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彼の特殊な精霊事情  作者: 神楽久遠
出会いから始まる物語
16/190

16話 気付いたら増えたりするよね?

おもったより料理部分が増えた為、2つに分けました。そのせいで少し短いです……。


6/10 加筆しました。

 その様子から、どうしても完成まで待てそうに思えなかったので、ビギンの街で買っておいた串焼きをひとまず手渡しておく。


 小声で「ありがとう」と答えた彼女に、


「すぐ作るから、もうちょっと待っててね」


 そう伝えた後、初級料理キットを取り出して目の前に展開させた。



 各生産スキルに対応する初心者用の本が売られていた中、料理本はお金が足りなくて手が回らなかった。

 本を見ずに、この世界で初めて調理をする事になったけど、ボクの中では全く気負いがない。


 要は現実と同じように作ればいいだけでしょ。簡単簡単。

 失敗しても作り直せば良いし、自分の知識量が広がるからね。

 失敗は、次の成功の母なのだ。



 のっけからレシピなしで調理に入る。

 料理台に横に付いていたケースを開けて、入っていた調味料を調べる。


 元からセットになっていた調味料は、塩と砂糖と片栗粉と胡椒と植物油。それらが申し訳程度にあっただけ。

 これじゃ全く足りない。


 あー。駄目だこりゃ。

 購入時に店員さんから『調味料セット付きです』と聞いて、ちょっとそれを鵜呑みにしすぎたかな。


 もっと色んな種類のモノが沢山入ってるものと、勝手に思い込んでしまっていたみたいだ。


 この後街に帰ったら、本格的に買い物をしなくちゃ。

 昨日大量に狩った狼と梟の素材とか、ついでに採取していた薬草や木の実とかが大量にあるから、それらを売れば(まと)まったお金が入るだろうし。


 今回は仕方ない。

 どっちにしろこんな簡易セットじゃ手の込んだモノは作れないし、単純なお肉のソテーにしよう。


 使うお肉は何にしようかな?

 インベントリーの機能を使い、手持ちの食材が分かりやすいように並び替え(ソート)を行う。上から順に眺めていく。


 当然ながら、まだ一度も調理をしていないので、料理スキルはレベル1のままだ。


 スキルレベルが足りない事による、強制失敗(ファンブル)が怖いので、ランクの高そうなお肉は避けよう。

 例の霜降り肉とか、暫くインベントリーの肥やしになりそうだなぁ。

 


 とりあえず、一番最初に手に入れた角兎の肉を取り出す。

 どんなお肉の性質か調べる為に、まずはユイカの火魔法で倒したときにドロップした『生焼けの肉』で実験をしよう。


 このまま焼くだけだと、焼きムラが出来てしまい分かりにくいので、生焼けて変色している部分を包丁でそぎ落としていく。


 あ、そうだ。

 そぎ落としたのに下味をつけて、油でカリッと竜田揚げ風にしよう。



 普通の角兎のお肉も準備する。

 軽く押してみると硬かったりしたところがあったので、すじが多いと判断する。


 出来るだけ柔らかくするために、包丁の背で出来るだけ叩く。本当は料理酒も欲しいけど、ない袖は振れない。

 

 塩胡椒のみで味付けをし、森で拾った聞いたこともない鳥の卵(精霊眼かんていで食用と出ていたから大丈夫だろう、多分)を、きっちり攪拌かくはん刷毛ハケを使って薄く塗り、片栗粉をまぶす。  


 初級キットに付随していた携帯設置型の魔導コンロというモノを取り出し、先に竜田揚げの準備を進める。

 火をつけてみるも、火力がかなり弱い。これじゃカリッとさせるのはキツイかな。

 この辺が初級キットの限界なんだろう。


 と、その時。

 ふと精霊召喚の事を思い出した。


 コンロのそばたきぎを作り、火の精霊を喚ぶ為の媒体とする。


「精霊さんお願いするね」


 薪の炎を媒介にしたボクの喚びかけに応じてくれた火の精霊がこの場に現出する。


 現れたその子に向かってお願いをしようとし……はたと気付く。


 どうやったらちゃんと伝わるんだろうか?

 まあ、いっか。失敗した所でもう一度挑戦したら良いだけだ。


 普段使い慣れている家のコンロのイメージを脳裏に描き、魔力と共に念話で送る。


 あ、成功してる?


 その子は魔導コンロの火力を壊れない程度に調整して、きちんと出力を上げてくれた。


「ありがとね。

 ──うん、このくらいで大丈夫だよ」


 小さな茜色の光が瞬いている。

 その子から「どう?」という問いかけを感じ取り、更に細やかな調整をしてくれた茜色の精霊に丁寧に礼を返す。


 そのこはとても嬉しそうにゆらゆらとまたたいた後、その子はふっ、とかえっていった。


「なんだか手慣れてるし」


「ぅん? 料理なんて普段からしてたら、これくらい出来るよ?」


 フライパンを温めつつ、同時進行で串焼き用のお肉に下味処理をほどこしながら、彼女の呟きに答えたのに、何故か溜め息をつかれた。


 何で溜め息?

 意味が解らない。


 竜田揚げに使う油の量が足りなかったけど、元々そぎ落とした欠片みたいな肉だから問題ない。揚げるというよりは、焼くに近くなってしまったけど。


 しかしこの設置型の調理キット、作業台部分がボクの身長に対して少し高すぎる。

 あまりに使いづらい。


 取り敢えず大地の精霊の力を借りて、足場となる部分の所の土を盛り上げることによって対処した。

 近いうちにきちっとしたものを買った方が良いかもしれない。


 うーん、でもなぁ。

 こういう一定の規格製品は、背が低い人間の事を考えてないからね。


 プレイヤーメイドになりそうだし、作ってくれる人を探さないとダメかな? 何処かに低身長用が売ってて欲しいな。



 あ、そういやさっきレントからメール来てたんだっけ?


 作業の合間にメニューからフレンドメールを開いて、レントのメールを確認する。


 そこに書かれていた内容を要約すれば、『昔の知り合い(VRゲーム仲間)が第3陣でインしたから、夜ギルドで会って紹介する』とつづられてあった。


 その知り合いは、前のゲームでは生産職命なプレイヤーで、物づくりにこだわるあまり暴走する事も多いが、腕のいい職人として名をはせていた人達だそうで。


 なんというベストタイミングなのだろう。

 よかった。これで色々助かるかな。


 その人がどんな生産職タイプか知らないけど、ボクの持ってる毛皮を大量放出したら、いろいろ作って貰えそう。


 依頼料はどれ位なのだろうか。狼素材売った金額で足りるといいけど。

 ただ、今後の展望が見えてきたなぁ。幸先がいいや。



 気持ち的に明るくなり、つい鼻歌混じりにお肉を焼いていたら、ふと視線を感じた。


 最初エフィかなと思って気にしてなかったんだけど、くいくいとボクの服を引っ張って前方を指差すエフィが背後にいたので、思い違いをした事に気付く。「あれ?」と顔を上げたら、男女の二人組がこちらにギラギラとした視線をボクに注いでるのが見え……。


「ふぇっ!?」


 あ、変な声が出ちゃった。


「す、すまん、エルフの嬢ちゃん。脅かすつもりはなかったんだ。邪魔してわりぃんだが、食い物を売ってくれねぇか?

 空腹すぎて、このままじゃ二人とも死に戻りしそうなんだ」


 はぃっ!?

 いきなり何がどうなってるの?


 そう言ってへたり込む髭面の山精種ドワーフの男性と有翼人種フェザーウィングの女性を見て、ボクとエフィは顔を見合せるのであった。




──────────────




ASアスの知識の何故?何?TIPS》


山精種ドワーフ

 言わずとも知れた山の民。

 低身長ながらも筋肉質の身体に髭面の種族。魔法は大の苦手の為、制限が掛かる。

 なお山精種ドワーフの女性は髭が生えないかわりに髪の毛のボリュームが増えている。


 現身アバター作成時にプレイヤー設定以外で、男性は筋肉量と髯が増量され、女性は髪の量が増加するため、髯を生やさない等の拒否は出来ない。


 プレイヤーには身長制限がつく(最大で男性165㎝/女性160㎝)為、意外となりにくいが、現身制作時のみの制限で在り、途中で身長が伸びて制限を超えても問題はないようだ。

 戦闘職では前衛のパワーファイター、生産職では鍛冶や宝飾細工などに適性と隠し補正がある。

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