127話 合流、そして……
──ユイカ──
「西方の地で善良なる民を虐殺したばかりか、この里を破壊しつくさんと企む者どもよ。貴様らには死すら生温い。
必ず大いなる世界の意志と心ある者によって、悪は地に堕ち、そして裁かれるだろう……」
聞き覚えのある声が屋根の上から響いてくる。
「──そう! 貴様ら邪悪なる精霊の使徒どもにこの世界を、世界樹とドリアドをこれ以上穢させはせん!」
ご大層な前口上が聞こえてくる方向を見上げれば、夕陽を背に、屋根の上で腕を組んで高笑いを続けるという……とっても見覚えのある少女がいた。
「何故計画を知っている!? 誰だよ、お前!?」
その口上に警戒を露にして、キエルはあたしとの距離を大きく取りながら叫んだ。
「あーはっはっはっは! 貴様らのような悪党に名乗る名などない!!」
蒲公英色のドレス型格闘着を身に纏い、両手に真っ赤なフィンガーグローブをはめたその少女は、ズビシッとこちらを指差しながらポーズを決め、そう宣言する。
「もはやその悪事、見過ごすわけにはいかん! 天に輝くこの日輪の名の下に裁きを下す! 闇に蠢く悪党どもめ! 我が正義の鉄槌を受けよ!」
「あー」
思わず脱力する。
彼女に会うのはこれで二回目。
しかもタイミング良くここで登場するとか……。
舞台の袖で出待ちしてましたと言わんばかりの、この準備の良さ。
いったいなんの冗談よ。
「な、なんだよ!? 一体何が……よりにもよって、こんな大事な詰めの時期に」
あまりのことに頭がついていかないのか、キエルが戸惑った声を上げてる。
うん、さっきまでのシリアスっぽい空気が完全に破壊されちゃったけど、あたし的には助かった……のかな?
それにあたしもずっと彼女を探していたこともあって、今回の出会いは渡りに船だった。
絶対しっかりと捕まえておかなくちゃ。
見上げる角度とその態度から何だか大きく感じるけど、実際はセイ君よりも更に小柄な少女なの。
足元まで届きそうな黄金色の髪を赤いリボンでポニーテールに束ね、そして誰の発案か知らないけど、首に赤いマフラーをたなびかせたこの少女の名は、ソルちゃんという。
そう、このヒーローかぶれの子が、あの太陽の精霊にして、光と生命の精霊を統括している上級精霊なんです。
威厳とかどこかに置き忘れたような精霊だから、全くそうとは見えないけど。
本人の言い訳じみた説明によると、彼女は山精種ベースの精霊らしく、これでしっかりと成人……じゃないな。成精霊しているそうだ。
そしてソルちゃんはあたしの守護精霊でもある。
この精霊世界に来た際に、キャラメイキングでお世話になったのが初めての出会いなの。
初めて狭間の世界で会った時、いきなり自らを〔正義の代行者〕と自任し「さあ共に悪と戦おう!」とか、わきゃわきゃ騒いで無駄にテンションが高かった精霊でね。
時間が加速されている空間だから外の時間は経たないと言われたから、この精霊世界のことが詳しく知りたくて結構色々話し込んでいたら、いつの間にか仲良くなってて……。
どこかで再会をと約束し、指切りして別れたんだけど、あの時に彼女が語っていた情熱や想いと全く変わってない。
しかもマフラーのみならず、ご丁寧にへんてこりんな赤いドミノマスクまで付けてるし……。
いったい誰よ。こんな変な入れ知恵したの。
「くぴぃ!?」
実体化してあたしの肩にとまった朱雀さんがビックリした様子で叫び、両翼をパタパタさせている。
そういえばこの子、バライスで生まれたばっかだったよね?
じゃ、ソルちゃんを見たの初めてなんだろうな。なに言ってるか、全く分からないけど。
「あっはっはっは、そこの愛し精霊よ。今、我を誰だと問うたか?
そうだな……そなたには教えてやろう」
いや、さっき「名乗る名などない」って叫んでたじゃない。
「……ええっと、その……なんだっけ?
あ! うむ、我の事は『日輪仮面』とでも呼ぶがいい!」
「「ださっ!」」
思わず叫んだ言葉がキエルとハモってしまい、その事実に気付いてしかめっ面になってしまう。
うげっ。
コイツとハモるなんて、最悪。
「だ、ダサいって言うなぁ! ばかぁ!」
途端に涙声になって叫ぶソルちゃん。
あ、素に戻った。
「これが由緒正しき正義の味方が登場する時のやり方だって、サレス達が教えてくれたんだぞぉ!」
……。
…………へ?
「駄メイドのせいかっ!?」
ちょっと!?
ソルちゃんになんてことをしてくれたのよ!
あの時狭間で会ったソルちゃん。
確かにちょっぴり変わった子だったけど、根が素直で真っ直ぐな良い子だったのに。
あの強引でマイウェイなメイドに、こんな変な知識を吹き込まれるなんて。
なんて可哀想なことを……。
「──駄目じゃないですか、ソル様。こんなに早くネタばらししちゃ……」
……え?
あたしの背後で発せられた聞き覚えのある声に、思わず耳を疑って……。
「我が考えた口上をダサいとか、不敬な奴らだな」
「サレスにダークよ。何をコソコソしていたのかと思えば……。
──お主ら、最低だな」
「ま、まあまあ。フェル様。ソル様自身もノリノリでしたから……。
確かに私としては不本意ですが……不本意ですけども。こればっかりは仕方ありませんわ」
「っ!?」
いきなりあたしの後方からそんな会話が聞こえてきたのを受けて、キョロキョロと見回す。
「──い、言ったな!? 親にも言われた事ないのに! そこの馬鹿ガキ、いい加減降りて来て勝負しろよ!」
「精霊を馬鹿呼ばわりする奴が馬鹿なんだぞ! やーいやーい、ばーかば~か。ここまでおいで~。べろべろばぁ~」
「て、てめぇ! 泣かす! 絶対ズタボロにして泣かす!」
……はぁ。
知らないうちに、ソルちゃんとキエルとの間でなんか低レベルな口喧嘩になっちゃってるけど?
売り言葉に買い言葉とはいえ、女の子に向かって暴言吐きまくりのコイツの対処は取り敢えず後回しにして、今はそれよりも確かめなきゃいけないことがあった。
さっきのサレスさん達の声、もしかしてコイツに聞こえてないの?
さっきの声はあたしにははっきり聞こえたけど、キエルはなんの反応も示していない。
そこに活路はありそうかな?
じりじりと下がっていきながら、更に周囲の気配を探る。
ただそんなあたしの動きを、ソルちゃんと言い争いをしながらもチラ見してくる時点で、キエルはあたしをここから逃がす気はなさそうだ。
けど、震えていたさっきまでと違って、ソルちゃんやサレスさんの言葉が、私に平常心と安心感を与えてくれる。
希望をくれる。
「──ユイカさん、こちらに。そう、そんな感じで。奴からもう少し距離を取って下さい」
サレスさんの声に素直に従う。
見た感じ周りには誰もいないけど、周囲から複数感じ取れるこの妙な感覚は……やっぱり精霊達の……。
「──これだけ離れれば大丈夫でしょう。
ダークちゃん、シャインさん。ソル様の攻撃と共に、結界を構築。ユイカさんをこちら側に取り込んで下さい」
「うむ。任されろ」
「分かりましたわ」
サレスさん達の準備が終わるのを挑発することで待っていたのか、ソルちゃんは攻勢に出た。
「──お前に殺された民の怒りを! 正義の鉄槌を喰らえ!」
屋根上から拳を振り下ろすソルちゃん。
と同時に背後でパンッと手を打つ音が聞こえ、その瞬間、目の前を光が乱舞した。
思わず手をかざして目をふさいでいると、やがて光は収まり……。
「──お久し振りです、ユイカさん。息災でしたか?」
その掛けられた声に振り返ると、小さな子犬サイズのフェルさんを抱き抱えたサレスさんが、あたしの目の前でにこやかに微笑んでいた。
月の精霊であるカグヤさんがあたし達と旅をすることに決まった後、精霊女王様から別の任務を指示されたとし、あの館の前で別れ、別行動を取っていたサレスさん。
そんな彼女が今、二柱の精霊や聖獣フェンリルであるフェルさんと共に目の前にいる。
さっきの会話からも推測出来るけど、サレスさんと一緒にいる精霊は闇の精霊ダークネスさんと光の精霊シャインさんかな。
二柱と顔を合わせたのはこれが初めてだけど、今となっては掲示板で画像が出回っているし、あたしも顔は知っている。
というか、いかにも~っていう感じで、あからさまな見た目のせいで、間違いなど起こりようがないくらい。
ツンッとばかりにそっぽを向きながら立っているのは、闇の上級精霊であるダークネスさん……というよりは、ダークネスちゃんと呼んだ方がいいのかな?
思わずそう呼びたくなるような、お人形さんみたいに可愛い女の子だ。
黒髪に紫の瞳。
漆黒のゴシックファッションに身を包み、ぼろぼろの包帯で左目を隠すという、独特な装いをしている。
また特徴のある長い垂れ耳を見れば、セイ君やティリルと同じ種族──森精種ベースの精霊だと言うことが分かる。
その隣でニコニコと笑みを浮かべているのが、光の上級精霊であるシャインさん。
艶やかで柔らかそうなハニーブロンドの髪に、金色の瞳。
横に立つダークネスちゃんとは対照的に、純白のドレスに身を包んだすらりとしたお姉さんだ。
この精霊のベース種族もまた分かりやすい。その背に一対の純白の翼があることから、間違いなく有翼人種だろうね。
彼女が浮かべている微笑みも合わさって、天使みたいな印象を受ける……って!?
「ちょっとサレスさん! 今のは!? いや、それよりアイツは!? ソルちゃんは無事なの!?」
「落ち着いてユイカさん。ほら、周りを見て下さいな。さっきの屑が面白い事になってますよ」
その言葉を受けて、弾かれたように再度振り向き、周囲の状況を確認する。
そこにはさっきと変わらない……ではなく、何やら虹色に輝く光の膜に取り込まれているのに気付く。
──結界?
その光の膜越しに見える向こう側。
ソルちゃんから何らかの攻撃を食らったキエルの右肩の先が消し飛んでいて、その傷口から鮮血を撒き散らしつつ後方に跳び退き、何かを喚きながら脱兎の如く逃げていく。
更に屋根伝いに追いかけ、追撃をかけていくソルちゃん。
レーザー光線のような閃光が無数に飛び交い、そして避け切れないと見たか、閃光を闘気を纏った左手で弾こうとしたけど、今度は左手まで吹き飛ばされる事態となっていた。
そのことで防御は不可能と悟ったらしいキエルは、雨あられと降り注ぐ閃光を必死の形相で躱しつつ、どこかへと消えていった。
「ちょっと待って! あんな大技をこんな場所で連打したら……って、あれ? 被害が……ない?」
しかもあたしの耳には何の音も聞こえてなかったし、それだけの威力の攻撃が飛び交ったのに、周囲の家屋が壊れている様子もない。
「ちなみにこの結界ですが、私が音に関する結界を、シャインさんが光の波長を変化させて透明化、ダークちゃんが転移結界を流用して座標をずらすという、俗にいう合体奥義です。奴程度だと、姿どころか私達の痕跡すら察知出来ませんよ」
「なにその無敵結界……さすが上級精霊」
ソルちゃんの強大な攻撃力と完璧すぎる隠蔽結界の存在に、あたしが絶句していると、
「いえいえ、家屋が無事なのは別の要因がありますし、私達三柱の力を合わせてもごく短時間しか作れない不完全な結界で、精霊女王様の足元にも及ばないのですが……。
──あ、先程は驚かせてすいません。詳しく説明している暇は無かったので」
声を掛けながら進み出てきたシャインさんの方へと、あたしは慌てて向き直る。
「初めまして、ですね。私が光の精霊を統括しておりますシャインです。もう大丈夫ですよ」
「初めましてユイカです。助けていただいてありがとうございます」
「うむ。そして我はダークネスだ。我の事は親しみを込めて、ダークちゃんとでも呼ぶが良い」
「あ、え? は、はぁ」
わずかに腰を折り、綺麗なソプラノボイスで優雅に挨拶を行うシャインさんに、精一杯薄い胸を反らせ、変なポーズを決めながら尊大な態度を取ったアニメ声のダークちゃん。
大人なシャインさんはともかくとして、こっちの精霊はなんだか痛い子のような……。
しかもダークちゃんと呼べって……。
なんか台詞と態度が一致してないし、こちらの反応を伺うようにチラチラしてるし。
この子って、あれかな? 俗に言う拗らせたって奴かな?
しかもツンツンしてるように見えて、どっちかというと構ってちゃんっぽいし。
「ちょっとちょっとダークちゃん。思いっきり引かれてますよ。初対面なんですから、もう少し手加減して、ですね……」
「ぬぅ……いや、こういうのは最初が肝心であってな。だから舐められないようにと……」
「確かに先輩って、凄くちっこいですからね」
「ちっこい言うな。この馬鹿者」
先輩!? サレスさんより年上なの!?
いや確かにダークちゃんはエルフタイプだけども。
確かに精霊もエルフとおんなじで、見た目と実年齢が一致しないらしいけど。
でも年齢を重ねている割には、なんだか色々酷くない? 精霊ってみんなこうなの?
そこまで考えて、うちのセイ君にべったり引っ付いて尻尾振っているカグヤさんの姿が不意に脳裏に浮かび、溜め息と共にこれ以上考えるのを止める。
「い、今我らの方を見て溜め息つかれたぞ? 何が駄目なんだ?」
「流石です先輩。そこにシビれる憧れないッ」
「待てサレス。どう見てもお前も対象に入ってるぞ。あと、先輩呼びもするな。それ可愛くない……。
──ううっ、どうしよ? どうしたら認めて貰えるんだろ?」
「性急すぎるんですよ。こっちはずっと知っていたとはいえ、顔は合わせたばかりなんですよ。いくら本丸に攻め込みたくても、まずは外堀から丁寧に埋めていかなくちゃ駄目だと、あれほど何度も説明したじゃないですか」
「だからやってるもん。だからこうしっかりと丁寧にアピールを……」
「それ、どこのコミ症ですか……。
はっきり言って斜め上過ぎます。取りあえず……そうですね。まずはそのおかしな中二病を止めて……」
「やだ。怖いもん」
「……はぁ。難儀ですね」
呆気に取られているあたしの目の前で、こそこそと囁くような小声で話し合う二柱。
いや、あの。こっちにまる聞こえなんですけど?
そういうのは、せめて念話使って欲しい。
はぁ、この精霊達、本当に残念過ぎる。
こんなの聞かされて、あたしにどうしろと?
それに本丸って何?
これってやっぱり、どう考えてもセイ君のことじゃないかな。また増えるの?
二柱の会話の意味を何となく察し、憮然とした表情を浮かべていると、こちらをちらりと見たダークちゃんが急に慌てふためいて、
「ち、違うぞ! 我はただ継承者の奴がだな、未だ我の力を碌に使えない事に憤然たる思いを抱いていてな」
継承者?
それってセイ君の呼び名?
「──意訳するとですね。『シャインさんとソル様の光の理はちゃんと理解したのに、闇だけ理解してくれなくて寂しい。仕方ないから、私が手取り足取り腰取り密着して教えたいと。そして指導という理由をつけてまで、朝も昼も夜も関係なくセイ様やルナ様と共にいたい』と、容疑者は強く主張しており、我々はその想いを叶え……」
「違うもん!! あ、いや、その……こほん。そこまで変な意図はないぞ」
どんどんジト目に変わっていくあたしを見て、焦りまくるダークちゃん。
「何言ってるんですか。私達がクソ忙しい大変な時に度々失踪してどこに行ってるのかと思えば……。ちょろちょろ抜け出しては、セイ様の所へ覗きに行っていたでしょう?」
「し、知らん!」
「エアリアル経由で情報は上がってるんですよ」
「うぐっ……くそっ、あのお喋り兎が。
いや、あれはだな……。ルナ様が継承者に襲われでもしていないか心配で……」
「ダークちゃん、それは違いますよ。むしろ逆にセイ様に襲い掛かってるくらいです。もちろん性的な意味で」
「そ、そうなのか……? あの男嫌いだったルナ様が?」
「ええ。それと今はルナ様じゃなくて、カグヤ様と呼んだ方が良いです。名付けをセイ様にしてもらって、尻尾振って喜んでおられましたからね」
「犬か!?」
「狼の誇りはとっくに無くなっていましたね」
「うーむ。それ、良いのか悪いのか。しかしル……いや、カグヤ様にも遂に春が来たのか」
「初体験の時には、しっかりと陰ながら見守らせてもらおうかと思ってます。ちなみに初キスもしっかりと見てました。
──ああ、カグヤ様。ようやく貴女様を嫁に出す事が出来て、この不肖サレス、感無量でございます」
どこともなくハンカチを取り出して、よよよと目元を拭ったサレスさんに、
「……これは酷い」
「ま、まあ……何と言いますか……。
──はぁ。実はうちのソル様も大いに感化されてしまわれてまして……その、ちょっと困っているのですよ」
「あー。それはご愁傷様です……」
思わず呟くあたしに、擁護しようとしたけど途中で押し黙るシャインさん。
頬に手を当てて溜め息交じりにぼやいた彼女の嘆きに、思わず憐憫の情を覚える。
バライスの件といい、あのカグヤさんの館での出来事といい、今回のことといい、月の眷属ってやっぱりおかしい……。
しかし、乙女の直感というか、なんというか。
それが見事にずびしっと当たってしまい、再度溜め息が出る。
どうやったらこんなにも簡単に精霊をホイホイ引っかけられるのよ。もう訳が分からない。
エルフの特性だから……じゃ、もう説明が付けられないよ。
セイ君から変なフェロモンでも出てるんじゃないかと心配になってくるレベルだ。ホントどうなってるの?
これ以上考えていると頭が痛くなりそうだったので、首を振ってキエルが逃げていった方向を確認する。
闘い終わって静かになったせいか、恐る恐るといった感じで民家の住民たちが窓から顔を覗かせている。
お騒がせしちゃって、ごめんなさい。けど、何とか被害を出さずにすんで……。
「──って、ソルちゃんは!? ソルちゃんは大丈夫なの!?」
二柱の漫才が衝撃的過ぎたせいで、追いかけて行ったソルちゃんのことをすっかり忘れちゃってたじゃない。
「大丈夫ですよ。今こっちに向かって……っと、戻ってきましたね。今結界を解除します」
サレスさんの言葉と同時に結界が砕ける。
キラキラと虹色の光が瞬きながら消滅し、世界が元に戻っていく。
「──ただいま~っと。逃げられちゃっ!? わっ!?」
解除されるのを待っていたのか、屋根の上からあたし達のいる所へしゅたっと飛び降りてきたソルちゃんに、あたしは思わず抱きついた。
「あわわ!? ユ、ユイカ? いったいどうしたのだ?」
目を白黒させながらあたしの腕の中でじたばたと暴れ始めるソルちゃんを、更にぎゅっと抱きしめる。
「……ホント無事で良かった。アイツ、こっちに来て、ますます見境がなくなってたから。もしソルちゃんに何かあったらと思うと……」
「──ん。ユイカ、ありがと」
あたしの言葉にこちらを見上げた後、えへへっと屈託のない笑みを見せ、ぎゅっと抱きしめ返してくる。
「ソルは大丈夫。あんな奴なんかに負けるものか。正義は必ず勝つんだよ」
「……うんうん。聞いてた。こうしちゃいられないよね」
「これからアジトに突っ込むから。一緒に行こ」
ソルちゃんの前口上にあった、あいつらPKがこの里で行っている破壊工作。
そんな恐ろしい事態が進行しているなら、止めなきゃならない。きっとセイ君も気付いて、止めようとするはずだ。
でも今は……今だけは。
あと少しだけ休んだら、また頑張るから。
抱きしめるソルちゃんから感じるお日様のような温かく優しい匂いが、疲れていたあたしの心をそっと癒してくれた。
あたしが強くなるためにも。
ソルちゃん達とこの騒動の解決、必ずやり遂げてみせる。
そう誓った。
な、なんとか五日投稿に間に合いました……。
日付変わっていないので、セーフw
自転車操業のような投稿が続いていますが、どこかで書き貯めしたいなぁ。
でも追われなきゃ書くスピードが……ほら、夏休みの宿題みたいに結局慌てふためくことになりそう。