第9話
火曜日。
無事に魔力は回復したのでエピンに向かった。
しかし、まだまだ胃に痛みは残る。
そりゃそうだ。
魔吸虫はわたしの胃から魔力をしこたま吸っていった。
たぶん、少しだけ胃が傷ついているのだろう。
エピンに着いたわたしは衝撃的な光景を目にする。
「おはよう佐藤さん。体調大丈夫?」
「おはようさん。災難やったなぁ。」
えっ何で―?
「魔力は戻ったかもしれないけど無理はしないようにね。」
「しんどかったら座ってもいいからね。」
皆(中村さん以外)、すごく優しい言葉をかけてくれるのはありがたいのだけど、何で皆そんなにバリバリ働けるほど元気なの?
「ご心配ありがとうございます。しかし、皆様は体調に変化はなかったのですか?」
皆は顔を見合せ、
「いや、特には―。」
“なんか、本当に楽しかったな―。”
ごめん、前言撤回。
絶対にはめられたわ、これ―。
とにかく、余談はここまで。
一応、昨日休んだわけだし挽回しないと!
わたしは積極的に注文表を取りに行き、素材を集める。
たまに胃に激痛が襲うが、表に出さないように我慢した。
そして、お客様の波が退いたので一旦ひと休み―。
「佐藤さん、手が空いたならお片付け。」
中村さんだ―。
もう、病み上がりなんだから今日ぐらい優しくしてよ!
わたしは仕方なく素材を片付ける。
ふと、読者の皆さんは疑問に思ったのではないか?
こういう時こそ魔法を使えよ、と。
いや、本当は使いたいんだけど魔力も無限に存在するわけではないから無駄遣いはしたくないの。
現にわたしは魔力は回復してるけど、これは疑似魔力のおかげだしね。
わたし自身の魔力が回復するのは1週間後ぐらいかな?
それに、魔法で素材を片付けてるところを中村さんに見られたら何て言われるか―。
ぶっちゃけそれが怖い。
中村さんがもともと机の上に散らかしてた素材は無視して全部片付け終わった。
よし、今度こそ一旦ひと休み―。
「机の上に置いてる素材も片付けていいのよ~?」
いや、自分でやれよ!
これは明らかあんたが散らかした跡だろ!
心の中でぶちギレると同時にひどく胃が痛む。
いたた―。
ダメだ、いちいち中村さんに腹を立てると傷口を開くだけだわ。
今日に限ってはおとなしく中村さんの言うことを聞くわたしであった。




