89話 頼もしく愉快な仲間達と
ミアさんからの連絡、そして遠目からもボクの戦闘風景が見えていたのだろう。
移動を開始したのを見て、正門の隣にある側防塔前の通路でボク達の到着を待っていたユイカとティリル。
そこに至るまでの通路上には、両側に兵士や他の同郷者達が立ち並び、レトさんとボクを乗せたリンはその中をゆっくりと進んでいく。
それはあたかも英雄の凱旋を祝うパレードのようで。全員の視線が集中しているのが分かるだけに、小心者なボクにはどうにも落ち着かない。
「セイちゃん!」
「セイさん! よく御無事で!」
ようやく辿り着いてリンから降りたボクとレトさんに、二人は口々にそう叫びながら駆け寄ってきた。
「ふえぇ……ぐすっ。無事でよかったよぉ……」
そのままの勢いで飛びついてきたユイカがボクの胸元で泣き出すのを見て、彼女を掻き抱きながらその背を軽くさすってあげた。
ほんと心配ばっかりさせてごめん。
「隊長。セイちゃ……様を無事お連れしました」
「うむ、ミアから聞いているし、さっきまで見ていたでござる。レトも無事で何より」
少し固い表情でビシッと敬礼をしてみせるレトさんに、腕を組んだままウンウンと頷く一人の長身の男性。
その隣には、ちょっぴりニヤニヤしたミアさんの姿があった。
その男性から返答を受けて、レトさんはホッと息を抜く。「何でこんな寸劇やらせるのよ」と彼女の口からそんな言葉が漏れる。
少し前、馬上で着信したメールを見てたと思ったら、これの事だったのかな?
ボクの耳に辛うじて届いたその愚痴は聞かなかったことにした。
そんな彼らを失礼がない程度に、マジマジと観察する。
このくすんだ亜麻色の短髪の男性が、彼女達のパーティーリーダーなのだろう。確かダンゾーさんだったかな?
白銀に輝くミスリルっぽい色合いの鎖帷子と黒基調の忍装束、その上から鋲のついた黒のジャケットを羽織るその姿は、若そうに見えるのに渋い雰囲気を醸し出しており、その出で立ちはかなり恰好良かった。
ただ言葉の語尾が「ござる」って……。
いや、レトさんから隊長も忍者だと聞いているから、ミアさんと同じく自分が設定している役になりきっているんだろう。
「セイちゃんでござるな? 二人から聞いていると思うでござるが、拙者がダンゾーという一端の忍者でござるよ。
こうして顔を合わすのは初めてでござるが、よろしく頼むなり」
「え……。あ、はい。ボクはセイです。よろしくお願いします」
にんまりと笑いながら、こちらに向かってダンゾーさんが右手を差しだしてくる。
ボクは差し出されたその手に握手しようとして、右手を伸ばし……。
ボクが差し出したその手を横から掴み取り、ユイカは自分の方へと引っ張った。そのせいでバランスを崩し、彼女の方へと倒れかけた。
ちょっと、ユイカ?
何がしたいの?
「……ユイカ?」
その行為を咎めるような視線を向けても、ユイカはどこ吹く風。隣に立っているティリルは、そのユイカの失礼にあたる行動にばつの悪そうな表情を見せているけど、珍しいことに注意しようとしない。
「セイちゃん。握っちゃダメ。変態が移っちゃう」
「ユイカ……いくら真実でも、それは流石にダンゾーさんに酷いですよ」
え、ティリルまでも、何を言って?
一体何があったのよ?
ティリルまでさらっと毒を吐いた事にビックリしながらも、そっとダンゾーさんの様子を伺えば、ニコニコしたままで全く気にしてない様子。
その笑みにますます警戒を深めてボクを背後に庇おうとするユイカとティリルの様子に、ボクは全く理解が追い付かない。
ボクがいない間に何があったのよ。
「そんなことよりダンゾーさん。状況はどうなの?」
「「あっ?」」
背後からにょっきと腕を差し出しボクを抱き抱えたレトさんに、二人の声がハモった。
そのままずりずりと後ろに引っ張られ、ダンゾーさんから引き離されていく。
「うむ、現在の状況だが……」
「──セイちゃん、その女誰?」
「セイさん……またやっちゃったんですか?」
気にせず話を続けようとしたダンゾーさんの台詞を遮って、ダイレクトに詰問口調で問い質してくるユイカに、にこやかな笑みを浮かべながらもどこか冷え冷えとする視線でボクに確認してくるティリル。
こちらに詰め寄ろうとするユイカの尻尾がブワァッと膨れて立ってしまっているし、それにティリルの目が笑ってない。
な、何!? めちゃくちゃ怒ってる?
またと言われても普通にしてただけで、何もやってないんだけど?
「いや、その……ここまで道案内してもらった……もらいましたレトさんです。で、あちらがミアさん……です」
その勢いと視線に耐えられず、しどろもどろに思わず敬語になって答えを返してしまう。
そんなボクを更に引き寄せながら、レトさんがにこやかに続く。
「レトよ。ジョブは斥候系ね。よろしく」
「ミアにゃ。
……そもそも女の子同士にゃ。訳わかんにゃいし、二人とも落ち着くにゃ」
「あ、よろしくです……じゃなくて、取りあえずセイさんを離してもらえます? 嫌がってます……よね?」
ニコニコ笑いながらボクへ確認してくるティリルに、コクコクと頷いて同意を示しておく。昔からの経験上、こうなったティリルには逆らってはいけない。
「あら? 私は変態さんの魔の手からセイちゃんを救い出しただけよ」
「むうっ!」
「レトちゃん、それは酷いでござるよ」
レトさんのそんな言葉にユイカがふくれっ面になり、ダンゾーさんが抗議の声を上げる。その様子を見て、レトさんはため息一つ。
「じゃあダンゾーさん。握手した後、どうしようとしてたのよ?」
「当然舞姫に触れたこの手、一生洗わないでござる」
「……いや、洗って下さいよ」
思わずツッコミを入れる。
男からアイドル指定されて、そんな事されるのは嫌だ。
「じゃ、洗う前に綺麗に舐めるでござ……ほぶっ!?」
一瞬で距離を詰めたレトさんの拳が変態の顔面にめり込み、彼はその場に崩れ落ちた。
「おー、綺麗に入ったにゃ」
「変態は死すべし、慈悲などない」
パンッパンッと手を叩き、宣告するレトさん。
あぁ、彼女が何だかかっこいい騎士に見える。
それにしても、なんて事言うんだよ。鳥肌立ってしまって、まだ消えてくれないんだけど。
うん、情状酌量の余地なしだな。この人はもう変態認定しちゃっていいだろう。
今なら分かる。みんなが警戒した気持ちが。
「ミア、この変態いつまで野放しにしてるのよ。ちゃんと鎖に繋いで言い聞かせておきなさいよ」
「そんなのミアに言われても困るにゃ。言ったところで考え方を変える兄ちゃんじゃにゃいし」
「と、とにかくですね。これからどうするんですか?
ひとまずあの大熊は吹き飛ばしたものの、あと二時間弱で復活してきますよ?」
この状況をうやむやにするべく、話をぶったぎってそう切り出す。
よく考えれば、二時間の猶予って長いようで短い。せめて、第二戦目の骨子案だけでも出来てないとまずい。
そう言った所でふと気がつくと、傍にいたユイカを再び抱き寄せていて、無意識にその頭をポフポフと撫でていた。
元々は毎日のように結衣からせがまれて、日課のようにやっていた行為だ。
物心ついた頃からずっと繰り返してきた事なのか、強いストレスがかかった後なんかは特に、ふと気付いたら、こうして彼女を撫でていたりする。
彼女と触れ合ってると、ボク自身もリラックス出来るんだよね。
結衣も何かあると、すぐボクの元に飛んで来て抱き付いてくるし、二人で一人というか、お互い無くてはならない存在となっているんだなと思う。
いくら幼馴染とはいえ、付き合ってもいない男女がやる行動じゃない事に気付いた頃には、何かあると条件反射みたいに行動してしまうレベルにまでなっちゃっててね。
中学に上がった頃、その行動をクラスメイトに見られてしまい囃し立てられ、からかわれた事がある。
まあ色々あったんだけどさ。それが終わった後、樹からの忠告を受けて思わず「これからは止めよう」と結衣に言った時は、この世の終わりみたいな顔されて、またひと悶着あったっけ。
まあ結果をいうと、やっぱり止めれなかったけどね。未だにこうして無意識にやっちゃうんだもの。
あいつに「完全に調教されてしまったんだな」としみじみ言われた時は、流石にショックだったなぁ……うん。
──まあそれはさておき、だ。
レントの奴、まだ来ないな。遅い。
この部隊の総合リーダーのあいつが来ないと、話すら始まらないんだけど。
この足元でだらしない顔で伸びてる変態さんは、多分役に立ちそうにないし。
周囲には何だかほっこりした空気が流れ、またボク達の方へと生暖かい視線が飛んで来るけど、まあ毎度の事だし気にもしてない。
そうこうしてる間にボクも落ち着きを取り戻し、ささくれだっていたユイカの機嫌も直って蕩けた顔で甘え出したところで、遠くでボクを呼ぶ声が聞こえた。
「セ~イ~ちゅあぁぁぁん!!」
「へっ?」
何だかボクを間延びした大声が空から聞こえ、声が降ってきた方を見上げる。
そこには純白の翼を生やした金髪の少女がいた。
両手を前に突き出して目を閉じ、更にはタコのように唇を突き出して上空から降ってくる天使(?)のような少女の姿に、ふと見慣れた既視感と身の危険を感じ、ユイカを背後に庇いつつ風の障壁を張る事にする。
「愛しのセイちょぶべぼっ!?」
ガゴンッとマトモにぶつかった音と共に、女の子にはあるまじき奇声を上げて障壁に貼り付き、その後ズルズルと障壁に沿って地面へと沈んでいくこの有翼人種の少女。
彼女の顔を確認するまでもなく、彼女の声とその行動で、すでにその正体には気付いている。
そりゃあ物心ついてからずっと一緒に居たし、仲の良い姉弟だったんだから。金髪になって翼が生え髪型変わったくらいじゃ、見間違えるはずがない。
周囲の人達は突然発生したその少女の惨状に唖然とし、次いで目を反らして肩を震わせたり口元を押さえたりしている。
やっぱり笑われるよね。ほんと恥ずかしいなぁ、もう。他人の振りしてやろうかな。
「姉さん、ボクに何する気だったんですか?」
ボクは嘆息して、いやいやながらもそう声を掛けた。
バラバラにされたこのイベントで、まさか同じサーバーにいるとは。慎吾義兄さんも何処かにいるな、これは。
新婚ホヤホヤの二人が別のパーティーになっているなんて考えられないし。
でも姉さんのこの行動。何だか現実世界よりも、かなりはっちゃけて暴走している気がする。
母さんとボク以外の他人の目があるところでは、ちゃんと女性らしく猫被りながら、もう少し自制していたはずなんだけど。
「少しは自重して下さい。恥ずかしいです」
「……シクシク。やっと会えたのに、セイちゃんが反抗期だ。しかも他人行儀になっちゃった。お姉ちゃんって呼びながら私の後を付いてきた、あの頃のセイちゃんはもういないのね」
ワザとらしく口でシクシクと言いながら、地面にのの字を書き出す姉の姿に頭が痛くなる。
「お、お姉ちゃんって……もう、一体いつの話をしてるの」
「意外と……うん、三年前よね。あの時はかなりショックだったわ。それにいつまでたっても私に会いに来てくれないし……ぷんぷん」
ブーブーと口を尖らせて文句を言う姉に、深々と溜め息を吐いた。
二十六にもなった既婚女性がする行動じゃ無いんだけど、恐ろしいくらい違和感がない。
我が姉ながら、保護欲を掻き立てられてつい世話を焼いたり、思わず抱き締めたくなるくらい可愛い。
それに……身長もボクより僅かに高いくらいだから、一緒にいるのを端から見れば、きっと仲の良い姉妹にしか見えないんだろうな。
だいたいね。いつも思うんだけど、ボクと一緒にいる時の姉さんって、何でこんなに精神年齢が低くなるんだろうか。
「ええっと……」
「なーに?」
レントと慎吾義兄さんがどこにいるか聞こうとして、義兄さんのこちらの名前をど忘れしてしまったことに気付き、内心冷や汗をかく。
そんな口ごもったボクの様子に、姉さんはコテンと首を傾げる。
年末から今まで話題が出る度に散々連呼されて、ちゃんと覚えておいたはずなんだけど、さっきのショックで頭から抜け落ちちゃったじゃないか。
仕方ない。思い出すか、誰かが呼ぶまで誤魔化そう。
「……義兄さんとレントはまだ門の外?」
「そうね。今向かってるわ。もうじき来るわよ」
手元を何やら操作しながら、姉さんがそう言う。そして着信するメール。
「それ私のね」
あれ、フレンド以外拒否設定にしていた筈なのに?
そう思いながらも確認すれば、現実の端末アドレスで着信していた。
そうだった。こっちも使えたっけ。
妙に感心しながら『クマゴロウ&ヒンメル』というタイトルがついたメールを開けば、そこには二人のIDが記載されており、そのIDからのフレンド登録依頼があった。
『私達はスレに誤爆していたセイちゃんのID知ってるから、もう登録してあるわ。後はセイちゃんが私達のIDを入力して承認するだけで、相互が終わるわよ』
と、ある。
それに誤爆していたボクのレスは、姉さん達が申請して消してくれたらしい。
そういや消せる事を忘れてたよ。
またやらかすところだった。
それと……。
『こっちの私達の名前、ど忘れしてたでしょ? あの人には黙っててあげるから、貸し一つね』
最後にこんな一文が。
何故バレたし?
「よく無事でいてくれたな。それと援護助かった」
「いえ。その……クマゴロウ義兄さんもご無事で何よりです」
どこぞの聖騎士かと思うような派手な板金鎧を着込んだ白熊を少し離れた位置から見上げ、ちょっぴり尻込みしながらもそう答える。
あの時に援護した熊獣人が慎吾義兄さんだったなんて、全く思いもよらなかった。完全に熊の顔だもの、こんなの分かる訳ない。
それにその……こうして離れているのは、別に熊が怖いわけでも、義兄さんが怖いわけでもない。
むしろ顔に似合わず(失礼)、子供達に優しく正義感の強い好青年である。初対面は誤解されやすいだけで。
じゃあ何でだといえば、それは彼が着込んでいるその板金鎧にある。例の『金属不可』のせいだ。
使われている金属の種類やその量によってかなり差があるんだけど、ボクの精霊化が進むにつれ、最近は傍に寄るだけで全身の毛が逆立つような不快感まで出るようになってしまった。
純粋なミスリル銀なら、ほぼ大丈夫なのが最近分かったけど、鉄とか鉛とかはもうダメ。正直金属製品が怖い。
今はまだ我慢出来るレベルなんだけど、どこまで悪化してしまうのか想像もつかない。
ティア自身が特段に金属が苦手らしく、その彼女と精霊化を行った事で、その影響が相乗効果を生み、ボクにも強く出てしまっているようだった。
うん、もはやこれは『金属アレルギー』と言って良いだろう。嫌な相乗効果があったものである。
鍛冶や細工を司る山精種に祀られている三柱の精霊のうちの一柱である雷鳴の精霊が、実は金属が苦手という情けない話ではあるものの、こればっかりはどうしようもないらしかった。
じゃあ他の精霊はどうなんだというと、ティアの話では、たった一柱を除いて全員大なり小なり苦手らしい。
そのたった一柱というのは、当然の如く大地や鉱石を司る地の精霊さんらしい。更に『地の精霊様の寵愛を得る事が出来れば、金属弱点もマシになると思います』とティアは言う。
そうは言われても、寵愛みたいなモノはポンッと渡されるモノじゃないから、当分無理だろうと思う。
それと、もちろん一番金属耐性がない精霊もいて、こちらも当然のことながら、森精種が祀り守護している樹木の精霊さんらしい。
つまり森精種の種族的な金属耐性の無さは、森精種達に種族加護を与えている樹木の精霊さんの影響でもあるらしかった。
という訳で、そういうどうしようもない理由があって、今の義兄さんに触れられない。けど、それを違う意味に捉えられて勘違いされても困るので、先に姉さん経由でメールで伝えてもらった。
これはボクの最大の弱点だから、世間にバレちゃったら大変な事態になってしまうのは目に見えている。レントからも口酸っぱく言われてるし、そこは気を付けないとね。
という訳でちゃんと対応したつもりだったんだけど、ちょいとばかり言い忘れたお人がいて……。
「──でだ。これはどういう状況だ?
それになんで俺が初めて会った人に睨まれなきゃならん?」
「あは……ははは。なんでだろ?」
レントがジト目でボクの方を見ながら問い詰めてくるけど、そんなのボクに訊かないで欲しい。
ヒンメル姉さんとのやり取りの後、すぐにやってきたクマゴロウ義兄さんとレント。階段を駆け上ってくるレントの姿を見付けてボクが呼び掛けたんだけど、その瞬間、レトさんが背後からボクをかっさらって、レントからいつでも引き離せるようにか抱きしめてきた。
そんなレトさんの行為にユイカが過剰反応を示してしまい、そんなボクの右腕にしがみ付いた。更には面白半分に、姉さんが逆の左腕にしがみ付いて来て。
そんなボク達の隣で、ティリルが困ったような顔を見せているのが今の状況。
それに途中からレトさんが二人の方──特にレントを睨み始めたようだ。他人事みたいな言い方してるのは、ボクからは見えないからなんだけどさ。
……もうやだ。何でこうなるのよ。
「あのレトさん? 一体どういう……」
「ねぇ、セイちゃん。ホントに何もないのよね?
あの男と顔を会わせてからセイちゃんの身体、少し震えてるように思うんだけど?
ホントにホントに、本当に私の気のせいなのかな?」
──それはその……。
クマゴロウ義兄さんの金属鎧のせいです。
ボクの金属アレルギーを聞いて、すぐに出せる巨大盾や両手剣は虚空の穴にしまってくれたようだけど、鎧は着るの時間かかるからね。この戦中に脱いだりするのは、流石に無理があるし。
しかし……。
うーん、やっぱり微妙に身体が反応しちゃってたみたいで、どうやらそれをレトさんは怯えと勘違いしちゃったようだ。
というかこの身体、どこまで面倒臭いのよ。ボク自身この程度は問題ないと思ってたんだけど。
こりゃレトさんにもちゃんと言うべきだったか。
「……男の幼馴染……まさか暴力とか? いや、それとも夜な夜な無理矢理手籠めに……ち、調教されちゃってて……でも、どう考えても……」
「姉さんもユイカもちょっとごめん。放してくれない?
──ちょっとレトさん、耳貸して。向こうでお話しましょうね」
勝手に変なストーリー作ってとんでもない事をブツブツ言い出したところで我慢出来なくなり、にこやかな笑顔でレトさんの手を引っ張って他のみんなから引き離すと、他言無用を条件にボクの古代森精種の弱点を小声で耳打ちする。
レトさんなら言いふらしたりしないだろうし、こんな事になるならもっと早く言っておけばよかった。
その説明に一応は納得はしてくれたみたいだけど、どうもレトさんって思い込みで暴走する癖があるよね? いらない爆弾抱え込んじゃった気がしてならない。
「うふふ。なかなか面白い子ね。これは弄りがいがありそ……」
「そこっ! 姉さんは黙ってて!」
疲れた顔で戻ってきたボクに追い討ちをかけてくる姉さんに、そうピシャリと言い放つ。
戦いの本番前から何で疲れなきゃならないんだよ、もう。
……はあ、頭痛い。




