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彼の特殊な精霊事情  作者: 神楽久遠
出会いから始まる物語
20/190

20話 ボクの特殊な精霊事情


「じゃその後の話を続けていいかな?」


 レントと源さんの話が一段落したのを見て、声を掛ける。


 検証がどうのこうのとかデータがとか言ってる二人。

 その姿をみて、レントが別ゲームで出会った際になんか意気投合したと語っていた事を、ボクは思い出していた。


 見た目も言動も違うのに、何かにこだわったり、納得がいくまで調べたりする性格というか本質がそっくりだよ、この二人。



「あぁ、続けてくれ。

 ──そういえば朝方にメール来たな。あの時に〔御子〕が出ていたのか?」


「いや、その時は〔精霊魔法師〕と〔精霊の守り手〕の二つしかなかったよ。

 ちょっと詳しい経緯(いきさつ)は省くけど、お昼頃に彼女と出会ってからアナウンスが来て選択肢に出てきたんだ」


 チュートリアルで出会った精霊王女のエレメンティアが仮眠から起きたら側にいてビックリしたよ、と笑いながら伝えたんだけど、何故かみんな押し黙った。


 あれ、なんか変なこと言った?


「上級精霊……しかも精霊王女は、そんなお気軽に訪ねてくる存在なのか?」


「頼むから俺に訊くな。分かる訳ねぇだろ……。

 ――これもなんかの補正があったんか?」


「チュートリアルでその彼女と何かあったのかしら?」


「また病気が始まった。セイ君のたらし」


「ちょっ!? 酷くない!?」


 みんなからいわれのないバッシングを受けてへこむ。

 ちょっとみんな、酷いよ。



 何とか気を取り直して、説明を続ける。


「で、話していたらこれから一緒に旅をしようと、そんな話になって『真名』を教えて貰えたんだよ。

 ただその真名はちょっと呼びにくいし、他の人には発音も聞き取りも不可能らしくて。

 紹介しやすくするために、愛称で呼ぶことにしたんだ。

 そしたらなんか称号に『王女の寵愛』が手に入って、なんか特異職(ユニークジョブ)がこうピコンと……」


 あーもう、説明がしにくいな。

 全部の経緯を言うのは恥ずかしくて誤魔化しているから、余計に変な説明になっちゃう。


「ちょ、ちょっと待て待てっ!

 意味が分からん。一気にしゃべらずに落ち着いて話せ。

 それは試練クエストか何かが発生したとかじゃないのか?」


「普通にあの精霊ひととおしゃべりしてただけだけど?」


「なんでそれだけで一緒に旅する事になったり、真名を教えて貰ったりとか、精霊の加護が上昇したりするんだよ」


「さぁ?」


 こてんと、思わず首をかしげる。

 その様子に、レントが頭を抱えて机に突っ伏した。


 なんかオーバーなリアクションするなぁ。


「まあずっと一柱(ひとり)でいたらしいし。

 これからは一緒にいていい? って聞かれたんだ。一人だとやっぱり寂しいでしょ?」


 この精霊ひとをこれ以上独りにしちゃ駄目だ。

 そう思ったんだ。


「それで真名マナを教えて貰った経緯いきさつなんだけど、さっき言った理由で呼びにくかったから『エフィ』って呼ぶことに決めたんだけど、その時にワールドアナウンスが入ってね」


「……なんとなくわかった気がするわ。ユイカちゃん、日頃から結構苦労してるんじゃない?」


「そうなんですよねぇ。もう半分諦めてますけど」


 なんだか二人にしみじみと言われてるけど、また何かやらかしたのかな?

 さっきから色々言われてるので、かなり不安なんだけど?


「ん? 今エフィとか言ったな?

 まさかあの時一緒にいた嬢ちゃんが精霊か!?」


「うん、源さんとマツリさんは会ってるよ。ボクも称号アナウンスくるまで、〔精霊王女〕だの〔元素の精霊〕だの知らなかったけど」


「その精霊ひとは今どこに?」


「ここにいるよ」


「「「「え?」」」」


 皆の声が綺麗にハモったのを見て、思わずクスッと笑みが零れる。


「今は顕現化をしていないから。実体のない霊体状態だから、精霊眼を持っていないみんなは見えないのだと思う。エフィの許可もさっき得たから、今紹介するね」


 立ち上がり、後ろを向く。

 スッと背後の中空に浮いていたエフィに、ボクは恭しく手を差し伸ばした。


 彼女は微笑みながらその手をとり。


 MPマナの喪失していく感覚に従って、ボクの手の先から溢れる光の奔流。

 周囲の下級精霊が活性化したのか、光が乱舞していく。幾何学模様の光の帯が幾重にも絡み付き、そして今、精霊の少女は顕現する。




 誰かの息を飲む音が聞こえる。


「随分と派手な登場の仕方をしたね」


「あら? 随分な言葉ね。

 キミ達の話の流れから、精霊らしい登場をしてね、と前振りされたかと思ったのよ。どうだったかしら?」


 いたずらが見つかった子供みたいにペロっと舌を出して笑うエフィに、ボクは苦笑する。


「初めまして、皆様。私が精霊王女の元素の精霊エレメンティアよ。『エフィ』と呼んで欲しいわ。以後よしなに」


 宙に浮いたまま、優雅にスカートの裾を指でつまんで一礼する。

 そんな彼女の周囲には燐光が薄っすらと瞬いており、幻想的な雰囲気を醸し出していた。



「……あら? やりすぎたかしら?」


 彼女の呟きに、みんなの方に振り返る。


 ぽかんと口を開け呆けた表情の源さんに、右手を口に当て驚きの表情を浮かべているマツリさん。

 その後ろの席には、こわばった表情のレントとユイカ……。


 ……。

 ――え? こわばった?


 思わずエフィと顔を見合わせる。



「レント? ユイカ?

 二人ともどうしたの?」


 ボクの問いにハッとした表情を浮かべて再起動したレントは、右手を額において項垂れた。

 音が漏れただけなのだろう、「マジか?」という呟きが、エルフになって敏感になったらしい耳に辛うじて届いた。

 その言葉の意味を聞こうとする前に、レントは横で同じように固まっているユイカの頭を軽く抑えた。


「んぎゅっ」


「ユイカ。いつまで固まっている?びっくりしたのは分かるが、そろそろ失礼だぞ?」


「お兄。だって……」


「あとだ。切り替えろ」


「……うん」


 なんだろう、この会話。

 なんだか違和感が。



「済まないな。あまりの事にびっくりし過ぎてしまって。

 あなたが精霊王女の称号を持つ元素の精霊のエレメンティア?」


「ええ、そうよ。でも『エフィ』で呼んで頂戴。

 ――いずれバレて騒ぎになっちゃったとしても、わざわざ私達の方から精霊だとアピールしたくないわ」


「了承した」


 ユイカの表情には少し影があるが、レントは至って普通に見える。

 さっきのは何だったんだろう、と内心思ったけど、レントがこれからの対応の事をエフィにあれこれ質問しているのを、ボクは横で黙って聞いていた。




 レントが特異職ユニークジョブである〔御子〕の詳細も聞きたがったので、順に教えていく。


 彼の話によると、現在掲示板で報告されている特異職ユニークジョブは、〔勇なる者ブレイバー〕と〔聖者セージ〕の二つのみ。

 共に種族は普人種ヒューマン

 しかも本人達がどうやってこれの取得に至れたのかを話したがらない為、全くわからないという。


 掲示板の情報だと、この職持ちの二人は勇者プレイが好きで色々やらかしていたらしいから、自身の行動が影響するかもしれないという仮説があるそうだ。



 で、めでたくボクが3人目のユニーク持ちという事で質問攻めにあってます。


 でも、〔御子〕の取得条件は分かりやすい。

 状況から『種族が古代森精種エンシェントエルフ』『職種が精霊魔法系』『盟約の種類が寵愛である事』の3つだと、レントは断言していた。


「こうなると、エルフで他の魔法系も多分あるな?

 問題は他の人も同じ特異職を取れるかどうかだが……」


 ブツブツと、なんだかレントが絶好調である。

 ボク達の仲間にエルフがいないのによくやるよ、ほんと。

 まあ僕の知らないことをよく知っているので頼りになるのだが、こうなっちゃうとレントはちょっと怖い。


 周りを気にせず突っ走ることが多々ある。でも何故か、いっつも辻褄合わせのように上手くいくんだけど。

 なんかずるい。



 まあ、それはさておき。

 ボクの手持ちのスキルも、彼なりの解釈で教えて貰った。

 こういうのはホント助かるね。ボクだけの意見だと、偏っちゃうから色々な意見は大歓迎。



 それによると。


 まず〔精霊顕現〕は、スキルレベルが一定以上上昇すれば、顕現時間と消費MPの倍率が減るパターンじゃないかとの事。


 いくら顕現の消費MPが固定だと言っても、エフィ一人で200は重い。

 今後複数の精霊を召喚できるようになる事を考えたら、そりゃ減ってくれた方が助かる。


 また、持続時間も伸びるんじゃないかとも言っていたが、今の所エフィを顕現していても途切れるような気配すらない。

 多分、〔寵愛〕だからなのだろう。



 そして〔精霊召喚〕の方は、ぶっ壊れスキルと言われた。


 アイテムさえあれば、状況を問わずどの精霊も喚べるようになるとか強すぎるという。

 コネクトの最上位と明言されているので、基本職で覚えられるのは、もっと先の上級職のスキルなのだろうとも。


 正直現在、精霊魔法士の道に進んだプレイヤーはほとんどいない。

 どこらへんで手に入るのか、予想をたてるのは不可能だそうだ。

 まあ特異職ユニークジョブだから早めに手に入ったんじゃないかと、軽く言われた。



 最後に、気になる〔精霊化スピリチュアル〕はというと、初めてのケースでどうなるか全くわからないとのこと。

 実戦でいきなり使うよりはまずやって見せてという事で、今この場で行うことになった。


 エフィに言わせると、顕現してても問題なくできるんだけど、そもそも男の人とするのは全くの初めてのことでどうなるか分からないという。

 そのセイ君が初めての人発言に、ひと悶着あったが割愛する。


 ……疲れるよ、ほんと。



「なんだかみんなに見られているのって、めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど?」


「これがもし戦闘中で、大勢に見られてるからと言って恥ずかしがってたら、シャレにならないことになるんだから慣れろ」


「そうだね。じゃあ行くよ?」


 エフィと手を触れ合わせ、わざと声に出して宣言する。


精霊化スピリチュアル!」


 その瞬間、エフィが光へと弾け飛び、ボクに吸い込まれて行った。





精霊化スピリチュアル初起動スタートアップ

 最適化の開始を行います』



『――通告。

 初回起動精霊が元素の精霊エレメンティアの為、盟約にのっとり、元素の力による更なる分解・特殊再構築が行えます。

 実行しますか?』



 静止した思考加速空間の中、YES/NOの選択肢が現れる。


 え?

 こんなのあるの?


 どうすればいいのかよくわからなかったけど、そりゃ最適化されるのがいいだろう。

 その意味するモノの正体が分からぬまま、ボクは迷わずYESを選んだ。



『受諾。

 ……設定完了。

 次回起動より、この工程は省略されます』

 


 その瞬間、再び目の前で光が弾け、身体が何か暖かいモノと一体化していくのを感じていた。 


後書きにコメントとTIPSを混ぜると読みづらくなるので、今までのTIPSを本文最後に入れようと思います。

また今後、誤字脱字、読みやすいように改行を編集した場合は、前書きに書きません(手直し多すぎて前書きがそればっかりになるのはよろしくないとの判断)。今から編集していきますので、改稿更新日時が変わる点、ご了承ください。


あと皆様にはバレバレなんでしょうけど、今は内緒の方向で。あらすじ一部の○を解放。

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