3話 キャラメイキング
キャラメイキング回です。説明が多くてかなり長くなりましたが、ご承知おきください。
改稿
3/30 語呂が悪いので『ST』の表示を『STR』に変更しました。
最終ステータスの所持スキルを、系列ごとに並べ替えました。
ルビが抜けてる部分及び見づらい部分を改行処理を行いました。
4/3 姉弟発言の下りを一部変更しました。
4/5 AGIに修正。理玖の感想(機会音声部分)を一部追加。細かな間違いを修正。
5/14 スマホで読みやすいように、また一部加筆しました。またエレメンティアの髪型を少し修正。
さて、ログイン可能時間になった。
チュートリアルを終わらせたら、始まりの街にある中央区の噴水広場で待ち合わせしよう、ということになってるので、急いでVRデバイスを被りバイザーを下ろしログインを行う。
もちろん必要なユーザー情報や体型スキャン等の設定は昨日に済ませている。あとはプレイヤー名を入力して、キャラメイキングを開始するだけ。
微かなログイン音と共に、真っ白な空間に出る。天も地もないのに、普通に立ってるのは変な感覚だけど、そのうち慣れるかな。
──と、無機質な女性の声が響いてくる。
「あなたの名前を教えてください」
「名前はリク、で」
「本名と同一音です。その名前は使用できません」
「あれ?」
どうやら本名は禁止みたい。
リアルバレ防止の一環として、本名は使用できない設定になってるのかな?
ただ、ゲーム内での同姓同名はOKのようで、ダブってもいいみたいだった。
「うーん……じゃ、聖──いや、カタカナで『セイ』で」
考えるのが面倒になったため、大好きだった祖父の名前を拝借してカナ読みに変える。
「『セイ』ですね。これより質問にお答えください」
と、樹の情報にあった通り、キャラメイキングに必要だと思われる、好きな武器の種類とか好きな属性とかの質問が続き、それに答えていく。
普段やってる趣味とかお気に入りの色とか好きな食べ物とかも聞いてくるけど、何に影響するんだろうか?
問題が起こった時の状況別行動についての質問とかもあったし、確かに心理テストみたいだなぁ。
「最後に……あなたにとって、『自然』とは何ですか?」
「あるがまま。ただ存在し、すべてを包み込む母親のようなもの、かな?」
幼い頃からこれだけは変わらない、自然の中でその空間の息吹を感じながら佇むのが好きなボクは、そんなちょいと洒落た答えを返してみた。
瞬間。
光で目の前が真っ白になり。
「ハーイ、お待たせぇ♪」
一人の少女が宙に浮いていたのであった。
輝くような黄金色の長髪。整った顔立ち。
後ろ髪を結わえてダウンスタイルにした髪型と、純白の生地に金刺繍の入ったゴシックドレスのようなデザインの服を着ているせいか、どことなく高貴なイメージがあった。
「ようこそ、精霊世界へ。この私がキミの担当精霊になったエレメンティアよ。よろしくね」
何がうれしいのか、テンションの高そうな声が耳に届いてくる。
「うわぁ、なんか可愛いコきたぁ。私の初めてをキミにあげる♪」
は? なんてこと言いますか、このひとは。
「……ええっと、エレメンティアさん? 初めてってなにがですか?」
なんか間抜けなこと、聞き返した気がする。
「ここのガイドに初めて呼ばれたのよ。
──実は今まで一度も呼んでもらえなくてね。ようやくキミにご指名もらえたって訳。おねーさん嬉しいから、サービスしちゃうわよ♪
あ、それと私に『さん』付け禁止ね」
どうやら、レア担当精霊を引いたらしい?
でもなんか無理して明るい声を出してるっぽい感じが?
「わかりました。お願いします」
無難に受け答えしておく。
もうノリ悪いわねぇ、とかぶつくさ言いながらも、彼女は宙に出現させたパネルを操作し……。
「まず、あなたが私達の世界に転生するための現身を作成するわね。目の前のパネルにタッチしてみて?」
彼女の指示に従ってパネルに触れると、現実そのままのボクの全身が目の前に現れる。
「ここから君の好きなように変更して。
ただ、顔の造形とか体型はほとんど変更できないから注意してね。唯一顔の彫りは多少いじれるわ。
過去のデータによると、大抵の人は肌の色と瞳の色と髪の色、そして髪型をいじるわね。この3つが違えば、印象は大きく変わるから」
言われて色々いじってみる。
色々変えてみたけど、髪色は青みがかった銀髪にして、リアルではできない長髪にしてみる。前髪は現実とは違い少し短くしてサイドに流し、瞳を露出させる。
なお、額の傷は消せるということなので、消してもらった。
「リアルで刀傷みたいなのがあるってどういう人なのかな? なのかな?」とかツッコまれたりもしたけど。
鍛錬中の事故ですと、無難に誤魔化しておく。
肌は髪に合わせて少しだけ色白に、瞳の色は無難に薄めの鳶色にしてみた。
赤や紫、エメラルドといった色も試してみたけど、ボク的にしっくりこないのよね。なんか合わない気がする。
なお顔の造形についてはなんにも弄らないでおく。面倒くさいし、そこまでしなくてもいいだろうし。
「──なんか普通に美少じ……少年だねぇ」
まって。今何を言いかけた?
だったら長髪止めたらいいじゃないかという案は却下。
ゲーム内で髪型変えたりできるそうなので、やっぱり普段できない事を色々してみたい。
一度ロングヘアーってのをしてみたかったんだよね。
ともあれ完成したんだけど、なんか……。
「なんだか私と髪色違いの姉弟に見えてしまうくらい似てるわね。何故かしら?」
「……たまたまですよ」
「不思議なものねぇ♪」
クスクスと笑いながらいう彼女の言動に、照れながらも憮然とした表情で返しておく。
ほんとは中の人がいたり? さっきからAIとは全く思えない。
「次はお待ちかね。種族の決定よ。基本は普人種だけど、ランダムスロットで別種族への転生の可能性を増やせるわよ。挑戦してみたい?」
再度確認をすれば、普人種というのは何でも適性のある、悪く言えば何の特徴もない普通の種族だという。
基礎ステータスはオール10と平均的。当然、種族ボーナスもなし。
ただし、樹のいう通りゲームを進めて行けば色々と可能性のある種族らしい。
また、特徴のないという事は、何でもできるという意味の裏返しでもある。
ただ、ボクは別種族とやらに興味があったので、普人種を選ばずに、種族スロットで出たのを選択しようと思う。
「ルーレットスタート♪」
少々気の抜けた掛け声と共に、中空に現れたパネルの中のドラム型スロットが回転し……。
そこに表示されたものは。
「ぱんぱかぱーん♪
おめでとうございます。レア種族を含む次の5種族が当選したわよ」
……ちょいと見てみよう。
1つめ。『草原妖精種』
自然と共に生きるいわゆる草原に暮らす小人族。手先が器用で素早いのが特徴。身長制限がある。
──取り敢えず却下。
2つめ。『高位山精種』
説明不要な山の民、山精種のレアクラス。もちろん身長制限あり。上位版の為、少し優遇されてるらしい。男性体は髭が生える。
──髯……あのアバターに髯ってどうなんだよ。
似合わないので却下。
3つめ。『獣人種・兎』
もふもふ。なお、獣の割合は設定可能らしい。最低でもうさ耳と尻尾はつくらしい。
──想像する。なんだかめちゃくちゃ可愛い自分が見えた。
確かに兎とかモフモフな子達は好きだけど、自分がバニーさんになるのは絶対ダメ。
4つめ。『海人種』
水中ではボーナスがつく、水中特化種族。陸の上では逆にステータスがダウンする。
──陸上生活キツそう。それに海が苦手なボクにはきつそう。
5つめ。『古代森精種』 森精種のハイレアクラス。魔法と精霊の親和性に最大補正。精霊の影響を大きく受ける。
種族的に基礎体力はあまりないそうだが、さすがはハイレアクラス、ないといっても普人種レベルはあるそうだ。
ええっと、5番一択だな。
森の中で自然や精霊と共に過ごす種族。うんボクにぴったりじゃないか。
ボクの中でそれしかないため、種族説明を途中で見るのをやめる。それ以上読まずに決定。
「えー、おねーさん、セイ君のたれ耳兎見たかったなぁ」
やめてください。羞恥心ぶっちぎりで人前に出れません。
ゲーム内で引きこもりになりたくないです。
しぶしぶといった具合で彼女が手をかざすと、左右の耳が長くなる。って、ほんのり垂れてるような? ちょっとっ?
「これがキミの古代森精種のデフォルトよ。可愛いからいいじゃない?」
そういうものだろうか? 何か誤魔化された気がする。
「職業とスキル選択行きましょう。ささ、初期種族スキルと初期職業スキル以外で、5つのスキルを設定してね」
結構時間が経ってしまってる為、急いで設定していく。
魔法なんてリアルで使えるわけないから、使ってみたい。種族的にも魔法主体だし丁度いい。
ボクの設定はこんな感じみたい。
名前:セイ
種族:古代森精種 種族レベル:1
職業:無職 職業レベル:1
HP:110/110(VIT×10+種族レベル×10)
MP:155/155(INTとMNDの合計×5+種族レベル×5)
STR:10(筋力・装備重量)
VIT:10(体力・フィジカルバッドステータスに影響)
AGI:10(身のこなし・攻撃力に影響)
INT:15(魔法効果・MP管理)
MND:15(魔法効果・MP管理・メンタルバッドステータスに影響)
DEX:10(生産系・攻撃補正)
BP:10
SP:0
これにBP (ボーナスポイント)を振り分けて、職業とスキルを選択して、と。
名前:セイ
種族:古代森精種 種族レベル:1
職業:精霊魔法士 職業レベル:1
HP:110/110
MP:200/180(+20)
STR:10
VIT:10
AGI:12(+1)
INT:18(+2)
MND:17(+2)
DEX:13
BP:0 (カッコ内数字は職業補正)
うん、いい感じ。で、これが初期種族スキル。
〔精霊眼(森羅万象)〕古代森精種専用の種族スキル。
別名水晶眼とも言われ、発動時、蒼く透き通るような瞳となる。万物を見通し、世界を知り、人ならぬものの真理を見通す。
鑑定系の最上位。
なんかすごいのがあった。流石はレア種族。
レベル表記がないということは、鑑定失敗はないということかな。
こちらが職業スキル。
〔精霊魔法〕精霊に助力をお願いして行使する魔法。
元素魔法とは違い、決まった型を持たないのが特徴で、イメージ次第で無限の広がりを見せる。
レベルが上がるごとに様々な効果が上がる。
精霊魔法はイメージ通りに現象を起こせる。
その説明に、楽しそうだから取ってみた。これ一つですべての属性を使いこなせるみたいだ。
もう一つの属性攻撃の元素魔法の説明読む限りでは、適正レベルまでスキルを上げた後、力ある魔法書というものを手に入れてその魔法力と魔法陣を取り込まないと、新たな魔法を覚えないという面倒さがあった。
複数の属性を使おうと思ったら、その分SPを消費しなければならないことからも、元素魔法士の職業の選択を避けた。
残りのスキルをリストから選んでいこう。
ただ、初期取得できないスキルなのだろうか、いくつかは暗転表示で選択できなくなっていた。
なんで〔鍛冶〕とか〔採掘〕とか選べないんだろうか?
選ぶ気はないけど、よくわからないなぁ。
で、選んだ5つのスキルがこれ。
スキル
〔INTアップ〕〔気配察知Lv1〕〔採取Lv1〕〔調合Lv1〕〔料理Lv1〕
〔INTアップ〕INTの値に補正。現在値にスキルレベル/3(端数切り上げ)をプラス。
〔気配察知〕動くものの気配を察知する。
後は彼女と相談した結果、序盤での金策の為にポーションが作れるようにと、採取と調合を。
そして満腹度が設定されてる為もあるが、どうせならおいしいものをたくさん食べたいという理由で料理を取った。料理自体は得意だし、結構好きだしね。
それにレベルが上がってSPがもらえれば、スキルは後からでも追加できるし。
で、装備効果とスキル効果も含めた最終的なステータスがこれ。
名前:セイ
種族:古代森精種 種族レベル:1
職業:精霊魔法士 職業レベル:1
HP:130/110〔+20〕
MP:220/200〔+15〕(+5)
STR:10〔+1〕
VIT:10〔+2〕
AGI:13
INT:20〔+2〕(+1)
MND:19〔+1〕
DEX:13
BP:0 〔カッコ内数字は装備品補正〕
SP:0 (カッコ内数字はスキル効果補正)
所有スキル
種族系:〔精霊眼:森羅万象〕
職業系:〔精霊魔法Lv1〕
補佐系:〔INTアップLv1〕〔気配察知Lv1〕
生産系:〔採取Lv1〕〔調合Lv1〕〔料理Lv1〕
装備:初心者の杖 初心者のローブ 初心者のブーツ
持ち物:携帯食×10 初心者ポーション×5 お試し調合キット お試し料理キット 始まりの街の地図
所持金:5000G
満腹度:100%
称号 :なし
BPは、基礎ステータスを上げる際に使用するポイント。
SPは、新しいスキルを覚えたり、カンストした下位スキルを上位スキルに格上げしたりするときに使用するポイント。
どちらも種族レベルと職業レベルが上がったときに、各+2ずつもらえるそうだ。
「んじゃ最後に、さくっとチュートリアル行っちゃう?とは言っても、基本的なものだけど」
「お願いします」
チュートリアルは大事だよね。
チュートリアルは言葉通り簡単なものだった。
ステータスメニューの使い方、スキルの使い方、生産のやり方、倫理コードの種類と意味を軽く教えてもらっただけ。
どっちかというと、ゲーム内雑学の方が多かった。
デスペナルティの仕様も教えてもらった。HPがなくなると、蘇生可能時間が減少していく。その際、現身の損壊状態によって、制限時間が違うそうだ。
その間に蘇生できなかったら、所持金の半分を失って強制ログアウト。
その後すぐログインしなおしても、ゲーム内での4時間のステータス半減効果がつく。アイテムや装備をロストすることはないそうなので、そこは安心設定になってるようだ。
更に、マイホームやクランホームを作成すれば、貯金もできるそうなので、まずはそこを目指すといいらしい。
ゲーム内4時間ということは、リアル時間で1時間ということ。
つまり軽く気分転換してくださいね、または、周りから死に戻りと通常ログインのどっちかわからなくさせるという運営の優しさ?
よくわからないけど、そう勝手に解釈しておく。
「後は実戦で頑張ってね。戦闘も種族レベル10を超えるまではデスペナルティがつかないようになってるから、ガンバッ!」
「ありがとうございました。エレメンティアも元気でね」
「ありがとう。
──いってらっしゃい、そしておいでませ精霊世界『エストラルド』へ。キミの往く道が、幸せに満ちたものでありますように。
またキミと出会えるのを心待ちにしてるわ」
ボクの視界から、彼女の姿が薄れて消えた。まわりの空間も塗りつぶされるように消えていく。
その時、ふわり、と優しくなにかに抱きしめられたような感覚と、甘く、けど優しげな心地好い香りに包まれたと同時に、ボクの意識も薄れていき……。
「……ますぐ…………なた……でい……………………」
もの悲しげな彼女の声が遠くから聞こえた気がした……
ピコンッ!
キャラメイキングにて特殊条件を満たした為、称号〔精霊王女の祝福〕を獲得しました。名称はログより秘匿されます。
すべての条件を満たすまで、『??????』と表示されます。なお解放されるまで、名称確認及び効果は発揮されません。




