118話 世界樹神殿へと急げ!
──樹木の精霊さん倒れる。
その話を聞くまでは、彼女達を神殿まで送り届けたあとで、次の日に正式に訪問しようかと思ってたのだけど、そんな悠長なことを言っていられなくなった。
風の精霊を奉じるアネモス氏族の助けを借りた里からの報告が、ほぼノータイムでアルメリアさん達に伝わってから、既に今日で一週間。
現在医療知識のないこの世界で、一週間も昏睡状態に陥ってしまったら、たとえ精霊でも……と、絶望的な思いになってしまったのだけど、ティアの話では、ドリアドさんが世界樹の元にいるならば、恐らくまだ力を保っているとの見解を示してくれた。
あの時ティアがいた祭壇のような仕組みを数倍強化したモノが、今ドリアドさんがいると予想される世界樹の中心部の神殿だそうだ。
それにドリアドにもしもの事態があれば、同じ上級精霊としてすぐに分かるとも。
二柱が伝えてくるその話にホッとするも、いち早く駆け付けないといけないことに変わりはない。
ボクから事情を聞いたアーサーさん達。
相談の結果、マーリンさんと騎兵の一部が、急遽第二次先遣隊としてファルナダルムの里の正門へと急行する。
緊急時対応をお願いし、先に色んな手続きを出来るだけ済ませ、かつ、守備兵に話を通して世界樹神殿へ早打ちの使者を出してもらうためだ。
そうして里の正門前に入門手続きを待っている人々を追い抜かし、並んでいた多くの群衆がざわめく中、ボク達は馬車ごと乗り入れた。
初めて見る里の風景。
その景観は、水の都と言っても言い過ぎではない。
本来なら情緒溢れる街並みなのに、感慨深さが全く感じられず、ただただ焦りが頭を支配してしまっていることを強く意識し、それではいけないと自分に強く言い聞かせる。
冷静でなければ、助かる者も助からない。
今はティアの言葉を信じるしかない。
こうして眺めてみるとすぐ分かるけど、里の通りも理路整然としているわけではなかった。
あまりにも巨大なため、そうとは分からないだけで、足元にあるのは木の根である。
さっきまでは綺麗な真っ直ぐの平らな道だったのに、正門を超え中心部に近付くにつれ、デコボコしていたり突然高低差があったりと、馬車のまま進むのには難しい状況となってきた。
しかも多数の細かい地区に分かれていて、その間は渡し舟で移動するか、架けられている橋を渡らなくてはいけない。
馬なら、いやハクやリンなら問題はないだろうけど、里の中をみんなを乗せて走るのにはさすがに目立ちすぎる。
ボクの支援を受けたハクなら水の上すら走れるんだけど、それもまあ同じだし。
そもそも目的地である神殿は、世界樹の幹、洞の奥深くにある。
その世界樹本体の幹のある中央地区と他の一般地区の間は、最終防衛的な観点から完全に水没して繋がっていないため、神殿に辿り着くには必ず水路を渡らなければならないようになっていた。
この事からアルメリアさんの言う通り、彼女が指定する船着場へと向かい、最初から舟で行った方が良いだろう。
そして中央地区へと向かう巫女専用の舟は、ボク達全員乗れるほど大きくなかった。
船頭さんを除けば十人乗りだった為、ここで神殿に向かう組と宿屋での居残り組とで別れる事になった。
神殿組は当然アルメリアさんとフェーヤ、護衛としてラメさん。こちら側では、アーサーさんとマーリンさん、そして御子のボクと、生命の精霊さんの使徒で〔癒しの導き手〕であるティリルは外せない。
残りのメンバーとして、ボク達側からレトさん。円卓側からは、マーリンさんが選んだメディーナさんとファルマンさんの二名だ。
──そして何故かユイカは……。
今回ユイカがボクとは別行動をしたいと言い出した時は、正直耳を疑った。
最初はユイカも行くつもりだったみたいだけど、神殿がある場所を聞いた瞬間、一転して行かないと言い出したのだった。
いきなり百八十度変わったその行動の意味を訊いてみたけど、彼女は首を振るだけで答えなかった。
「セイちゃん、ごめんね。私が行くとやっぱり邪魔になっちゃうと思うし、護衛としても全然力が足りないから宿屋で待ってるよ」
にこやかに話すユイカのその笑顔が、ボクには心なしか暗く感じた。それが妙にしこりとなって、ボクの心に引っ掛かる。
普段はすぐ連れて行ってと言うのに。
一体どうしたんだろう?
とはいえ、渡し舟の定員のこともあるし、行かないと言っている彼女を無理やり連れて行く状況でもない。
これから向かう先は里の政治の中心部でもある。事実、あまり多くの人数で押し掛けるのもまずかった。
「じゃ、宿でみんなと待ってて。早めに終わらせて帰ってくるから」
「……うん」
小さく返事をするユイカの頭をくしゃりと撫で、その後ろで見ていた仲間達に目配せする。
ボクのアイコンタクトに頷いたレント達にユイカを任せ、そして念のために考えうる対策を行い、ボク達は舟に乗り込んで里の中心にある神殿へと向かっていった。
「──そういやおチビちゃんは、エルフの里に用があったんだったな。こんなに早く合流出来るとは思わなかったよ」
「ボクもこんなに早く会えるとは思いませんでしたよ。で、前にも言ったと思いますけど、おチビちゃんは止めて下さい」
舟で向かっている最中、ボクの正面に陣取ったメディーナさんが暇潰しとばかりに声を掛けてきたのに対し、少しむすっとしてそう返答する。
「あはは、貶してるんじゃないからさ。別にいいだろ。あたしは嬢ちゃんに愛らしさを込めて呼んでんだよ」
「……むぅ」
「おぉ、ふくれたその顔も可愛いな。こりゃ確かにヤバイ道に足突っ込みそうになる奴が多いと、スレで言われるの納得だわ」
ポンポンと馴れ馴れしくボクの頭を軽く叩くように撫でながら笑う、燃えるような赤毛の髪をざっくばらんに伸ばしたこの長身の女性は、メディーナさんという。
クラン【円卓の騎士】に所属し、第一弾でこの世界に降り立った同郷者である。
「せ、先輩。彼女嫌がってますから、そのくらいで……」
「あ、こらファル君。この世界では師匠と呼べと何度も言ってるだろ」
そしてオロオロとしながらも、彼女を制止しようとした茶髪の男性がファルマンさん。
彼も大学で薬学を学ぶ学生だそうだ。
メディーナさんの事を「先輩」と呼んだりしている事から、多分同じ大学の先輩後輩だとは思うんだけど、ファルマンさんはその押しの弱いその雰囲気のせいか、くたびれたサラリーマンのように見えてしまう人だった。
この二人と出会ったのは、一ヶ月ほど前になる。
あのイベントの後、アーサーさんに薬師を紹介して欲しいとお願いし、そして紹介されたのがこの二人であった。
この二人、こちらの世界では師弟関係を結び、共に研究の日々を過ごしているらしい。
また第二弾でこの世界に来た弟子のファルマンさんを一流の薬師とすべく、また基礎と応用を徹底的に叩き込むために、あちこち引き摺り回し……もとい、旅して回っているとのことだった。
「まあメディーナさんはその……ちょっとばかり変わった所があるけど、薬師としての腕は一級品だよ」
というのが、アーサーさんの弁。
気の向くままあちこちにフラフラするもんだから所在を掴みにくく、自分の感性に忠実で、気に食わない仕事をすっぽかしたり、また調合を依頼しようとした人をボコボコにしたりと、何かと定評のある人らしい。
まあ依頼人をボコった件については、本人曰く、毒薬の調合依頼されて用途を問い詰めたところ、相手が頑として答えなかったから、無理やり自白剤ぶちこんでゲロさせたら、要人暗殺用の薬と分かったからだそうで。
普通怪しくても断ることはあっても、依頼人にそこまでしないんだけどなぁ。
そういう事を彼女が行った相手には、必ずといっていいほど何かしら後ろ暗い事情がある事が判明するらしく、ある意味すごい犯罪嗅覚の持ち主だった。
そんな彼女達を紹介してもらったボクは、前々から何とかしたいと思っていた精霊用の回復薬の作成を依頼した。
ティアの話によると、人の世の中では製法が既に失われてしまっている上、彼女自身も製法までは知らないとの事で、正直雲を掴むような話であった。
もちろん手掛かりなんてまるでない。
手掛かりがない状態なのに、それでも作成の依頼を急いだのは理由がある。
ボクを手助けしてくれている精霊達が傷付き倒れてしまった時、ティリルや依り代の効果に頼るだけでは、今後立ち行かなくなる可能性がある事をあのイベントで痛感したからだった。
怪我が元でエフィと同じようにみんなが昏睡しちゃったら……?
そう考えてしまうボクがいて、とてもじゃないけど安穏としていられなかったから。
実際問題、その薬を完成させていたら、今回倒れた樹木の精霊さんを簡単に助けられたかもしれないと思うと、ね。
こんなあやふやで困難が多い依頼を二人にせざるを得なかったボクは、当然ながら依頼するに至っての経緯をしっかりと話してある。
隠し事をしてしまったら、信用問題に関わる。
なるべく誠意を見せることが大事だと判断したためだ。
他言無用として自分の精霊体も見せ、既存の回復薬が殆ど効果を失っているところも見せた。
ボクの事はPV団体戦である程度知っていたようだけど、目の当たりで実際に精霊へと変化したことに、驚きを隠せなかったようだ。
その後調査資料として取り出した月光花を見せた時には、更に顎を外さんばかりに驚愕していたメディーナさん。
上級の薬師だけが持つとされるスキル〔薬草詳細鑑定〕を行ったのだろう。
彼女は震える手でピンセットを取り出し、開花状態で虚空の穴に保存されていた月光花をそっと摘まみ上げると、更に詳細を見始めた。
「──嬢ちゃん。これをどこで?」
「えと、バライスの街の西方にあった月精の丘です。それと嬢ちゃん呼びも止めて下さいよ」
最初挨拶した時に言われたおチビちゃん呼びよりはマシだけど。
源さんをはじめ、今まで出会って来た生産職の面々って、みんなこんな感じなんだよなぁ。
職人さんって、ほんと変じ……変わった人が多いよ。
「呼び方くらいどうでもいいじゃないか。そんな事よりもだ。これを研究用にいただいても?」
「構いませんよ。もしよかったらもっといります? まだまだ大量にあるんで」
「ぶはっ!? ま、本気?」
あの丘……というより山か。一面に咲き誇っていたあの花の半分ほど回収したんだよなぁ。
精霊眼鑑定で、恐らくこの花が精霊用の回復薬の材料になるかと判断したからなんだけど。
もちろん全部回収しなかったのは、あの景観を今後も保存したいからだ。次の世代もあの慰霊碑の場所で咲いてもらわないと困るし。
「あれ先輩? 何をそんなに驚いてるんですか?」
「何をのんきな! お前は何を見ている? これ新種だぞ、し・ん・しゅ! 誰も手にした事がない未発見素材だ!
プレシニア王国内で販売されているどの薬草図鑑にも載って無いんだぞ。あれほどあちこち歩き回ったのに、まだ目にした事のない薬事系素材が存在したとは!」
「え? これ未発見だったの?」
普通にいっぱい咲いていたんだけどなぁ?
「先輩、何言ってるんですか。確かに誰も手に入れてないですけど、情報自体は前に二人で行った王立図書館の古い文献に載ってたじゃないですか」
「……あれ。そうだっけ?」
ぴたりと動きを止めたメディーナさんは、ボクやファルマンさんの呆れの混じった視線が自分に集中しているのに気付くと、ごほんと咳払いをし、そっと静かに席に着いた。
何とも言えない空気が広がる。
「え、えと、セイさん。この月光花は、精霊の力が強く働く場所にしか咲かないと言われた花です」
ファルマンさんが代わりに説明を始める。
「昔から生命の霊薬の材料として重宝されてきたそうで。そのせいで乱獲が進み、この大陸では絶滅したとされています。こんな貴重な花の群生地、よく見付けられましたね」
「やはりこれが精霊用の回復薬に必要なんだね?」
「恐らく。ただセイさんがおっしゃったように、現時点では調薬方法が不明ですから調べないと」
それなら研究用としてたくさんいるだろう。
そう思ったボクは、取りあえず二人へ手付金とは別に五十株ほど渡しておく。
「こ、こんなにも貰えるんか。
……ふむ。じゃあ嬢ちゃんの依頼は、精霊でも効果のある回復薬でいいのか?」
「そうですね。まずはそれが最優先です。あとはこの月光花で作れるモノも研究してもらえればありがたいです。研究に必要な経費や素材も常識的な範囲であれば、きちんと提供しますので」
この女性、相変わらず嬢ちゃん呼びが直らないなぁと思いながらも、彼女の確認に頷きそう答えた。
「んじゃ、これから嬢ちゃんがあたし達のパトロンだ。後で契約書を渡すから確認して欲しい。ま、今後弟子共々よろしく」
「セイさん、よろしくお願いします」
そうして契約を結んだ後、彼女達はビギンの街では得るモノが無いという事で、まずは王都に向かい、その文献の再チェックをするとボクに伝えて旅立っていったのよね。
というのが、この二人との馴れ初めで。
それがまさかこのエルフの里で一緒になるとは思わなかったんだよ。
王都で文献を漁った後、次は精霊を詳しく知ることが大事だと、このファルナダルムにやって来たらしい。
そして、たまたまこの里の正門で入場待ちをしていたこの二人に気付いたマーリンさんが声を掛け、協力を要請してくれたおかげで、こうしてこの二人と合流することが出来たのだった。
ボク達の説明を詳しく聞いたメディーナさんは、上級精霊であるドリアドさんに会える上、その病(?)の症例と治療に携われる事、そして昔門前払いを食らった世界樹神殿の中に入ることが出来るとあって、二つ返事で同行を引き受けてくれた。
まあメディーナさんに関しては、ちょっぴり不純な動機が混じってそうだけど、一流の薬師が味方にいる事は心強い。
ティリルやボクが手に負えない事態になった際、薬学的なアドバイスや打開策が見つかる可能性が高いしね。
それに精霊を癒すことが出来る回復薬の調査進捗状況が、どこまで進んでいるのか知りたい。
もし、何とか試作品でも完成していれば、ボクで人体実験した後、ドリアドさんに投与することも可能だし。
「メディーナさん、あの依頼の件は今の所どうなりました?」
「精霊の回復薬の件かい? あれな、まあ試作品は作ってみたんだがなぁ。ちょっとばかり厄介だわな」
「やっぱり一筋縄ではいきませんか?」
「ああ、どう考えても必要材料が不足してるし、足りない素材が不明ときてる」
「先ぱ……師匠と強引に作ってみたんですが、どうにも変質してしまいまして。抽出過程とか色々拙い点が多そうです」
そう言って二人が取り出した薬瓶の中身を精霊眼で鑑定してみる。
名称:薬?
状態:不良
種別:アイテム
効果:HPとMPを同時に回復させる下級薬……の
ようなモノ
回復量は最大数値の三%
クールタイム五分
……なにこれ?
確かに話にならないなぁ。
「どう考えても失敗作にしかならん。せめて現物を拝む事が出来たら、あたしの〔材料解析〕のスキルで必要素材の裏付けが取れるんだが……」
「あのセイさ……さん? ちょっといいですか?」
様と言いかけたアルメリアさんは咄嗟に言い直し、ボク達の会話に口を挟んできた。
「その、精霊様を癒す薬って、精霊薬の事ですか?」
「え? アルメリアさん知ってるんですか!?」
「現物あんのか!?」
聞いたこともない薬の名前を口にしたアルメリアさんへ、全員の視線が集まる。
その視線の圧力に、彼女はちょっぴり引く。
「え、ええ。曾祖母様の時代に作成されたモノが宝物庫に。ただ作成手順のレシピはスティルオム氏族が持っていましたから、これも失伝してしまっています。
私達が神殿を離れて王都にいたのは、この残り少ない秘薬の作成方法を何とか復活させようと、調べていたからです」
「残っている分だけでいい。見せて貰えないだろうか?」
「それは構いませんが……。ただ、なにぶん古いモノですので、恐らく効果を失っていると思います」
「そんなことはない筈なんだが……。
──まあ、いい。それはあたしがきちんと視て判断する」
「そうだ、アルメリアさん。その薬、ドリアドさんに使ったらいいんじゃないの?」
「半月前から既に試しています。まず毒味役が試飲した後、問題がないとの事で、少しずつ毎日飲んでいただいたそうなのです。だけど全く効果が無かったと聞いております。
前から体調を崩される事が多かった精霊様なんですが、ここ最近その体調が日増しに悪化されまして、終いには目を覚まされなくなってしまわれたと」
……ちょっと待って?
どう考えてもそれが原因の一つじゃ?
「──待て、それはおかしい」
メディーナさんの目付きが変わる。
「王都の古文書で調べた限りでは、精霊の祝福を受けたモノが年月程度で変質したり効果を失う筈がない。詳しく見てみないと分からんが、何か人為的なモノを感じるな」
──へぇ。
やっぱりそうなんだ……。
「そ、そんなまさか……私達エルフの民がよりによって精霊様を傷付けようとする筈が……」
「アルメリアさん。飲ませようと判断、許可出したのは誰だい?」
「そ、それは……神殿長のネライダ殿だと……。
で、でも! 精霊様を愛し妻にしておられたあの方が、あの幼い精霊様に危害を加えようとなさる筈が……」
「──今、憶測での犯人探しはどうでもいいです。まずはドリアドさんの手当てが先です」
アルメリアさんの言葉を遮り、ボクは低い声でそう宣言する。
正直関係者と会わず手掛かりもない状態で、そんなこと四の五の言っている場合じゃない。
「ドリアドさんを救った後で考えましょう。ただし、この里にいる精霊達にしっかり声を掛けておきますので、状況把握にきっちり目を光らせます」
これだけ周囲に精霊達がいるんだ。誰かしら見ているはずだ。
「あ、あの……そんな事が出来るんですか?」
「そうか、その手があった。セイさんならでは、だね」
「つくづくぶっ飛んでやがるな、セイちゃんのその力」
「セイちゃん。頑張るのはいいけど、無理はしちゃ駄目よ」
「わかってますよ」
狭い舟の中、背後にいたレトさんが抱き締めてくるのを受けて、振り返らず返答する。
「──安心して下さい。無理せず、無駄なく、ちゃんと犯人にはきっちり熨斗付けてお返しをしますから。
……ええ、分かり次第、徹底的に潰して、生まれてきたことを後悔させて……」
バチッ! バチチッ!
「いぎゃっ!?」
「危なっ!?」
「うおっ!?」
「せ、セイちゃん。落ち着きましょう、ね」
「セイさん、落ち着いて!」
「お、落ち着いて下さい!」
「お、お怒りを鎮めて下さいましぃ!」
心配かけないよう誤魔化し笑いをしたんだけど、思わず本音が漏れた時、ボクの身体から周囲に放電現象が起きてしまった。
抱き着いていたレトさんが放電に巻き込まれ、目の前のメディーナさんが大袈裟に驚いて後退り、みんなの顔が引きつって口々に宥めてくる。
う……。
やっちゃった。
「レトさん、ごめんなさい」
「だ、大丈夫。静電気程度よ。ちょっとバチッときただけだから」
確かに苛ついていたんけどね。
その怒りの感情に、ティア達雷精が同調しちゃったみたいだ。
今もボクの周囲にたくさん集まってきて、命令を待っているような状態になっている。
深呼吸を繰り返して落ち着くと、お礼を言って集まっている雷精を散らす。
いやぁ。失敗失敗。
まあでも、本番はちゃんと上手いことやるから、何が起こっても許してね。
ちょっと風邪で寝込んでましたorz。
暑かったり寒かったりと、この季節の変わり目に、皆様もご注意を。