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彼の特殊な精霊事情  作者: 神楽久遠
変わりゆく日常の風景
185/190

180話 対策会議

お久し振りです。放置して申し訳ありませんでした。

活動報告にも書きましたが、少しずつ体調の方が戻って来ましたので、更新再開します。

(これからの更新方法は後書きに)


また今回の投稿に先駆け、様々な所を加筆修正してます。(165話など)

目次一覧で最終更新を見ていただければ分かるかと思いますので、よろしくお願いいたします。

(クラティスや神の独白などを含め、主人公サイドの事情や現状、背景、情報を多めに出す事にしたため)

 


──高辻樹──



「──ちょっと聞いて良いか? 美琴達はどうして……いや、どうやってここに?」


 二人のじゃれ合いが一段落したのを見計らい、口を挟む。


「帰宅中に清美さんから電話が入ったんです。学校に戻るように、って指示を受けて」


「私もそうね。そしたら変な地下施設に連れられて、小さい電車みたいなのでここまで来たという訳」


「うむ。瑠美るみも面白そうだからついてきたのである」


 いらっ。


「あぁ、分かった。じゃあ瑠美先輩。お帰りはあちらです」


 ドヤ顔の瑠美さんを見て妙に苛ついた俺は、先程の美空さんよろしく、出口を指差し言い放ってしまった。


「なんでよっ!? 私もちゃんとお呼ばれしたんだからいるんだってば!」


「え? マジで呼ばれたんですか?」


「ひどっ!? それにさっき顔合わせた時、「何でいるんだ? このアマ?」って顔してたよ!」


「いや、そんな顔してないです」


 ちっ、意外と鋭い。確かにほんの少し考えたからな。思考が漏れたか。俺もまだまだだな。


「絶対してた! 絶対裏で思ってた! この後輩、向こうの時より性格酷くないっ!?」


「あのなぁ。そうだな、あえて言うなら、御陵学園在籍年数では俺の方が『先輩』だし、転入してきたばかりで先輩らしい事一度たりともしていないのに先輩面するのはどうかと思うぞ?」


「うわっ。ねぇねぇ、弥生。聞いた聞いた!? 今すっごい暴言吐かれた!」


 あ、やべ。言い過ぎたか?

 思わず口が滑ってしまった。

 

 しかし困ったな。

 小型犬……じゃない、騒がしい猫みたいなこの先輩を弄ってるとやけに楽しくてな。ついつい言い過ぎてしまうんだよな。なんでだ?


「うー弥生~。頭押さえてないで何か言ってよ」


「樹君……」


「あー、すまん。つい口が滑ってな……」


 溜め息交じりの弥生さんの視線を受けて、俺は誤魔化さずにそう口にしたが、


「いい機会だから、この馬鹿猫娘にもっと言ってあげなさい。きっと反省は皆無だけど」


「二人ともひどっ!?」


 ブルータスお前もか!? とばかりに、愕然がくぜんと叫ぶ瑠美先輩。


「樹ちゃんが女の子相手にそこまで言うのは珍しいわね。お姉ちゃん初めて見たわ」


 うっ。


「いや、その。弄って欲しくて毎回ネタを提供しているのかな、と」


 俺の言葉を受けて、瑠美さん以外の皆の顔に納得の色が浮かぶ。


「みんなして酷い! このままじゃ瑠美の繊細な心のライフはゼロになっちゃうよ!?」


「「「繊細?」」」


 あ、全員ハモった。


「むぅー! そもそも向こうでも樹ちゃんは瑠美にだけは優しくないです。ここは早急に対応の改善を要求します!」


「なら、前から言ってるように、いい加減そのちゃん付けを止めろと……っと」


「ふみゃっ!?」


 思わず彼女へと手が伸びてしまったが、俺に掴まれる前にひらりと身をひるがえし、傍にいた弥生さんの背後にそくささと隠れた。


 それていて、その背から顔を半分出して「うーうー」唸りつつ、非難半分と幾ばくかの期待・・に満ちた目を向けてくるものだから、こっちとしては凄いやりにくい。本当に猫みたいだ。

 盾にされた弥生さんも困り顔である。

 

 ため息と共に再び手を額に当てた弥生さんは、


「樹君も災難ね。瑠美に本気で気に入られるなんて」


「──は?」


 耳がおかしくなったか?


「本気ちゃうもん! いつかぐーの音すらでないほど、ギャフンと仕返ししてやるんだから!」


「こう言うところよ。その……分かるでしょ?」


「えぇ、不本意ながら」


「またディスられた!? でもなんだろ、さっきから湧き上がるこの感情は……快感?」


「「Mか!?」」


 二人して思わず突っ込んだところで、背後からパンパンと手の叩く音が。


「はいはい。戦友となるみんなの仲が良いのは大変喜ばしい事だけど、今はそこまでにしてね」


 その声に振り向けば、清美さんと白衣姿の慎吾さんを伴って紬姫(つむぎ)さんが部屋に入ってくるところだった。


「適当な席に座りなさいな。これからあの異世界エストラルドの邪霊戦役と君達の事。そしてこれからの対策について意見を擦り合わせるわよ」


 え?

 理玖の事についてじゃないのか?


「あの、紬姫さん? 理玖の事についての……。

 いえ、回りくどいのは止めましょう。

 その話を始める前に、まずは紬姫さんが知っている御陵家当主の延命方法についての話を聞かせて貰いたいのですが?」


「お兄!?」


「んー? 確かにいきなりだね。

 で、それを誰から聞いたのかな?」


 おとがいに人差し指を当てて首を捻るも、


「──あ、そっか。犯人はお父様だね。樹君を孫の様に可愛がってたからなぁ。()()()()()でも()されてた?」


「ええ」


 俺が答えるより先に、すぐに正解を導き出した紬姫さんへ首肯する。相変わらず恐ろしく頭の回転の早い女性(ひと)だな。


「だけどその方法、無駄よ」


「え?」


「理玖ちゃんに教えても無駄。もう今となっては全く意味がなくなったし、そもそも同意するとは思えないしね。そればかりか必死で拒否ると思うの。それにお相手に優秀な回復系統の異能を持った男性が必要だしね」


「回復の異能? 男性?」


「あ、でもでも。もし樹君が回復系統の異能を発現させていたら、ワンチャンあったかもね。ほらあの子、樹君には無条件な信頼寄せてるもの。『そ、そこまで言うなら。もうこんなことするの、樹だけだよ』とか何とか言っちゃって……、きゃぁ! やだぁ!」


 ……はい?


「あの、それはどういう……?」


「あ、それを今聞いちゃう? ここで詳しく聞いちゃうの?

 でもでも、だーめ。理玖ちゃんに言うのならともかく、樹君には内緒にしたいなぁ」


 一人で勝手に盛り上がり回答を微妙にはぐらかしながら「私を何時だって優先してくれるあの人の研究のお陰で偶然判明した方法だし~?」と、でへへーとピンク色な思考と照れ笑いを周囲に振り撒く紬姫さんの様子に、俺はピンと来るものがあった。


 理玖が必死で拒否する方法である事。

 そしてその方法に、回復系統の異能を持つ男性が必須という事は……?


「──所謂いわゆる房中術のたぐいだ」


 急に背後から掛けられたバリトンの利いた声に、俺は弾かれるように振り返る。


 いつの間にそこにいたのか、スーツにコートタイプの白衣を纏った初老の男性が立っており、俺を静かに見つめていた。


 細身ながらもがっちりとした体格の持ち主でありロマンスグレーの髪を整えた巌のような顔をしたこの人は、理玖の父親で……。


「──郡司ぐんじさん」


「男性側が持つ魔力マナ)生命力オドを、女性側の生命の根幹である場所へと注ぎ込むと説明した方が分かりやすいか?」


 ああ、やっぱりそういう……。

 そりゃ理玖の奴は誰であろうと拒否反応起こすわな。


「ソコんとこ詳しく!?」


「食い付くんじゃないっ!」


「ぐえっ」

 

 いつもの如く漫才を始めた先輩方を意図的に無視し、何となくに嫌な予感がして振り返れば美琴と結依の奴が俺と紬姫さんの方をチラチラ見つつ、その頬を赤く染めていた。


 美空さんはその様子を見ながらニヤニヤし、清美さんは我関せずといったてい


 慎吾さんはそんな妻の態度に小さく嘆息し、海人さんは居心地悪そうな表情を浮かべている。


 そしてそんな皆の注目を浴びてしまった紬姫さんはというと、沸き上がる羞恥心からかプルプルと震え始めた。


「しかもこの方法は、男性側に異能の制御能力とマナの変換、技巧の習熟が求められてな」


 段々と空気が微妙な感じに変わっていく中、医学論文を学会で発表しているような淡々とした声色で、そんな空気を気にも留めていない郡司さんが説明を続ける。


「特に対象女性のマナの波長と肉体の波を合わせ……」


「あなた!」


 いつの間にか背後に回っていた紬姫さんが振り抜いたペーパー資料が、スパーンッと心地好い音を立てて郡司さんの後頭部に直撃した。


「む、痛いぞ。紬姫」


「言うな、って言った!」


「むぅ、詳しくと言われたから答えたのだが……」


「ダメ。そこ、座る!」


「分かった」


「──貴女達、何をやっているのかしら」


 一気に疲れましたという顔で光凰院(こうおういん)春花(はるか)さんが執事である三山木さんを伴って入室してくる。


「こんな場でいちゃつかない」


「いちゃついていません!」


「ハイハイ、分かった分かった。それは私達が帰ってからいくらでもやりなさい。

 さあ時間は有限、とっとと始めるわよ」


 パンパンと混乱しかかった場を、強制的に静めて見せた女傑の姿があった。





「――全員揃っているな? では始めるぞ」


「清美ちゃん。いつものアレ、お願いね」


「分かりました」


 最後に周囲を確認してきた清美さんが入り口のドアを閉めた後、紬姫さんのお願いに一つ頷くと、どこからともなくビー玉くらいの小さな水晶球を一つ取り出した。


「――我が石蕗つわぶき清美の名において命ず」


 その水晶球はどうやら清美さんの魔力で創られたものみたいだ。


 彼女が念を込めると同時にぼぅっと仄かに輝き出すと、何かの文字みたいな記号を水晶体の中へと浮かび上がらせた。


「――結起けっき


 その力ある言葉と共に砕ける水晶球。それと同時に部屋中に彼女の魔力が広がり、俺達を包み込むように展開するのが視えた。


「チョットした結界です。これで覗き見等は不可能になったはずです」


 俺達の問うような視線に気付き、清美さんはそう説明する。


「さて、エストラルドと御陵と十二家の関り合い、現状打破の対策会議を始めましょうか」


「あぁ。紬姫、俺から説明をする」


 机に両肘をついて顔の前で指を組んでいた郡司さんは、その言葉にすくりと立ち上がり、


「滑稽無形な話に聞こえるかと思うが、判明している史実だ。ただし聴く前に注意点を伝える。

 樹君を始め学生諸君。君達は初めてこの情報に触れる。血の運命(さだめ)に呪われ囚われて神の名のもとにいいなりになる可能性もあり、そうなりたくない者は今すぐ退出してくれ。我々は強要しない」


 またこれか。


「問題ないです」


「問題ありません」


「とうに覚悟済みよ」


 三人娘が即答するのを見て、視線を瑠美さんの方へ移す。


「樹ちゃんはどうするの?」


「六年前から覚悟済みだ。お前は?」


 言い方は悪いが、どこか金魚のフンのように付いてきただけのように見えた彼女に問い掛けたが、


「なら瑠美も一緒だにゃあ。葉月ねぇと兄ちゃんの事もあるし、それに……」


 にぱっと笑いながら、


「こんな面白いこと、瑠美だけ仲間外れは勘弁勘弁だよ」


「はぁ、素直じゃ無いわねぇ」


「うっさいなぁ。弥生はいつもそれだ」


「喧嘩すんな。

 ──郡司さん、気遣いありがとうございます。けど俺達に不要です。知らないまま、気付かないまま、アイツを一人で戦わせたりしないと決めたんで」


「──そうか」


 彼は瞑目する。


「では、説明を開始する」


 ありがとう。

 

 声にはならなかったが、そんな呟きが彼の口から漏れた気がした。

 

先ずは二年以上表記を消すために投稿しましたので、これからキリが良いところまで書き留めに入ります。

その後、一話ずつ連続更新、追い付き出したらキリの良いところで止めて書き留め……な感じでしていこうかと思っています。


今はまだ、あんまり頭を回すと睡魔というか頭痛と疲れが酷いので、時間の掛かる更新になりそうですが、ご了承お願いいたします。


神楽 久遠

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