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第10話

 時は5月。


 桜の花が散って、青々とした葉が繁ってきた頃だった。


「素材の場所はしっかりとインプットされた?」

「はい。当初よりはだいぶ。」

「じゃあ、新しい事に挑戦してみようか?」


 田中さんはそういうと、いくつかの素材をわたしの前に置いた。


「疑似魔力作ってみようか?」

「えっもう作ってもいいんですか?!」


 疑似魔力―。


 この前、わたしが使ったから読者の皆さんも聞き覚えはあるよね。


 実はわたしたちの魔法使いの仕事は素材を売ることだけではない。


 疑似魔力を提供することも仕事の1つである。


 なぜ疑似魔力が必要かと?


 この前のわたしみたいに魔吸虫によって魔力を吸い尽くされることもあるし、吸血コウモリによって魔力を失うこともある。


 それ以外にも生まれつき魔力が少ない者、不慮の事故で魔力を失う者、後あまり言いたくはないけどヴァンパイアによって魔力を奪われる者―。


 とにかく、その他もろもろ含め毎年たくさんの尊い命が奪われている。


 魔力はわたしたち妖怪の生きる源ともなっている。


「じゃあ、まずは吸血コウモリとマンドラゴラの舌で疑似魔力作ってみるから見てて。」


 田中さんはそういうと指をパチンと鳴らした。


 すると、透き通った液体、疑似魔力が産み出された。


 すげぇ―。


 ちなみに、吸血コウモリは妖怪たちの血液を吸うから意外に魔力たっぷりで基本的に疑似魔力生成に使われる。


 まぁ奪い取られた魔力を奪い返すって感じだね。


「じゃあ、次は佐藤さんがやってみて。」

「はい!」


 同じように吸血コウモリの血液とマンドラゴラの舌を用意してもらい、わたしもパチンと指を鳴らす。


 しかし、何も起こらない。


「新人ウィッチでは魔力が足りないから指鳴らしだけでは無理だよ。ちゃんと呪文唱えて。」


 それを早く言ってほしかったな―。


「アン プリュス アン エガール ドゥー。」


 呪文を唱えて魔法をかけると透き通った疑似魔力、ではなくドス紫のまるで毒みたいな液体が出来上がった。


 しかも、なんか表情みたいなのが見えるんだけど?


 何これ?


 マンドラゴラがバカにする時の表情?


 わたしは恐る恐る田中さんの表情を伺った。


 田中さんは完全にドン引きした表情をしていた。


「まぁ、練習あるのみやね―。後は気持ちかな?」

「やる気ってことですか?」

「違う。尊い命を救いたいという気持ち―。」


 あっそう言われたらそうだよね。


 さっきのわたしは疑似魔力を作る事に集中していた。


 そりゃマンドラゴラにもバカにされるわな―。


 田中さんが助言してくれなかったらこの事にも気づけなかった。


 田中さんはめっちゃ厳しくてすごく怖いけど、実は優しいのかな?


「疑似魔力生成の依頼もほぼ毎日来るから、簡単なものは積極的に作ってみて。ほら、今も届いた。」


 尊い命を救いたいという気持ち―。


 わたしはその気持ちを忘れないように疑似魔力を作る練習を続けた。


 その姿を遠くから睨み付けるように観察する1人のウィッチの存在も知らずに―。

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