2話
「俺様の名前は騒速 龍魔(ソハヤ リョウマ)見ての通り天才科学者だ。本当は電脳世界の研究に加わるはずだったんだが、コロニーとかいう連中が俺の参加を認めなかったらしい。俺がいればこの世界はもっと早くに完成したはずなんだけどな。てか、お前らなんで俺が天才って呼ばれてるか知ってる?それはな、俺は元々(以下略)」
「「なげーよ!」」
だってこの人話が本当に長いんだもん、以下略のところで20分ぐらい話してんだよ、しかも、やれ俺様はハーバード大学一発合格しただの、やれ戦争中はかなり上の地位だっただの、全部自分の自慢話!そりゃ紫姫とツッコミがハモるよ!だってこいつウザいって分かったから。
「ひどいなお前ら!俺様だって色々考えて話してんの!どれもお前らに必要な情報なの!」
「絶対いらない」
「ぜってーいらねー」
俺と紫姫は龍魔を冷めた目で見ながらそう言った。
「話は終わったようだな」
『まだ話は終わってねーぞ』と言っている龍魔を無視して立ち上がったのは坊主の男。
「俺は雲霧 桜怒 (クモキリ オウド)こう見えて住職をしている。大戦時は、軍で少尉として戦っていた。ここにいる理由は…なんというか成り行きって言った方わかりやすいと思う。しばらくの間だがよろしくたのむ」
俺と紫姫は『よろしくお願いします』と返し、龍魔はふて腐れて何かぶつぶつ一人で言っている。あの可愛い子からは相変わらず反応がない。
「最後は君だね」
と、桜怒さんが俺の彼女候補ナンバーワンに向けて言うと自然にみんなの視線が彼女に集まる。
すると彼女は顔を赤くし俯きながら、小さな声で喋りだした。
「……わたし、は、友切、雪菜(トモキリ ユキナ)で、す」
もう顔から火が出そうなくらい真っ赤になっている雪菜ちゃん…うん、可愛い。
「そっか、雪菜ちゃんって言うんだ!よろしくね」
俺は自分が出来る最高のキメ顔を決めると、周りから痛い視線を感じた。視線って武器になるんだね、うん。
それからまた沈黙が続いた…
「さて、全員の名前がわかったところでこれからどうするかだ」
と、桜怒さんが言った時だった。
『全員が一定の友好度数に到達しました。
これよりチュートリアルプログラムに移行します』
どこからから声が聞こえてきたその瞬間、俺は思わず目を見開いた。
今まで白い部屋にいたはずだったのに、ジャングルのど真ん中に俺たちがいるからだ。
「すげぇー」
この一言しかでない俺に対して龍魔は『まぁ電脳世界だからな』と、冷静だった。なるほど、あまりにリアルすぎて忘れかけてたけど、ここは電脳世界の中つまり電脳空間だった。龍魔の説明を受けてみんなも納得したようだ。
『ようこそ。チュートリアル専用空間へ。』
「!?」
振り返ると額に『CPU』と書かれた女性が立っていた。
「貴方は?」
こんな状況でも落ち着いている桜怒さんが問う。
『ワタクシはシグマと申します。皆様にこの世界の案内をするようプログラムされています。』
「チュートリアルということは、何かの練習ということでいいんですか?」
そう聞きながら俺は心の中で笑った。なぜならこれからすることがゲームに近いと分かったから。リアルのゲームは遊び尽くした。暇つぶしがほしかった。それが俺がここにいる本当の、そしてここにいる誰よりもくだらない理由。
『はい。皆様にはワタクシの後ろにある遺跡をクリアして頂きます。』
この言葉にこの場にいた全員が困惑した。
「すいませーん。後ろに遺跡らしいものがないんですけど」
困惑した表情でシグマさんを見つめる紫姫。
そう、シグマさんの後ろには周りと何も変わらない風景があるだけで遺跡らしいものはなかった。
シグマさんは一度後ろを見てから頭を深々と下げた。
『これは申し訳ありません。』
そう言い、指パッチンをすると突然なかったはずの古びた遺跡が出現した。
「なっ!」
「えっ?」
「普通じゃね?」
「!?」
「……」
様々な反応を見せる俺たちを見て、シグマさんは改めて言った。
『皆様にはワタクシの後ろにある遺跡をクリアして頂きます。』