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彼の特殊な精霊事情  作者: 神楽久遠
ワールドイベント開幕
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67話 ハイキングイベント?


「試練クエストだってっ?」


 アーサーさんがビックリしたように声を漏らすのを聞きつけ、ボクとレントは顔を見合わせた。

 初回からそうじゃなかったの?


 その横にいるマーリンさんもティリルもびっくりしている。見渡せばかなりの同郷者プレイヤー達が騒然としていた。


 そんな中、椿玄斎さんだけが顎髭を触りながら悠然と佇んでいる。

 ほんと動じないね、このお爺さん。

 

「名称を変えたのか。確かに前回までやってた仮面の兄ちゃんじゃねぇしな」


 マーリンさんの呟きが耳に届く。


 ボク達以外は前回のイベントに参加していたから、オープニングの流れも知っている。恐らく今回から主催者本人が表に出る事を辞めて、精霊達に任せるようにしたのだろうけど。


 ボク達は単に受け売り通り『ワールドイベント』と言ってるけど、精霊達の認識では『ワールドイベント』とはすなわち、『創造神』と執り行う『試練クエスト』になるのだろうか?


 それとも単に名称を変更しただけなのかは分からないけど、試練みたいなガチガチのモノじゃなくて、お遊び的な楽しいモノで済めばいいな。



『これより五分後に転送を始めますわ。参加する者は、この場に残って下さいまし。参加されない方は、ただちにこの場所から広場の外へと離れて下さいな』


『イベントは六日間。あなた方の世界時間で三時間。

 参加を辞退した方、したくても参加できなかった方へは、後日ささやかながら贈り物があるの。皆様、自分の想いに正直に行動して欲しい』


『注意点が一つありますわ。今回の転送先の平行世界は、それぞれ定員が決まっておりますの。各平行世界毎にパーティーごとのランダム転送になりますから、一緒にいたい方とはパーティーを組んで下さいませ』


 およ?

 参加人数が多くなった弊害かな。

 それとも各世界(チーム)毎の対抗戦?


 ボク達の近くにいた何人かが、ぞろぞろと門の外へと出て行った。

 ここまで来て、今から参加を辞退する人なんているんだね。パーティーメンバーが集まらなかったりしたんだろうか?



 今ボク達は二PT編成を組んでいる。

 アーサーさんとマーリンさん、椿玄斎さんと源さん夫婦の大人パーティーに、レントとユイカ、ティリルにボクを加えた幼馴染パーティー。


 うん、とんでもなくバランスが悪いね。レベル的にもだ。


 最初、回復魔法が使えるティリルとマーリンさんが別れて、そこに近接職と魔法職をバランスよく組み合わせようと、レントが言い出してパーティー編成を行った。

 そしてレント主導で決められた編成が、アーサーさんとレントとティリル、ボクの四人。


 けど、この組み合わせはユイカの猛反対にあい、それに追随する形でティリルまでもが反対した。

 二人の猛反対にあって収拾がつかなくなった為、椿玄斎さんが提案した今の幼馴染編成になったのだけど、レントがアーサーさんに「俺と変わります?」と訊いたせいで、またややこしい事になった。

 主に女性陣の集中口撃を食らって、撃沈していったが。


 レントってば、なんでいつもやぶ蛇するんだろうか?

 黙ってりゃいいのに。



 ボクが四人編成の方に分けられている理由。それはボクの精霊召喚にあった。


 精霊を呼び出して顕現化させるこの力は、パーティー枠が余っていないと効果を発揮しない。

 ハクが前衛として、カグヤがパーティー強化の(かなめ)だけに、出来たら二枠の空きは確保したいというのが、ボクの言い分である。


 パーティーとしてなら、最大で五柱(ごにん)召喚が可能だしなぁ。しかも、『ソロの方が動きやすい』まである。当然、口には出さないけど。


 まあ最大30人5PT参加出来る『小隊(レイド)編成』や、第二イベントの防衛戦で初めて適応されたというあらゆる制限や参加上限が存在しない『軍団(レギオン)編成』なんてモノもあるけど、どちらかというとボクは『軍団(レギオン)編成』の方が得意であり、また最大級の真価を発揮する職種(ジョブ)だったりする。


 マーリンさんの説明によると、ボクの精霊魔法は火力的に見ても、そこらの並の元素魔法使いより遥かに上。また精霊達を多数召喚出来るようになれば、一人『軍団(レギオン)編成』なども出来るんじゃないか? とも言われた。


 個別戦力で見てもそうなのに、ボクがいるだけでも自軍の戦力が極大化するとなれば、今後は集団戦に引っ張りだこになりそうな気がする。


 自分で思っていたよりも、この職は状況対応能力が優秀みたいだ。




 光の壁の向こうから、野次馬がこちらの様子を見守っていた。

 周囲の人を見渡せば、自信に満ちた熟練者らしき人や、不安な表情を浮かべる初心者装備のままの人達の姿も見てとれる。


『──時間ですわ。この場にいる皆様方には、これより主が創造された平行世界へと転移していただきます。詳しい説明は転移後に行いますわよ。

 少し乗り物酔いをしたような感覚を受ける方もおられるでしょうが、実際の体調への影響はございませんわ。

 行きますわよ。10、9、8……』


 カウントが始まるのを聞きながら、ボク達は転移の衝撃に備えておく。


『――2、1、0』


 視界がぐにゃりと歪んでいき、バランス感覚がおかしくなったかのような錯覚を覚え、思わずしゃがみこみ手を地面に付いてしまう。


 うぷっ。なんか気持ち悪い……。


「セイ君っ!?」


 突然襲ってきた吐き気に、しゃがんだまま口に手を当てて耐える。そんなボクの背中をさすってくれるユイカと共に、気持ち悪さに耐えていたが、何事かを呟いたティリルの手が背中に触れたのを感じた瞬間、波が引いていくかのようにすぐに良くなった。


 みんなの状況を聞けば、よろけたりしていたくらいで、気持ち悪くなったりはしていないという。

 なんかずるい。


「セイくん、大丈夫?」


「なんとか……ありがとうね」


「感覚の敏感な人ほど転移酔いしやすいから。しかも初めてなら尚更だし。慣れたら大丈夫になるよ」


 そう慰めてくれる。


「それにしてもここどこだろ?」


「分からん。他の人達は……アーサーさんのチームはどこに行ったんだ?」


 レントがきょろきょろとあたりを見回していた。

 ボク達がいる場所は、森の中にある小さな広場の中だ。離れた位置に何組かのパーティーがいて、ボク達と同じように周囲を見回していた。


「ここまでバラバラに転移されるか。一体どうなって……」


 レントがそう呟いた時、再びアナウンスが流れる。



『──今あなた方がいる場所がスタート地点よ。そこから目的地『ルーンヘイズ』の街の冒険者ギルドに、ある書簡を届けに行くのが今回の任務(クエスト)ですわ』


『あなた達がおかれた状況は、こう。

 ──王都プレスの冒険者ギルドにて、エインヘリア帝国にあるルーンヘイズの街への極秘輸送任務を受けたあなた達。街道を旅していたら、何者かの襲撃を受ける。何とか撃退したものの、襲撃犯どもの最後の抵抗で、今いる場所に強制転移させられた。

 現在地を特定し、目的地に向かうこと。期限は残り六日』


 ずびしっと、こちらを指差しながら宣言する精霊女王(エターニア)様。

 あ、ドヤ顔してる。なんか可愛い。


 けど、エインヘリア帝国って、隣の国じゃなかったっけ?

 プレシニア王国からは、結構山越えがあると聞いたんだけど、時間足りるのかなぁ?

 いつか行くことになった時の為に、地図は手に入れておきたいし、王国じゃ手に入らない目新しい食材とかも買えそうね。


 けど……これって。


「……なあ、これってハイキングじゃないよな?」


 ぼそりと呟くレントに、頷くボク達。


 これって、道中に襲撃されそうだよ?

 まったりハイキングするどころか、追っ手を警戒しながら、旅をしないといけないじゃないか。

 


『この森を抜け、街道を東に進めば、小さな村がありますわ。そこで情報収集するなり、無視して進むなり、あなた方の自由ですわよ』


『ギルドに書簡を渡し、街のポータルに触れたらクリアとする。触った時点で、採点はストップされる。後は終了まで自由行動可能。買い物し放題』


『評価採点は、ポータルに触れるまでのあなた方の行動よ。この世界は精霊世界(エストラルド)とリンクしていませんから、何をしようと本来の世界に影響はありませんわ。

 ただし、いいも悪いも、その行動が評価点に影響があると思ってくださいまし』


『配達スピードも評価の一つ(・・)だけど、それだけじゃない。よく考えて。

 評価順位は、『PTパーティー』部門と『個人』部門がある。『PT』部門は平均点になるので、六人PTの方が有利とかではない点に注意』


『そうそう。出現する魔物ですが、主の御力によって本来のモノと入れ替わっておりますから、ご注意下さいませ』


『ルーンヘイズの街は、この世界でも有数の温泉街。今この時をもって、『入浴及び沐浴』の解禁を行う。入りたければ、急いで行くといい』


 精霊女王(エターニア)様の温泉発言を受けて、周囲から大歓声が上がっている。

 遠くの方から叫んでいる声が聞こえてくるし、木立で見えないだけで、周囲に結構な人がいそう。


 けど、入浴か。

 最後のアップデートが解放されたみたい。これは嬉しいな。


 前回から、汗をかくようになってしまって、さっぱりすることが難しかった。

 ポータルログアウトしないと、身体の状態が継続しちゃっていたからね。これで、濡れタオルで身体を拭くだけの生活とは、ようやくおさらば出来る。


「やっと風呂か。長かったな」


「セイ君、ティリル。後でみんなで一緒に入ろ♪」


「ふえっ!? ユ、ユユ、ユイカ大胆過ぎるよっ!

 で、でもセイくんが望むなら……」


「ボク達は水着強制着用だからね!? 分かってる!?」


 いきなり真っ赤になって、なに口走るのさ!?

 ボク達は外せないから、ジャグジーだと思えばいいんだよ。



『──最後に注意事項。

 道中力尽きた場合、一度だけ復活することを選べる。その場合は大幅な減点が行われ、スタート地点に戻される。

 復活を望まない場合は、その時点で採点は終了。時空の狭間にて、全員の終了を待つことになる。減点されても続けたいか、その点数でクリアするか、よく考えて選んで欲しい』


『それと、あなた方の力の一つである『掲示板』と『メール』に制限が掛かりますわ。別の並行世界へは連絡できなくなりますので、注意して下さいませ』


『以上をもって、事前説明を終了。これより試練クエスト〔あの山を越えて逝こう〕を開始する。

 あなた達の健闘を祈ります』


 その言葉を残し、二柱ふたりの姿が消えていく。


 さあ、無難に頑張っていこう。




夜勤連勤中につき、言い回しのおかしい部分や誤字等がありましたら、夜の手空きにでも修正します。

既に半分寝てますので、下手に文章弄ると危険w


書き貯めをする時間がなかなか取れず、苦戦中です。そのせいで、何かあると今回みたいに、投稿が結構空いちゃいますね。

時間がもっと欲しいわぁ……一日30時間くらいにならんかな?

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