7話 不遇?
ブックマークが一気に増えてて、びっくりしました。本当にありがとうございます。
今後ともよろしくお願いいたします。
5/25 加筆しました。
「さてと、時間も押してることだし、実戦チュートリアルといこうか」
フレンドコードを交換し合った後、連れ立って噴水広場を出たボク達。
東区の大通り沿いにある冒険者ギルドで、『角兎の毛皮』と『薬草』の2つの納品クエストを受け、現在は東門に向けて移動中。
なんでも東門を出た先にある『旅立ちの野』とプレイヤー達から呼ばれている草原エリアが、一番敵が弱いらしい。
あと各区画の中央付近には、中央噴水広場行きのポータル機能のあるモニュメントが設置されている事を、兄さんから教えてもらった。
無料で利用出来るそれは、この街の交通機関の役割をしているそうだ。
その場所を覚えておけば、今後の街の移動が少しだけ楽になりそう。本当にこの街は広すぎるからね。
教えてもらった各区画の施設の傾向は、
中央区:各精霊神殿(未だ入れないらしい)と噴水広場(主ポータル設置場所)
北 区:鍛冶場や各種工房地区
東 区:冒険者ギルドや商業者ギルド及び各役場
南 区:農業地区
西 区:商業地区
こんな感じです。
「そういや二人はスキルどんな感じにしたの?
レントは剣士、ユイカは魔法士だよね?」
「ああ、〔剣装備ボーナス〕が職業スキル。それと〔剣術〕をメインにして、〔ダッシュ〕〔回避性能〕と〔AGIアップ〕〔STRアップ〕だな。
虎族はAGI重視の種族らしいし、盾を持たないことにした。
種族スキルは〔獣化〕だな。種族レベルが上がれば、効果と変化時間が増えるらしい」
レントは完全な攻撃重視で、防御は回避で行う構成みたいだ。
「あたしは獣人では珍しい魔力型の狐族だからね。元素魔法士になったよ。〔元素魔法〕が基本職業スキルで、取ったのが〔魔法陣・火〕〔杖術〕〔INTアップ〕〔MNDアップ〕〔MPアップ〕かな。
種族スキルが〔始祖返り〕という変なスキルだけど、なんか種族レベルが上がると尻尾の数が増えるっぽい?」
「ユイカちゃんが引いたのは、狐獣人のレア種だ。ノーマルの狐獣人は単に獣化だからな。
設置型か突発型どっちでもいいが、何らかの試練クエストを発生させてクリアすれば、ステータス強化と特殊スキルを得て尻尾が増える」
「おお、目指せ九尾、だね。ニヒヒ」
双子の選んだ獣人種の尻尾とかどうなってるんだろう、と聞いたら色々教えてくれた。
その話によると、今は自分の意志では動かせないらしいんだけど、慣れてきたら動かせるらしい。
あと感情に合わせて勝手に動いちゃうとの事。
更に触ると、ちゃんと触れた感触があるんだって。
「そういうセイ君は堅実なスキル構成よねぇ。しかも可愛いレアエルフ。いいお婿さんになれるよ」
「料理と薬は任せた!お前の手料理は旨いからな」
というか……。
「そもそも、なんで生産系スキル二人とも取ってないの?
食事とかどうするのさ」
チュートリアルで勧められたりしなかったんだろうか?
戦闘一極とか。
「「セイ(セイ君)にお任せだな(だよ)」」
「……ちょっとマテ」
こちらに向かって息の合ったVサインしてくる二人を見て、ため息をつく。
容姿は似てなくても、やっぱり双子なんだなと。
「精霊魔法士か。セイは」
ボクの選んだ職を聞いてレントが呟くが、なんだか奥歯にものが挟まったような言い方に少し不安になる。
「なんか問題でもあるの?」
「……いや、使い方次第ではあるんだとは思うんだが。
一応攻略サイト上では、精霊魔法士はぶっちぎりで不人気というか、不遇職でな。現状最前線に行きたいなら、キャラ作り直しか転職推奨ってなってるんだよ」
「……はぃ?」
意味が分からない。作り直し推奨って何?
いや、そもそも最前線とか興味すらないんだけど?
「ちょっと、お兄っ!?
いきなりそんなこと……」
「いや、失敗とかじゃなくてだな。
……セイなら目的が違うし、その程度の事を気にする性格じゃないと思うんだが、気になることが書かれててな。どういったらいいか……」
「レント君。よく知ってるし、俺が説明する」
レントの言葉を遮って、兄さんが喋りだす。
普段おちゃらけた表情ばかりしかボクに見せない兄さんが、真剣な声色でレントの言葉を遮ったのを見て、自然と足が止まった。
「まず一つ目。精霊魔法の特徴だが、一般的な話、魔法の行使に元素魔法士の倍くらい時間がかかる。また、威力が低いことも上げられる」
兄さんによると、今まで見てきた精霊魔法士のプレイヤーは、思う通り魔法を組み立てられないことが多いらしい。
そして使えても、実戦で使えないくらい威力が低いそうだ。
ただ、種族的に普人種の精霊魔法士しか見たことがないから、ボクの古代森精種だとどうなるかわからない、とは付け加えてきた。
あれ、森精種の精霊魔法使いっていないの?
「エルフの魔法使い系は元素魔法使いやテイマー、召喚士辺りがメジャーだな。そもそも使いづらいせいか、精霊魔法使い自体ほとんどいないからな」
うへぇ。
ボクの内心を知ってかしらでか、ボクに見せるように立てていた指の本数を増やす。
「二つ目。次の不遇は、精霊魔法がフィールドに影響されやすい魔法だということだ。これが汎用性があるように見えて、その実全くないという事態になっている」
精霊魔法は全ての属性を使えるとはあるけど、現在の仕様として、そのフィールドに対応する属性しか呼べないらしい。
「例えば、火山ステージがあるとする。そこで現れるモンスの属性は基本火と土になるだろうな。
……さて、そこで呼べる精霊はなんだと思う?」
「そりゃ火と土がメインなんじゃ……あ、そういうこと」
「溶岩で出来たゴーレムとか出てくるからな。そんな相手に火球とか作ってぶつけても仕方ないだろ?」
そりゃ焼け石に水どころか、油だからなぁ。
「育てて上級職になれば何かが変わるかもしれないが、誰もまだ育てられていないというのが現状だ」
精霊魔法プレイヤーがそこまで少ないと、情報も少ないんだろうなぁ。
「最後の三つ目。
テイマーや召喚魔法の使役獣と同じく、精霊も同じように好感度っていうモノが存在するというのが通説でな。
好感度が低いのかイメージが悪いのかわからないが、発動までの時間がかかったり、効果があまりなかったり、MPがシャレにならんレベルで消費してたりするそうだ」
「まあ普通に考えたら、好感度はあると思うよ」
「気にしてないようだな」
「そりゃ兄さん。ボクは何が何でもトッププレイヤーになりたいわけでもないしね。逆に面倒な事が起こる気がするし、むしろなりたくないよ」
「そうか……。
――まあ何か秘密が隠されているような気がするけどな。ゲームの名称的に」
確かにゲームタイトルに精霊を謳ってるのに、精霊魔法が不遇っておかしいよね。
大器晩成型で、後で化けるとか?
「一人精霊魔法主体でまったりやってるプレイヤーを知ってるが、そいつも同じこと言ってたな。
──この世界は何をしようと自由だ。責任もって行動出来るお前なら、この先もうまくやっていけるだろう?」
「ありがと」
それに、人と違う楽しみ方をするのもありだと思うんだ。みんなが使わないような新しい精霊魔法の使い方を考えてみるのも楽しそうだし。
うん、色々試してみようっと。
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《ASの知識の何故?なに?TIPS》
●職業について
精霊世界『エストラルド』において、全住民が職業を持っている。勿論『無職』も職業の一つになる。
大まかに分けて戦闘職と生産職があり、戦闘職でも生産技能を覚えることは出来るが、特化された生産職業を持つ者に最終的には勝てない。逆もしかり。
これは職業スキルと呼ばれる、その職業種だけの専用スキルが存在している上、隠されている職業補正値(又は種族補正値)の差が生み出すものと、有志のプレイヤーによる現時点での検証結果が報告されている。




