早めに魔法を見せていただけないと・・・ねぇ。
初投稿です。
思い入れは特にありませんが、展望は多くあります。
気に入っていただけたら嬉しいです。
「なんていえば分かってもらえるのかな。。。たとえば風があるじゃない?」
頭を抱えながら、少しずつ、少しずつ話をする彼女。
「空気って触れないと思われてるけど、”風を感じる”っていうでしょ?」
「うん」
「あれと似たようなイメージなの。こう、目には見えないけど体に当たっているような。。。掌で“ソレ”の感覚を感じ取るのが一番最初なの」
「う~む」
手を前でかざしてワタワタ動かす彼女の姿はとても愛らしい。
腕はしっかり筋肉質だが。
実際に似たような動きで私も手を動かしてみるが、滑稽でしかないと自覚している。
「う~ん、だめっぽいね。まずは、、、どうしたらいいかなぁ?」
微妙に、諦めたほうがいいよね?的な目をして弟に声をかけるのはやめてほしい。
彼女の弟は苦笑いでかえす。見た目のわりに大人。
私は手に力を入れたり、指をわさわさしたりして感覚をつかもうともがく。
・・・
「そうだ、なにか燃やして煙を作れない?」
見かねてか彼女は解決策を示す。
無茶を言ってくれるな。いくら退去を予定しているとはいえ、賃貸ワンルームの部屋の中で煙?
考えを巡らせて、ドライアイスで代用を決める。
持っていない。
それならばと近所のアイス屋まで三人で歩いていくことに。
私と、彼女と彼女の弟。
周りから見れば、親せきのおじさんが、姪と甥を連れて歩いているように見えるだろう。
親子には見えない、そう思う。
帰り道、買ったストロベリーアイスクリームとレアチーズアイスクリームを、こちらがうれしくなるほど美味しそうに頬張る姉弟。
よきかなよきかな。お金はたんまりあるからね。
でもまだ3月だよ?寒くない?おじさん、ちょっと外では無理。
さて、自宅に戻り残ったアイスを冷凍庫へしまい、もらったドライアイスを水につける。
すぐに白い湯気が出てきて床にたまる。小学生のころ実験でやったなぁ。
「さてと。。。」
何回かスクワットを行い、彼女は座禅の体制で腰を下ろす。
「参考になるかわからないけど、目を凝らしてみてて」
そう言い眼を閉じ、体の前に手を差し出す。
ろくろを回すようなポーズのまま固まった彼女を、彼女の弟とともに見守る。
「なにやってるの、あんたもよ」
「あ、うん、ごめん」
目をつむったまま弟を呼ぶ姉。
弟はなんの疑問も持たず姉に従う。このあたりはどこでも共通なのか。
ふたり並んで同じろくろポーズをとり、固まる。
ふたりとも顔が整っているからか、まるで人形のようだ。
見逃すものかと意気込んでみたが、変化はすぐで、見間違えようがなかった。
白い煙が二人の掌に吸い込まれたかと思うと、その中でグルグルと煙が回る。
手を動かしている様子もなく、煙それ自体が意思を持ち留まろうとしている。
某忍者漫画の必殺技のようだ。螺旋を描いている。
二人の手がゆっくり開いた。
その瞬間、二人の体の周りを蛇のように煙が巻き付く。
そのまま体の周りを回り続ける。
肌で感じる。これはトリックではないと。
「どう?なかなか凄いでしょ?」
「でしょ?」
ニッと笑う姉弟。
こういうときだけ年相応のドヤ顔。
非現実的な光景の中で、とてもリアルな感情表現。
それを見て私は思った。
ああ、今年は本当に運が良い。
1月 宝くじに当たった。
2月 美人姉弟に出会った。
3月 その姉弟は魔女だった。
早い更新を心がけます。