22話 魔法少女と精霊の懐刀
(;´・ω・)なんかバレバレのタイトルでスイマセン。一部軽いですが、男←→女表現あります。
7/27 加筆修正しました。
暖かいモノに包まれながらも自分の身体を作り変えられるような感覚が通り過ぎ、慣れ親しんだ世界が戻ってきた。
いや違う。
両足から伝わってくるふわふわとした、どこか頼りない足場に疑問を感じ、ボクは静かに目を開けた。
驚いた顔でボクを見上げる4人の視線……。
――って、見上げる!?
慌てて辺りを見回す。
どうやらボクは部屋の中空に浮いてしまってるようだった。
全身が薄っすらと黄金色の光に包まれており、動くと黄金の燐光がハラハラと舞い散り、消えていく。
『エフィ?』
問いかけるも、返事はない。
ちょっとパニックになりかけたが、再び暖かな感覚がそっと強く全身を包み込んだ。
『……ここにいるよ。大丈夫落ち着いて』
声は聞こえずとも、そんな意思が心の奥底から伝わってくる。
その声に安心したかのように、ボクは落ち着きを取り戻し、同時に冷静に周りの把握を出来るようになった。
視界の端にMPのゲージが見える。そのゲージが1秒ごとに1ずつ減っていっているようだった。
これが制限時間のかわりである事は間違いないだろう。
多分スキルレベルが上がれば緩和されていくんだろうね。
現在のボクのMPの最大値は537だから、最大9分間かな?
さっきエフィを顕現化するのに使ったから、今の精霊化は最大5分半という事になる。
何もかもが感覚が違う。
ふわりと中空を漂っているのに、不思議な安心感がある。
ずっと見下ろしているのもあれなので、床に降りようとして……。
どうやったら動けるのか迷う。
と、頭の中にイメージが伝わる。
エフィがアシストしてくれているようだ。
忘れていた。この精霊化も精霊魔法の一つ。
すべてイメージで行使されるはず。
よどみなく動き、床に静かに降り立った。
黄金の髪がふわりとなびく。
どうやらエフィと同じ髪色になっているようだった。
「セイ君……なの?」
唖然とした表情で呟くユイカ。
みんなの心情を代弁してるかのようだった。
無理もない。
髪色から考えるに、エフィのような姿になってるかもと予想している。
「そうだけど。やっぱり変かな?」
「顔とか髪型とか耳とかは元のまんまなんだが、何というか……」
ん、あれ?
珍しいなぁ?
レントが突っ込みを言いよどむのは。
「鏡みせりゃわかるだろ。そこらへんに裁縫スキル用の鏡台あるじゃね?」
「……ほら、セイちゃんこっち」
マツリさんの手招きに従って、ふわりと宙をすべるように移動する。あ、楽だコレ。
その全身が映るような大型の鏡の前に立つ。
映し出されたボクの姿は、元々のエルフの容姿のままであったが、相違点がいくつか。
青みが僅かに入っていた銀髪が黄金色に変わり。
薄めの鳶色だった瞳は、精霊眼が発動しているのか、澄み切ったブルーサファイア。
そして少し体形が変わったのか、だぼっとしたローブの胸の部分が僅かに膨らんで……。
――はいっ!?
なにこの胸っ!?
そ、そういえば下半身にも何か違和感がっ!?
「ちょっ!?
なにこれ、どうなってっ!?」
「はいはい、セイちゃん?
ちょっと落ち着いてねぇ」
背後からぎゅーっとしがみついてくるマツリさん。
同時に背中の翼も包み込むようにボクを抱きしめてくる。
目の前にある翼からは、なんだか日向に向かって咲く向日葵のような暖かい匂いがした。
「少し落ち着いた?」
「……えぇ。まだちょっと混乱してますけど」
「じゃ、もうちょっとついでに失礼するわね。作る防具のサイズを合わせないとね」
と、今度は身体の各部位を測るように抱き着いてくる。「わわ。結構細いわね」という声が聞こえたが、聞こえないふりをする。
てか、抱き着くだけでサイズとかわかるんだろうか?
と、その時、視界のMPのゲージと数値が残り10になろうとしているのに気が付いた。
『急いで精霊化を解除して!
MPが危ないわ』
エフィの意思が響く。あ、ヤバい! 咄嗟に解除の意思を乗せる。
逆再生。
その言葉のような感じで、ボクから光の帯が剥がれていくように中空に消えていく。
しばらくしてボクの姿は元の男の姿に戻った。
危なかった。MPが0になると、意識喪失が起こってしまう。
効果はMPが1割回復するまでの気絶だ。ここで倒れるわけにはいかない。
それに、めちゃくちゃ身体が怠い。
これがステータス半減のデメリットの症状かな。
「あら?」
びっくりしたマツリさんだったが、「男の時のサイズも調べないとね」とそのまま継続する。
綺麗な女性に抱き着かれているとか、かなり恥ずかしいんですけど?
「マツリどうだ?」
「大丈夫。思ったより女性体と男性体のサイズが変わらないから、これくらいなら調整可能よ」
う。なんか男として見てもらえてないような感じが。
どうせ子供体形って言いたいんでしょ?
ちょっぴり落ち込む。
「意外と引き締まった体つきしててびっくりしちゃった。そういう子には、本当はぴったりした服装の方が見栄えがいいんだけど。
でも男女の変化で流石に胸元と腰回りのサイズが変わるから、ある程度ゆったりした服の方向でいくわ。
それに細身だからBOXシルエットタイプの服で、上からローブでボリューム感を出すような組み合わせがいいかも。
あと首元にアクセントでも……あら、綺麗な勾玉してるわね。それをベースに和装で考えようかしら?」
嬉しそうですね、マツリさん。
ただそろそろ解放してください。
さっきから鏡越しにチラチラ見える、ユイカからの氷の視線がキツイんです。
後の機嫌取りが大変なんです。
「んんっ。とりあえずどんなのかは分かったみたいだな。
……いくつか予定外な変化があったみたいだが」
「あれだろ?
精霊ってやつは全部女性だから、それに合わせて変化したって奴じゃねぇのか?」
「一昔前のアニメに出てくる魔法少女みたいだな。なんかこう喋る動物に出会って変身するやつ」
「いいな。『魔法少女エルフちゃん』ってか?武器をアニメに出てくるマジカル☆ステッキみたいなタイプにでもするかぁ?」
二人ともなんてことを。
わ、笑い事じゃないよ。
脳裏に星形のステッキを振り回すボクの姿が見え……。
――変に似合っていて納得してしまったボクは、もう色々と終わってるかもしれない。
「てことは、今後このスキルを手に入れたやつは全部女性化するのか?」
「セイ君なら可愛いだけだけど、ムサいおっちゃんがそのまま女性化して誰が楽しいの?」
「……言うな。変に想像しちまったじゃねぇか」
あー。それについてなんだけど多分あれのせい。
多分エフィが元素の精霊だから、身体を精霊基準に再構築かけたからなのだろうと。
さっきの静止思考加速空間の出来事を説明すると、みんな納得のいった表情を浮かべた。
「やっぱりお前らしいわ。少しは考えろよ」
「う。まあ何とかなったし」
「ってぇことは、おまえさんだけの特権か」
「よかったわねセイちゃん……よかったのかしら?」
「てか精霊の嬢ちゃんはどうなってんだ?
彼女もペナ中か?」
そういえば姿が近くに見えない。いつもは待機状態の精霊眼でも見えるのに。
最大活性して、ようやく彼女の姿が見えた。
『どうしたの? 大丈夫?』
『……そうね。ちょっと疲れちゃったのかも。
恐らくだけど、ふたりとも初めての精霊化だったから余計に負担が身体にかかったのかな?
すぐに慣れると思うから、セイは気にしないでいいわ』
無事でよかったよ。
ただ慣れるまでは大変そうだなぁ。
「……とりあえずこんなところだな」
まだコードを交わしていない者がフレンドコードの交換を終わらせた後、一旦冒険者ギルドの受付に戻り、レントがクラン設立登録を行っている。
最低1PT分の6人いれば登録が可能らしい。
ホントは一人足りないんだけど、なぜか顕現化したエフィで補えた。
なんていう裏技。
あ、顕現精霊はPTメンバーにカウントされるからか。納得。
クランリーダーはもちろんレントだが、サブリーダーに源さんとなぜかボクが決まった。
「なんでボクなんかが?」
「そういうな嬢ちゃん。実質リーダー補佐だけのお仕事だから楽だぞ?」
う。また嬢ちゃん言われてるし。
源さんもつい口に出てしまったらしく、気付いてスマンと謝ってきたけど、慣れるまで言われ続けそうだよ。
定着しちゃったらどうしよう。
「クランホームってやっぱ王都まで行ってから作るのかな?
それともここに?」
「クランホーム設営はクランランクを上げないと、設営自体が無理だからな?
しばらくは宿住まいだ。こっちでも寝ないとキツいし、寝不足ペナつくからな」
「俺たちは生産部屋にこもるぞ。思いがけず毛皮とか羽毛が大量に手に入ったし、お前らの装備を作らにゃならん。いらんもんや練習の既製品を売りながら、必要なものを揃えていく方向でやる。
何かあればすぐ連絡入れてくれ」
「オッケーだ。まずは資金集めも必要だな。
──手分けするか。俺は一人で行動するから、ユイカとセイは二人で動いてくれ」
資金集めってあれでしょ?
ひたすら敵性モンスターの討伐を繰り返しては、素材を売ったり、討伐証明書を提出してお金を貰うやつの繰り返し。
多分ボク一人の方が動きやすいと思うんだけど?
「お前ひとりにしたら、次にまたなにやらかすかわからんからな?
ユイカがお目付け役だ」
「……ヒドい」
グレルヨ?
「──というのは冗談だ。ユイカのレベル上げ手伝ってやってくれ。こっちは色々動かないといけないからな。ユイカもそれでいいな?」
「オッケーだよ」
「という訳で、頼んだセイ」
「頼まれました」
ユイカと二人っきりってのも、なんだか久しぶりかな。なにしようかなぁ?
っと、そういえば。
「そういえば、クラン名何にしたの?」
ちょうどその時、源さんとインベントリーの素材整理のやり取りをしてて見てなかったのだ。
「今さっきユイカとも話し合ったんだがな」
レントからクランメンバーのプレートが転送されてくる。そこには。
──【精霊の懐刀】 ランク:E ──
とあった。
あー『懐刀』ね。確か懐の中に持っている守り刀の事を言うんだっけ?
精霊と共に生き、信頼のおける仲間となるようにって願いを掛けたのね。
「とりあえずつけてみた。不服が出たら変えようかと思うんだが、どうだ?」
「なかなか洒落た名前つけるじゃねぇか。いいぜ」
「それでいいわよ」
「ボクもそれでいいよ」
このクランが、そして集う仲間たちと共に、この世界にとって意味のある存在となるように。
さぁ。
クラン『精霊の懐刀』始動だ。
あらすじの○○○○は魔法少女でした。後日あらすじを編集加筆をしていきます。
精霊化で女の子になりましたが、本人最初は混乱するけどあっさり流して適応してます。彼の深く考えていない性格がここにも。
正直男の子のままで魔法少女するか最後まで迷いましたが、ストーリー設定上やむを得ず限定的に変化させる事にしました。
クラン関係のTIPSはいくつか情報がでたあとで、と思ってますが、TIPSなしでも出来るだけ分かりやすくしていきたいですね。
分かりにくい部分の突っ込みあれば、TIPSを追加するかもです。




