代償
随分昔のこと、私は悪魔を名乗る人と取引をした。
中身は単純なものだ、幸せな家庭を持ちたい。
それだけだ。
「では、16年後の今日、娘を一人もらうぞ」
「ええ、それでいいのでしたら」
その悪魔は私にとり憑き、そして心の奥深くで眠りについた。
その後私はある女性と知り合い結婚して、そして子供をもうけた。
問題なのは男の子だということだった。
結婚初年はそれでいいと思った。
しかし、次々と子供が生まれていっても、そのすべてが男子だという確率は、どれぐらいのものだろうか。
「また男の子か」
13人目の男子が生まれる頃には、もはやうんざりともしていた。
心の悪魔も、同じ気持ちらしく、ある日夢に出た。
「お前、いつになったら娘を生ませるんだ」
「そんなこと言われましても、生まれる性別なら悪魔なら変えられるのではないのですか」
「の、はずだったんだが……」
想定外という言葉が、私の頭をよぎっていく。
「どうやらお前をパートナーとして選んだのは失敗だったようだ」
「娘が欲しいというのはあきらめるのか?」
「16年も待ったのだよ、でも生まれないということは、そう言うことなのだろう」
じゃあな、と悪魔は私の心の中から消え去った。
その翌年、待望の娘が生まれたが、20歳を超えた今でも悪魔は来ていない。




