158話 星の精霊と加護衣
……さっきまで忘れていましたが、ようやく作者の名前のリンク直りました。(今更感)
2019/1/31 ユイカの尻尾の数の訂正
2019/2/15 すいません。感想で指摘のあった通り、サレスさんの真名からのセイ君の名付けを、『レン』→『ティーネ』に変更しています。
2019/7/17 加護衣に加護衣と当て字を振りました。
「……あふぅ」
果てしないプレッシャーの中、何とか無事に鎮魂の式典を乗り切ったボクは、自室のようになった樹皇の間にみんなと引きこもると、ベッドの上でぐったりと転がっていた。
「セイちゃん……お疲れモードね」
「たれワンコならぬ、たれ耳エルフみたいにゃね」
レトさんとミアさんの声が聞こえるけど、目を閉じたままボクは返事しなかった。
うん、声を出すのも億劫になってきてるなぁ。
ちなみに『たれワンコ』とは、女子高生達を中心に人気爆発中のぬいぐるみキャラクターのことだ。
色んなポーズがある上に、ワンコのお友達に『たれニャンコ』と『たれウサぴょん』がいて……。
いやまぁ、今はこんな情報どうでもいいか。
だって仕方ないじゃないか。
今回の事件の犠牲者への鎮魂の儀を二つ返事でオッケーしたら、いつの間にやらあんな大がかりな式典に変貌してて、大勢の観客の前でフェーヤと舞うことになるとは思いも知れなかったんだよ。
厳しいアルメリアさんの監修の元、フェーヤと共に音合わせの練習から本番が終わるまでずっとプレッシャーでお腹が痛かったし、ようやく解放されたらされたで、一気に緩んだゴムのようになるのは当たり前なのだ。うん。
「おっ、ピンクのレースにゃ。今日は随分と可愛いデザインにゃね~。わざと見えるように倒れて誘惑してくるなんて……ふぅ、セイにゃんは罪作りなコにゃ」
「……ふぇ?」
ピンク?
あ、お尻の上までスカート捲り上がっちゃってる。それでボクのスカートの中が丸見えになっていると。
あの? 今のボクは変化中なんだけど?
ここには女性しかいないのに、いったい誰を誘惑するんだよ……。
精霊島から戻ってきてからは、人の目がある場所では必ず精霊化しているようにしている。
今回の式典で大々的に世間へ精霊王女の関係者として公表したもんだから、これは必要な処置だ。
どっちのミコだろうと、代々女性しかいなかったからね。今後男とバレる訳にはいかない。
当然ながら精霊と執り行う普通の精霊化を使うと、必ずといって髪色や種族、マナの波動が変化してしまうため、分かる人にはしっかりバレてしまう。
だから混乱させる意味もあって、基本的に自己精霊化の方で対処している。
変化のコツも掴んだし、自分一人で精霊に変化しているためか精霊核への負担が少なく、デメリットも非常に小さい。
それに様々なデメリットや消費MPに関しても、今後は気にしないで良くなったからというのもあるしね。
「こら馬鹿猫。何堂々とガン見しているのよ」
「そういうレトだって、さっきからチラチラと見てるにゃ。そんなに見たいなら、かぶり付いて見るなり、顔を埋めぇェッ!?」
「な、に、をっ! このエロ猫は言ってるのかしら~? 私分かんない~♪」
「らめぇえぇぇっ! か、顔はらめぇえぇっ!!」
あはは……毎度お馴染みの光景が。
てか、ミアさんも毎日懲りないよね。
「ほらほら、セイ君。そんな格好でごろごろしちゃダメだよ。せっかくのドレスがシワ出来ちゃう。しかも色々モロ見えしちゃってるよ」
「ここにいるの、全員身内だもの。下着くらい見られても平気平気~。シワなら精霊力流せばすぐ直るし、大丈夫だよ」
いつものじゃれ合いをしているレトさんとミアさんをよそにユイカがそう注意して来たけど、うつ伏せになって枕に顔を埋めたまま身動きせず、でも流石に返事しないのも悪いと思って返答する。
この部屋の中にいるのは、ボクの大切な仲間だけだ。
流石に赤の他人がいるなら、もっと気を付けるけどさ。
このメンバーなら下着くらい見られても気にならない。それ以上のことされちゃってるし。
なぜかというと、あの恐ろしい出来事で吹っ切れたというか、慣れさせられたというか……。
それはユイカの一言から始まったんだ。
精霊島から戻ってきた後、全てのコードが壊れてこの世界の一般人と同じ状態になっちゃったことをみんなに報告したら、事もあろうに「じゃあこれから女の子の身体にも慣れなきゃね」と、ユイカに言われてね。
ユイカ曰く、軽い気持ちで言っただけだけなんだけど、その発言を非常に強く支持してきたレトさんミアさんコンビと、シャナルさんを中心とした精霊達が賛同してきて、女性としても生活出来るよう訓練させられたんだ。
とは言え、もともと性的に奔放なあの美空姉さんのせいで、もともとある意味慣れていた。
姉さんは結婚して家を出るまで、ボクがお風呂に入っていると必ずといって素っ裸で突入してきようとしたし、結衣と一緒に布団の中に潜り込んできたりと、色々と難儀した記憶がある。
もちろん慎吾義兄さんと付き合い始めた頃でもそれは平然とやってきたし、慎吾義兄さんも「あの子の好きにさせてやって欲しい」と言うだけで、それ以上特に何も言わなかったんだよね。
おおらかというか、無頓着というか。
普通なら怒るでしょうよ。本当によく出来た人だ。
しかも母さんから聞いた話によると、初めての女の子の日が来た時なんかよっぽど嬉しかったのか、まだまだ小さかったボクにこんこんと子供を産めるようになったことを説明して、更には結婚の約束を刷り込もうとしていたらしいし。
母さんもどっちかというと姉さんよりの発想するしなぁ。学校の中では凛としていて、周りから出来る女性だと評判なのに、家ではボクに甘々で構いたがりだし。
御陵の女性は本当変わってる。
ただそんな二人も、海人兄さんにはちょっと厳しいんだよね。やっぱり家を継ぐ長男だから……じゃないな。うちはなんか特殊みたいだし。
うちは新年の儀などで真っ先に挨拶するのは、女性である母さんの役目だしね。
外向きには父さんが当主になっているらしいけど、婿養子でこの家に入った男性だから、母さんが実質的な当主なんだろう。
ボクの大好きな聖お祖父ちゃんも婿養子だった。旧姓はあの『光凰院』で、ボクが生まれる前に亡くなった咲姫お祖母ちゃんへ惚れて『御陵』へとやって来たって昔言っていたし、うちは代々婿養子を取っていく習慣があるから、やっぱり姉さんが次の当主になるのだろう……と、言われている。
だからみんな姉さんに甘い?
でも姉さんは嫁いで『有栖川』の姓に変わったからね。どういう事なんだろうと言われているけど、ボクは母さんから聞いて本当の事を知っている。
はぁ、本当に気が重い。
っと、話が逸れちゃった。
まあそれはともかくとして。
女性としての仕草や生活指導までは問題なかったんだけど、その様子を見ていたシャナルさんから女性の身体への羞恥心、特に自分の身体なのに恥ずかしくて見れないのは問題あるのではと主張されてね。
その結果ボクへの性指導だと言われて、トイレの付き添いから入浴指導まで希望者全員で行われ、寄ってたかってオモチャにされた。
あ、その時何があったかまでは言いたくないんで、黙秘権を行使します。
正直思い出したくない。全員がそのシャナルさんの言葉に、一瞬で肉食獣な目に変わったんだもん。ほんと恐い。
まあ子供制限がかかっているユイカ達は、制限自体が存在しない精霊達が提案してきた行動に一部まざることが出来ず、とても悔しがっていたとだけ言っておく。
今までは自分の身体とはいえ、女性化したこの身体を男のボクがじろじろと見たりするのは良くないと思っていたし、指摘の通りどこか恥ずかしい気持ちがあったのだけど、おかげさまで自分の身体に対する照れとか恥ずかしいという気持ちが完全に無くなってしまった。
まあ男なボクから見たら異性になるとはいえ、どこまでいっても自分の身体だ。ここまで慣れてしまえば、もうどうってことない。
「お兄がここに来たらどうするの。それに誰が来るか分からないんだから、せめて隠そうよ」
「あ、そうだね。分かったよ」
げっ、確かにそれはまずい。
レントやアルメリアさんに見つかったら、小言が飛んできそうだ。
別に親友に見られても何とも思わないけど、確かにアーサーさんやクラティスさんも一緒に来そうだし。
気だるげに起き上がると、乱れているスカートを手で整えて直した。
「これでよし、っと。
あ、そうだ。ねぇ、シャナルさん。今日の予定って、もうなかったよね? このまま寝て良いかなぁ?」
「ちょっとお待ち下さい……。
──ええ、ありませんよ。このまま休まれますか?」
「うん」
腕の中の書類を確認した後、そう答えたシャナルさんの言葉に安心し、再びぼすんと倒れ込むボク。
あ、またスカート捲れちゃった。
文句言われる前に直しとこ。
「──ねぇ、ユイカ……」
「うん……どうしよう? もしかしてやっちゃったかな?
ある意味前より酷い……」
恥じらいがあまりにもないとか喋っているティリルとユイカの声が耳に届くけど、そちらは殊更無視した。
恥じらいがないとか言われてもね。
気を許してない相手が一人でもこの場にいたら、いくらなんでもこんなだらけた姿は見せないし、もっと警戒するって。
そこら辺はユイカやティリルだって同じじゃないか。
一緒に寝てる時や朝起きた時なんて、色々と明けっ広げだし。
そう思ったけど、下手に反論したら倍くらい返ってきそうだし、ここは何も言わないのが正解。
うーん、しばらく動きたくないなぁ。
今日はもうだらだらしたいな~。
うん、精神的にかなりキテるみたい。
これ寝て起きたら治るかなぁ?
このドレスに疲労回復の効果も付いてくれていたら良いのに。
いや、そこまで望むのは贅沢か。
だって今着てるこの〔星姫の加護衣〕は、ボクなんかには勿体ないくらいの最強装備なんだから。
そう、ボクが今着ているこの黒を基調にしたゴシック風ドレスは、自力での精霊化中の能力向上や精霊化解除後の疲労を軽減するために、エターニアが特注で作ってくれた加護衣だ。
その性能はこんな感じ。
名 称:星姫の加護衣・改
状 態:特殊
種 別:装備品(セット装備)
耐 久:∞
重 量:1
付与枠スロット:3
効 果:
精霊女王が星の精霊へと昇華したあなたの為だけに丹精込めて作り上げた個人認証型専用装備一式。
契約を行う事で持ち主のマナと最適化して同化し、身体の一部と化す。
星気と女王の精霊力で構成されたこの装備は、たとえ破損しても契約者のマナさえあれば何度でも修復出来る。
御子でもあるあなたに最適化されており、そのパフォーマンスを最大限に発揮する為の機能が備わっている。
また効果は半減するものの、マナ化した状態のまま他の加護衣に融合させ、その能力を重ね合わせる事が出来る。
持ち主に合わせて成長していく不思議なゴシック風ドレス。
付与枠スロット毎に、自身のパッシブ系スキルを一つ自由にセットすることができ、その効果量は固定ながらも重複する。
契約者の能力覚醒が促進されており、装備中は下記の効果が追加発動する。
全ステータスがレベルに依存して上昇(種族レベル1/2)
消費MP1/2(常時)
MP自動回復強化
精霊化解除に伴うデメリットの強制無効(装備中のみ)
星の精霊へと変化中、全ステータスが更に上昇(種族レベル等倍)し、消費MPが更に半減
状態異常への抵抗値倍加
常時清浄化
悪意への抵抗
つおい。
あ、いや。確かに強いんだけど、見ての通り色々と突っ込みどころ満載なんです。
どう考えても強すぎるよね。このボク専用装備。
バランスブレイカーにも程がある。
しかも星の精霊ってなにさ。
みんなにこれを着た姿を見せた瞬間、ミアさんに「ふおぉぉうぅ!! ここで姫系黒ロリィタ装備キタァー!!」と大声で叫ばれたドレスでもある。
すぐにレトさんに折檻されてたけど。
精霊島から帰還する日の朝、エターニアから直接手渡しされた服の一つなんだけど、男に戻っている時でもそのまま着て欲しいと言われて一瞬抵抗したんだよね。
だって、性能を取るか男の尊厳を取るかの究極の二択だから。
ドレスだけならまだいいんだ……。いや、本当は全く良くないんだけど。
実はこれも、当然女物の下着なんだよ。
しかも上下セットで、ビスチェにガーターベルトがくっついたスリーインワンと呼ばれるタイプ。
女の子になっている時のボクの胸は、確かにその……ちっちゃいんだけどさ。まだ体型にマッチしているからまだいいんだけど、問題は男に戻った時。
うん、男の時もこの下着のまんまなんだ。
それに男の状態でのドレス着用だと、さすがに胸元がスカスカになって、いくらなんでもすぐにバレると思ったんだけど……。
何故か男だとバレないように見た目を補完する機能が、この加護衣には無駄に付いていた。
精霊状態から男に戻った時も不思議な力によって、胸の部分が詰め物がされているように膨らむ上に、幻影なのに何故か触感までリアルに再現されることで周囲に違和感を感じさせないという馬鹿げた性能で、もちろん下も……しっかりと幻影で処理されているという徹底ぶり。
力の入れ所を間違っている気がして仕方がない。
これじゃ女の子にな~れを通り越して、完全に男の娘として過ごせ、としか……。
それに星の精霊なんだけど。
これは自力での精霊化──ボクが変化したあの姿のことで、新たな新種の精霊ではなく過去にも存在していた。
ただ史上二柱目の『星の精霊』らしく、かなりのレア精霊らしい。
もちろん初代はクラティスさんの話に出てきた、エルフの姫君で英雄でもあるステファニー=サイジア様である。
一体これはどういうことか二柱に問いつめても、まだ完全には目覚めていないから今は言えないし、詳しい事は解らないと言われて答えをはぐらかされるし、ステータスからの画面には〔???〕だらけで全く詳細が分からないし。
自分自身に精霊眼を使おうにも反応しないし、鏡越しならと考えて実行するも、ただ鏡が鑑定出来ただけだった。
他人に見てもらっても〔???〕の嵐だったし、これじゃ何も分からない。
自分の意思だけで誰の力も借りずに精霊に変化出来るようになったんだけど、この力の詳細が分からないとか。
なんだか使うの怖いんだけど……。
まあ、エターニアやディスティア様には、この力を使用しても危険はないと聞いているし、これからの八鬼衆との戦いに絶対必須だろうから、慣れるためにもどんどん使っていくしかない。
んで、この星の精霊としての専用衣装が、この星姫の加護衣というわけで。
精霊へと変化している時なら身体は女性体だし、今更過ぎてまだ許容出来るんだけど、流石にエルフに戻った時の男性体でも女物の下着を着けろと言うのはどうなんだよ?
ちょっと想像したらすぐ分かる。変質者みたいで、絶対あり得ないと思うよね?
せめて男の時は勘弁して欲しいと思って、何とか穏便に断ろうと口を開こうとしたんだけど、服を抱き締めて泣きそうな顔になっていくエターニアと、貴方の身を護るために姉様が能力を使いながら一生懸命作ったモノだと強く説得してくるディスティア様に押し切られる形で、今後ずっと使い続けることを受け入れる羽目に。
というか、エターニアの『普段着用に頑張って作ったの。褒めて褒めて~』な満面の笑顔から、ボクの様子を見てだんだんと涙目になっていくあの表情を見たら、罪悪感一杯で何も言えなくなってしまった。
こんなの受け入れるしかないじゃないか。こうなりゃ毒食えば皿までだ。
そもそもボクはエターニアを悲しませるつもりなんて、これっぽっちもないもの。
それに今回直接説明されて初めて知ったんだけど、今まで貰った加護衣も全て精霊力化した状態で、ボクの精霊核の中に存在している事が判明した。
そりゃそうだよね。精霊化した瞬間、一瞬で服が変わるんだから。
加護衣に変わる際、元々着ていた服はどうなるかというと、一時的にマナへと分解されてボクの中に取り込まれているとのこと。
そこで服をマナに分解せず、マナ状態の加護衣の方を元々の服に纏わせるというやり方も出来るそうだ。
この方法なら加護衣の能力は半減するものの、今日の式典で行ったように場にそぐわない服装へ変化することを防げる。
しかもこの星姫の加護衣は更に特殊で、他の加護衣の上位存在のため、雷精の加護衣とかを対象として選べるとのこと。
となるとだ。
じゃあ普段は星姫の加護衣をマナ化して男性服へと上乗せしておけばといいんだと喜んだのも束の間で、これは精霊専用装備、すなわち女性専用装備としてのカテゴリーに分類されるらしく、男性服へと機能を委譲しようとすると弾かれて拒否されてしまった。
ねぇ……これ、わざとやってない? 絶対狙ってやってるでしょ?
何でみんなして、ボクに女装させようとするんだよ。
エターニアを筆頭にして、事あるごとに女装させようとして男の尊厳をボロボロにしてくる癖に、彼女達自身が男としてのボクを強く求めてくるって、何だか矛盾しまくっている気がして仕方がない。
特に加護衣がらみで躊躇なくボクに女装をさせようとしてくるエターニアに、本当にそれで良いのかと思ってしまう。
まさかそういう趣味でもあるのかと疑ってしまいそうになるよね。何も考えて無さそうに見えるけど、そこんとこどうなんだろ?
しかもこれ多少の違いはあるものの、普段エターニアが着ているドレスによく似たデザインだし、自分と色違いのお揃いとかしてみたかったんだろうか?
きっとそうだろう。そういうの狙っていそうだ。
まあでも……その、ボクのことを考えてじっくりと力を込めた装備だけあって性能は凄く良いし、あらゆる精霊化を解除してもこのドレスを着ている限り、衰弱などのデメリットが発動しないし。
このように何かと理由を付けて、自分を納得させた。
まあ実はというと、このドレスと下着って何故だか普段から着ていたかような錯覚を生んでしまうくらい着心地はいいし、清浄化の効果で汚れなんてすぐ落ちるし、マナを生地に流せば服に付いたシワやヨレもあっさり直るから、わざわざ部屋着に着替え直すのも面倒だったりで、だんだんこのドレスが手放せなくなってきている。
無駄な抵抗はやめて楽になっちゃえと悪魔の囁きが聞こえてくるような気がするし、何だかどんどん深みに嵌まっていって、もう完全に抜け出せなくなって来ている気がする。
まずいよなぁ。この状況。
とは言え、もうどうにでもなれ、って感じだよ。
実際星の精霊に変化している時のボクと男の時のボクを鏡でじっくり見比べても、自分じゃ違いが分からないし、これなら周囲にはバレないだろう。
あと、この星姫の加護衣以外にも新しく会得した戦巫女の形態ごとに、専用の加護衣を受け取った。
もちろんそれらも全て女性服。
名 称:樹精の加護衣・改
状 態:特殊
種 別:装備品(セット装備)
耐 久:∞
重 量:1
付与枠:1
効 果:
精霊女王が感謝の気持ちを込めて作成した個人認証型御子専用装備一式。〔樹精の恵育巫女〕を発動すれば自動的に装備され、解除すると外れる。持ち主に合わせて成長していく不思議な草皮衣風ドレス。
付与枠には自身のパッシブ系スキルを一つ自由にセットすることができ、その効果量は固定ながらも重複する。
秘技の進化と精霊女王の加護を受けて覚醒が促進されており、装備中は下記の効果が追加発動する。
INT/VIT/MNDが精霊化のレベルに依存して上昇(レベルに対して1/4)
〔樹精の恵育巫女〕中の消費MPマナ1/3
〔樹精の恵育巫女〕を使用した時間分だけ精霊化スピリチュアルのクールタイム1/4
これは樹木の精霊であるルアの正装である衣装が元になっている。
草皮衣というのはアイヌの伝統衣装であり、アニメとかでコロボックルが着ているアレだ。何故か下がミニスカートになってるけど、もう何も突っ込むまい。
名 称:光精の加護衣・改
状 態:特殊
種 別:装備品(セット装備)
耐 久:∞
重 量:1
付与枠:1
効 果:
精霊女王が感謝の気持ちを込めて作成した個人認証型御子専用装備一式。〔光精の救聖巫女〕を発動すれば自動的に装備され、解除すると外れる。持ち主に合わせて成長していく不思議な純白の欧風ドレス。
付与枠には自身のパッシブ系スキルを一つ自由にセットすることができ、その効果量は固定ながらも重複する。
秘技の進化と精霊女王の加護を受けて覚醒が促進されており、装備中は下記の効果が追加発動する。
AGI/INT/MNDが精霊化のレベルに依存して上昇(レベルに対して1/4)
〔光精の救聖巫女〕中の消費MPマナ1/3
〔光精の救聖巫女〕を使用した時間分だけ精霊化スピリチュアルのクールタイム1/4
こっちは光の精霊であるシャナルさんの正装がモチーフのドレス。
アフタヌーンドレスに近い形状だけど、何故かイブニングドレスのように背中がガバッと開いているタイプで、何でこんなに開いているんだろうと思ったら、彼女と精霊化した時に納得。
カグヤの時と同じく、シャナルさんのイメージに引っ張られたのだろう。つまりボクにも純白の翼が生えた。以上。
名 称:寂精の加護衣・改
状 態:特殊
種 別:装備品(セット装備)
耐 久:∞
重 量:1
付与枠:1
効 果:
精霊女王が感謝の気持ちを込めて作成した個人認証型御子専用装備一式。〔寂精の隠形巫女〕を発動すれば自動的に装備され、解除すると外れる。持ち主に合わせて成長していく不思議な戦闘用女給服。
付与枠には自身のパッシブ系スキルを一つ自由にセットすることができ、その効果量は固定ながらも重複する。
秘技の進化と精霊女王の加護を受けて覚醒が促進されており、装備中は下記の効果が追加発動する。
STR/AGI/DEXが精霊化のレベルに依存して上昇(レベルに対して1/4)
〔寂精の隠形巫女〕中の消費MPマナ1/3
〔寂精の隠形巫女〕を使用した時間分だけ精霊化スピリチュアルのクールタイム1/4
静寂の精霊であるティーネさんが普段から着ているメイド服。某電気街のようなミニスカートタイプではなく、しっかりとした生地に機能美を兼ね備えたエプロンドレスとなっている。
ただ何故か物騒な名前が付いているが、これも気にしたら負けなんだろうね。うん。
名 称:闇精の加護衣・改
状 態:特殊
種 別:装備品(セット装備)
耐 久:∞
重 量:1
付与枠:1
効 果:
精霊女王が感謝の気持ちを込めて作成した個人認証型御子専用装備一式。〔闇精の影転巫女〕を発動すれば自動的に装備され、解除すると外れる。持ち主に合わせて成長していく不思議な漆黒のレースのワンピース。
付与枠には自身のパッシブ系スキルを一つ自由にセットすることができ、その効果量は固定ながらも重複する。
秘技の進化と精霊女王の加護を受けて覚醒が促進されており、装備中は下記の効果が追加発動する。
AGI/INT/MNDが精霊化のレベルに依存して上昇(レベルに対して1/4)
〔闇精の影転巫女〕中の消費MPマナ1/3
〔闇精の影転巫女〕を使用した時間分だけ精霊化スピリチュアルのクールタイム1/4
こっちは闇の精霊と契約して出来た加護衣。普段キリアが着ている漆黒の衣装で、こちらは逆に某電気街に溢れ返っているようなワンピース型メイド服にそっくりな形状をしている。
ちなみにキリアが標準装備している包帯は付いていない。
名 称:日精の加護衣・改
状 態:特殊
種 別:装備品(セット装備)
耐 久:∞
重 量:1
付与枠:1
効 果:
精霊女王が感謝の気持ちを込めて作成した個人認証型御子専用装備一式。〔日精の断罪巫女〕を発動すれば自動的に装備され、解除すると外れる。持ち主に合わせて成長していく不思議なバトルドレス。
付与枠には自身のパッシブ系スキルを一つ自由にセットすることができ、その効果量は固定ながらも重複する。
秘技の進化と精霊女王の加護を受けて覚醒が促進されており、装備中は下記の効果が追加発動する。
STR/VIT/AGIが精霊化のレベルに依存して上昇(レベルに対して1/4)
〔破邪の光撃〕のチャージ速度倍加
〔日精の断罪巫女〕中の消費MPマナ1/3
〔日精の断罪巫女〕を使用した時間分だけ精霊化スピリチュアルのクールタイム1/4
で、最後に太陽の精霊の名を持つシュリの加護衣だ。
こちらも普段シュリが着ている蒲公英色の格闘着風ドレスとそっくりな形をしている。
そして他の加護衣にはない『〔破邪の光撃〕のチャージ速度倍加』の一文。
こちらはシュリの必殺技の一つで、太陽光のエネルギーを集めて圧縮して変換、邪霊生物への特攻効果のある光撃を行うというものだ。しかもこれは防御不可であるらしかった。
シュリだと太陽が出ていないと使えない技らしいけど、ボクの場合、試してみると夜でも使えた。
ただシュリが使うより威力が出ていない上に、昼間に浴びて集めた力が切れたら、一気に弱体化したので使いどころが難しい技でもある。
ただ今後場合によっては、とても役立つ技になりそうかな?
この事は今までボクの色んなタイプの普段着を作っていたマツリさんにも説明した。今後はマツリさん製の服を着る機会が減るからね。
その事には残念そうにしていたものの、だからといって星姫の加護衣以外が着れないわけじゃない。
それに普段着や部屋着に星姫の加護衣の能力委譲が出来ると聞いて、対応出来る女性用私服とパジャマを作ると張り切り始めたし、これから一体どんなものが出来上がってくるか、考えるだけでも恐ろしい。
普通に男女兼用の服でいいんだけど、どうしてボクの周りにはこちらを女装させようとしてくる女性しかいないんだろうね。
小さく欠伸をしていると、ユイカが更ににじり寄ってきた。
「セイ君。本気で寝ちゃうなら、流石にちゃんと着替えないと駄目だよ」
「……じゃあちょっとだけ目を閉じるだけにするよ」
これからわざわざパジャマへと着替え直すのも、今してる自力精霊化を解除するのも、なんかもう面倒くさい。
目を閉じたまま、どこかにある枕を手繰り寄せようとしていると、
「あらあら……じゃあここは私が手取り足取り着替えさせて上げまして、子守唄でも……」
「シャナル、ちょっと待つのだ。何だか目が恐いし、そのワキワキと動かす手はなんなのだ」
「シャナル。今日くらいは止めませんか?」
「そうだったね。セイくんは今までずっと働きっぱなしだったし」
「えー、ご主人様と添い寝したいのに……」
「カグヤ様、お兄様はお疲れなんですよ。今日はそっとしてあげましょう」
「主様……キリアに出来ること……その……」
「お父様お父様。ルアにも追加で出来ることないですか? 添い寝のサービスとかありますよ?」
口々に言い出す精霊の声が聞こえる。
そんな彼女達に返事しようと口を……。
「ストップ。セイ君疲れてるんだから、あんまり騒がないで。ジャンケンに勝ったのはあたしなんだから、メインはあたしが担当だよ」
「「「「「……むぅ」」」」」
ボクが寝転ぶベッドを取り囲んでいる何柱かが、ユイカの言葉に不満そうな声を上げる。
どういうことかと目を開け、ベッドの上に上がってきたユイカの方へと顔を向けてみれば、
「ほらほら、セイ君。こっちに専用の枕があるよ」
ユイカはボクのすぐそばに足を崩して座ると、自分の太ももをポンポンと叩いてきた。
「……好きだね、それ」
「当たり前じゃない」
前言撤回。
みんなに見られながらの膝枕はやっぱり恥ずかしい。
「んふふ~♪」
膝枕を始めたユイカのご機嫌な声。
ボクの髪に手櫛を通しながら、優しげな手付きで頭を撫でてくる。
そんなユイカの声はどこか勝ち誇ったようにも聞こえるし、またその心情を表すかのように、彼女の背後で五尾がパタパタと嬉しそうに揺れている音がする。
「こういう時って、何故か正妻には勝てないにゃね~」
「別にいいじゃない。楽しくやれればそれでいいのよ」
そういえば舞い終わった後締めの挨拶をしてから控え室に戻って来た時に、みんなで勝ち抜きジャンケンをしていたなぁ。
あれで順番決めてきたのね。
膝枕ってボクが頼んでいる訳じゃなくて、彼女達が勝手にルールを取り決めてやり始めたんだけど、こちらとしては喧嘩になるより、仲良くしてくれている方がはるかにいいからね。
ボクなんかの為に色々気を使ってくれる。
そんな彼女達に大いに感謝することはあれど、周りに迷惑さえ掛からなければ、彼女達が決めた事に文句や苦言を言う気はなかったりする。
うん、変わったなぁボクも。
いやどっちかというと、悩んでいても仕方がないと吹っ切れたと言うか、自分に素直になったと言うべきか?
地球の感覚じゃこれは駄目なんだろうけど、こっちの世界では、強い男性が多くの女性を娶るのが当たり前らしいし。
なんと言うか……ボクも思いの外欲張りだったみたいだ。
それに『郷に入れば郷に従え』じゃないんだけど、こっちの世界をきちんと認識した瞬間、今までモヤモヤしていた気持ちがすっきりしたし、こちらにいる限りこの事で悩まなくても良いんだという気持ちが生まれた。
いや、ボクの優柔不断さを正当化するために、この世界をダシにしている気がしないでもないけどね。でもなんだかこうするのが当たり前かのように、しっくり来ちゃってるんだよね。
そう、長年この世界に暮らしてきたかのような、本来いた世界に戻ってきたかのような……。
妙な安心感がボクの中に生まれた。
精霊化に伴う女性化に違和感を覚えなくなってきたことといい、複数の女性に言い寄られても、その全てを受け入れようと考え始めていることといい、急速にこの世界に染まってきているような気がする。
それにこの世界に来て『力』を得た者の責務として、世界の安定と平和を守りたい。
ほらアレだ、『高貴なる者に伴う義務』という言葉があるじゃない?
この言葉のように、十二の上級精霊を束ねる精霊王女エレメンティアの御子として、その役目を全うしたい。
こう考えてしまうのは、やっぱり『星の巫女』という特異な任務を帯び、かつ御子となったせいで『星の精霊』の力に目覚めちゃったせいかもしれない。
そうそう。
この里にあった闇のギルドの事後処理が終われば、再びフェーヤと一緒に王都プレスに向かうんだっけね。
城からアーサーさんに急ぎの書簡が来たと聞いているし、近いうちに旅立つことになりそうだ。
ユイカの優しい手付きに眠気を増幅させられたボクは、事後処理中のあの出来事をとりとめもなく考えながら意識を落とした……。