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第2話 宿命の出会い

 家のドアを開けてすぐに叫びます。


継母(かあ)さん! やったわ!」

「まぁ。どうしたのシンデレラ? なんかいいことあったの?」


「おっと……」


 シンデレラは言いかけてやめました。


 継母さんをビックリさせよう。

 100万ゴールド入ったら、ダイ○ツの軽自動車でも買ってプレゼントするんだ!


「んふふ。なんでもない」

「そう? あ、そうそう。ドリゼラから聞いたわよ? スライムを100匹倒してくると言ったらしいわね。ダメよ? 嫁入り前の娘がそんなことしちゃダメ。お金なら、母さんがなんとかするから。ふふ。無鉄砲なのはお父さんそっくりね」


 といって、手に持っている布に針をチクチクと動かしていました。

 縫製業も板についたものです。


 こんな継母(はは)に武道会出場なんて言えない──。

 シンデレラは妹たちの部屋に行きました。


「姉さん、今日の晩ゴハンはお肉!!?」


 と大変喜んだ様子で二人とも姉に話しかけます。


「あ~ん、ゴメン。すばしっこくてさぁ~」

「なんだ。そっかぁ。ふふ。そんなことだと思った!」


「でもさ。これを見て? マジウケるからさ」


 シンデレラは、(くだん)のチラシを見せました。


 二人ともそれを見て驚きます。


「え? 姉さんこれにでるの?」

「マジまんじ……」


「出るのよ」


「うそーーー!」

「無理。無理だってぇ」


「こう見えても姉さん強いんだから! 期待しててよね」


 二人の妹は姉の根拠のない自信に顔を見合わせてため息をつきました。


 次の日。武道会受付場。

 選手候補の長い長い行列です。

 自分の番になり、シンデレラは受付の係員に言い放ちます。


「こんにちわ! 優勝しにきました!」

「じゃ、これ持って二階の201……」


 となんのリアクションもなく登録証を渡してきました。

 お役所仕事だなぁ。とシンデレラは思いました。


 二階の201。


「次の人。3008番」

「はーい。3008番、私ですっと」


「職業は? 女僧侶? 女魔法使い?」

「あ~ん。呪文は使えないんだぁ」


「じゃ、女戦士?」

「うん。そーだね。戦士」


「じゃ、三階の308番受付へ行って」

「三階の308? はーい」


「ご健闘を~!」


 係員に指示された通り、三階の308。


「はい、3008番の方ぁ~」

「はーい。シンデレラです。よろしくお願いします」


「えーと。シンデレラさんは戦士ね。女戦士」


「はい! 優勝します!」

「──うん。それは頑張って。じゃ、これにサインと、あと武器の許可証」


「許可証?」

「あら? 持ってない?」


「はい」

「じゃ、5階の506」


「そこに行けば許可証もらえる?」

「うん。そうだね」


「ありがとう」


 さらに階段を上って5階の506窓口へ。


「次。3008番。3008番!」

「はいはいはい。女戦士のシンデレラです。どーぞよろしく」


 こちらの係員は仕事がいやなのか、万事やるきのない対応。


「武器は? 剣? 槍? ハンマー? 斧?」

「あ~武器もってないんだぁ」


「生活苦しいの?」

「うん。苦しい。」


 係員は手元の券をビリっと破りシンデレラに突き出します。


「これ持って、8階の813!」

「8階? 8階に行くの?」


「8階の813に行って! はい、次~。5817番。5817番!」


 長い長い階段を上って、シンデレラ8階の813の受付へ──。


 係員に説明を聞かされております。


「違う、違う。生活保護を受けたいんじゃない。そーゆーんじゃないんです」


 また別の階に移動され、係員の説明を聞きます。


「いや、カード払いとかそういうんじゃなくて戦士になりたくて──」


 またまた、移動。係員の前で頭を抱えてしまう。


「詐欺師になんてだまされてない。戦士になって武道会に出場に来たの……」


 たらい回しにされ、ほとほと疲れてしまったシンデレラ。

 次に案内されたのが──。


「武器は? 剣? 槍? ハンマー? 斧?」

「ちがーーーう!!」


 シンデレラはお役所の長い長い対応に怒り狂い、我を忘れて飛び出しました。


「こんなクソ武道会になんて出場してやるもんか!」


 ドシン!


 よく見ていなかったせいか、シンデレラは追突して倒れました。


「これはこれは、お嬢さん。なにをそんなに慌ててらっしゃる?」


 といって、シンデレラがぶつかった相手は革手袋をはめた手で彼女を引っ張り起こそうとしました。


「ああ、スイマセン。お恥ずかしいところをお見せしましたわ」


 と言って、手を借りると、なんと美丈夫な青年!

 シンデレラはあっという間に恋に落ちました。


「あの、お名前を伺っても……?」


 というと、後ろにいる黒い鎧を来た屈強な魔族の男が代わりに話そうとします。


「お嬢さん。このお方こそ、魔王陛下の──」


 と言ったところで、美青年は口を塞ぎました。


「(な、なんてチャーミングな女性だ……!)ああ、えーと、余──いえ、私は……チャーミングです。チャーミングと申します」

「まぁ! ヘンテコリンなお名前……」


「(思わず言ってしまった)いえいえ。ふふ。スイマセン。……あなたも、武道会に出場なされるんで?」

「え? ええ……」


「へぇ! すごい! では武道会にいけばお会い出来ますね!」

「そー……ですね」


 黒鎧の男は会話の途中で美青年の腕を取って弱めに引きました。


「チャ、チャーミング殿。で、では行きましょう」

「うん。そーだね。じゃ、お嬢さん、また……」


 と言って、二人は階段を上って行きました。

 上り様、美青年は黒鎧の男に話し掛けます。


「なんて美しい人間の娘さんだ!」

「はぁ。殿下。勘弁して下さい。今度の大会では、お妃候補のゴモリー様もおいでになります。ましてや人間の娘などと……。陛下はお怒りになりますよ?」


「そ、そうだな……」


 美青年は魔族の王子でした。

 彼は衿をただして、さらに階段を上って行きました。

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