さんに預け、休憩室に入った。
扉を開けると、ふわっとリンゴの香りがわたしの鼻をくすぐった。
中村さんが紅茶を飲んでいた。
―一瞬、扉を閉めそうになった。
いやマジで。
中村さんと休憩が被ったかぁ。
めっちゃ気まずい―。
いや待てよ?
これは中村さんと仲良くなろう作戦の絶好のチャンスでは?!
そう思ったわたしはくつろいでいる中村さんに近づいていき、
「あの、渡辺さんに何かあったんですか?」
中村さんはティーカップをそっと置いた。
「渡辺さんは結婚するのよ。それに伴いこのエピンから離れるだけよ。」
「へぇそうなんですね―。」
「・・・。」
「・・・。」
何この沈黙!
次に繋げなければならないのだけれど何を話せばいいんだろう?
あぁこの日のために渡辺さんについてもう少し理解しとくべきだった!
あーだこーだ考えているうちに中村さんの休憩が終わってしまったらしい。
中村さんは何も言わずに休憩室を後にした。
中村さんと仲良くなろう作戦1日目、これにて終了である。
☆
中村さんと仲良くなろう作戦2日目。
休憩室でわたしは親の誕生日プレゼントを何にすべきかすこぶる悩んでいた。
うーんと頭を悩ませているところに中村さんが入ってきた。
やばっ、今変な顔してなかったよね?
特に何のツッコミをすることもなく中村さんは食事を始める。
あっそうだ!
「中村さん、1つ相談よろしいですか?」
「何かしら?」
「もうすぐ親の誕生日なんですけど何を送ろうかなと悩んでいて―。中村さんなら何が欲しいですか?」
「わたしが欲しいものをあなたの親が欲しがるとは限らないわよ。あなたの親は何が好きなの?」
「―アニメ関係ですかね?」
「・・・。」
「・・・。」
昨日よりは会話続いたけど何でまた沈黙?!
えっ?
何か気にさわることでも言ったかな?
アニメはあまりお好きではないのかな?
もしそうだとしたら、これ以上話を広げることは厳しいかな―。
結局、あの後、何も話すことなくわたしの休憩は終わった。
中村さんと仲良くなろう作戦2日目、これにて終了である。
☆
一応、中村さんと仲良くなろう作戦は3日目、4日目と続くのだけれど結果は読者の皆さんのご想像にお任せします!




