110話 新天地、そして変わりゆく関係
ワールドイベント編ラストです。
恒例として、最後にセイ君のステータスあります。
2018/3/16修正 テンライの描写を少し詳しくなるよう弄りました。
──ガタン。
大きく跳ねたらしい馬車の車輪の音が微かに聞こえ、荷台の居住空間のソファーで寝ていたボクは微睡みの中から現実に復帰する。
と、ボクの頭を優しく撫でる手に気付いて、まだまだ眠たげな眼を何とか開いた。
「……あれ? 起こしちゃった?」
その様子に気付いたレトさんが微笑みながら、ボクの顔を覗き込んで……って、ちょっと近い近い。顔近いってば。
慌てて顔を横に逸らしつつ、
「……ええっと、一つ訊いて良いですか?」
「なぁに?」
「いつの間に膝枕?」
「……う。その、セイちゃんの頭を独り占めしてる枕が羨ましくなっちゃって。セイちゃんを取り返す事にしたの」
「枕なんかに、なんで嫉……変な対抗意識燃やさないで下さいよ」
少々呆れながらも身を起こそうとするけど、レトさんはそっと肩を押さえて起き上がらせてくれなかった。
「やっと私の番が回ってきたんだから。後もうちょっだけ……最後までさせてね」
私の番って、なんだろ?
「ユイカちゃんとティリルちゃんはもう済ませていてね。今は御者台の方にいるわよ。ミアは屋根上でお昼寝するって」
じゃんけんで負けちゃったから最後なのよねぇ~と、のほほんとした感じで話すレトさんに、どういう状況になっていたのか何となく察したボクは、仕方なく彼女の希望通りにそのままの体勢で撫でられるがまま、ソファーに寝転がっていた。
ボクと同化しているティアもボクの中にいるカグヤも、二柱とも静かなところを見ると、どうやら寝てしまっているようだった。
落ち着いた時間が流れていく。
ボクと繋がっているテンライから向かう先の状況が映像として流れ込んでくる。
集団で街道を行くボク達に襲い掛かろうとするモンスター達はいないようで、この馬車を牽くリンの脚取りにも乱れはない。
そう、今のボク達は。
あのイベント前にアーサーさん達と約束した件、つまりこの王国の王宮で例の話を説明をする為、クラン【円卓の騎士】と共に王都プレスに向かっている途中だ。
まあその前に精霊女王様の指示通り、エルフの里に立ち寄るつもりだけども。
その辺はエターニア様の指示として、みんなに伝えてある。
しっかりとした街道を利用しての馬車旅ではあるんだけど、舐めてるのかと言われるような旅の仕方なんだよね。
だってこの馬車、内部が家みたいなんだもの。
今回の旅立ちにあたって、アーサーさんは【円卓】のメンバーへ王都行きの警護者を募集した。
アーサーさんとマーリンさん以外に数人集まってもらえたら、それだけでありがたいなぁと思っていたんだけど、ボクの予想に反して男女問わず大量の応募が殺到してきたらしい。
正直百人以上の方から護衛したいと言われても、そんなに要りません。勘弁して下さい。
あまりにも希望者が多過ぎた為に、その人選にアーサーさんは頭を悩ます羽目になったらしい。
それで制限した結果、ボクの馬車の前後に【円卓】のメンバー用の馬車を二台ずつ配置し、更にはその周囲を騎馬兵で護衛するという、これで制限したのかと問い詰めたくなるような、何だか要人警護みたいな旅になってしまっていた。
そして隊列の中央に位置するボクの馬車は、今回の移動の為に作った特注品である。
このオリジナル馬車を作製するにあたって、その作業を手掛けたのは、もちろん源さんと【円卓】の一流職人達だ。
イベント褒賞で貰った資金をふんだんに投入。
お金に糸目をつけず、今ある技術と素材を限りなく利用する形で組み上げられたこのボクの馬車は、現時点では最高級クラスの性能を誇る。
詳しい原理はよく分からないけど、現実の工業知識や技術だけでなく、こちらの世界の魔法技術も使われていて、色んな所に強化魔法や防御魔法が使われている。
特に居住空間の静粛性が凄い。
轍を踏む車輪の音などは辛うじて聞こえてくるようなレベルにまで防音し、しかもほとんど振動が来ない。
それと当然ながら、以前買った魔法のテントと同じく荷台部分に最大級の空間拡張化の魔法も掛けられている。
見た目普通の馬車サイズなのに、リビングはもちろんの事、ダイニングキッチン完備、大きな浴槽まで完備、防音完備の寝室が六部屋という、まるで移動する家のような快適空間となっていた。
普通これだと外部の様子を確認出来なくて危険だけど、リン達を通して周りを知ることが出来るボクにとっては、何ら問題はない。
そしてもちろんこの内部は帰還可能の機能付きであり、しかもボクの所有品扱いだから、使わない間は虚空の穴に収納出来るというから驚きだ。
まあ外観は……。
何も言わなかったのをいいことにやりたい放題されて、どこの貴族が乗っているのと突っ込みたくなるくらいの豪華さになってしまっているけど、それ以外の箇所に全く不満はない。
それどころかやり過ぎだった。
最初は普通の馬車で、ただ内部が広かっただけなんだよ?
それを源さんが「やるなら徹底的に遊……中も作ろうや」と言い出したせいでこうなったんだよ。
内装まで気を使ってもらえて嬉しいんですけど。
ただ「もうちょっと分かりにくいように自重して下さいよ」と源さん達に言ったら、異口同音で「お前が言うな」と返ってきたんだよ。
いや、確かにそうなんだけど。
したくてこうなった訳じゃないんだけどなぁ。
それにだよ。
こんないい馬車なのに、ボクに請求されたのは材料費のみだったんだ。
今回手に入れたお金の殆どをそのまま作ってくれた職人さん達に渡すつもりでいたのに、「あんたからは経費以外は要らん」だの、「大事にしてくれたらそれでいい」だの、「遊ばせてもらっただけだから」とか。
全員が全員、口を揃えて断ってきたから、それも頭を悩ます原因になってしまった。
確かに【円卓】の生産職人なら、お金なんて自力で山ほど稼げるだろうとは思うんだけど、それじゃボクの気がすまない。
アーサーさんと相談した結果、これまた褒賞で手に入れた生産素材用のガチャチケットを全部渡して山分けして貰うことにした。
普通にお金を渡すよりも、運次第でもっと価値の高い良い物が出る方がいいかと思ったわけだ。
その素材チケット枚数は、ボクだけで実に二百枚。
三種目とも一位を取ったせいで、ここまで膨れ上がったんだよね。しかもこの馬車に乗り込むみんなも出してくれたもんだから、それこそとんでもない量になった。
まあこっちのガチャチケットも、最初はぶちぶち言いながら返却しようとしてきたけど、感謝のプレゼントだと伝えて強引に渡した。
最終的にはぶっきらぼうではあったけど、ちゃんと受け取ってくれたからホッとしている。
今後もお世話になるかもしれない人達だ。そこはしっかりと対応しておかないとね。
で、この馬車を牽く担当は、もちろんリンになっている。本人たっての熱烈な要望でもあり、全会一致でそれは決まった。
聖獣である麒麟が牽く馬車だという話題で、更に目立つことになってしまったのはご愛敬。
ボクとティアの眷属の中では、リンしか馬車を牽けそうな人物(?)しかいないんだから仕方ないっちゃ仕方ないんだけど。
そうそう。
あの時のシステムアナウンスで精霊女王様から加護を戴けたことが分かり、そしてティアとカグヤの寵愛がランクアップしたんだ。
ティアの称号はまあいいとして、相変わらずカグヤの称号は誰が決めてるんだと問い詰めたくなるほど酷いモノなんだけど、本人はその話を聞いて大いに喜んでいたから、それ以上考えまいと誓う。
それにしても……深愛、か。
あの時のエターニア様の承認とキスが原因なんだろうけど、これまた物議を醸しそうな称号になっちゃったなぁ。
寵愛より上の称号を手に入れたことは、その名称のせいで今の所は誰にも言ってないけど、〔精霊女王の加護〕と〔承認〕を得て、御子としての能力と加護衣の性能が向上したことだけは伝えてあった。
技名称は変わっていないけど、中身は全く別物に近くなっている。ちなみにその能力の説明が次の通りだ。
〔雷精の侍獣巫女〕
相愛なる想いと共に、本来の力を取り戻して覚醒した雷鳴の精霊の力を全て受け継いだ真なる姿。
今まで通り中級精霊として実体化させ契約するだけでなく、契約枠を消費し、契約精霊の新たな力と姿を想像通りに与えることも可能となった。
契約できる雷獣枠は〔精霊化〕のレベルが五の倍数毎に一体追加となり、追加契約するか、既存精霊の強化かどちらかを選べる。
ただし使役雷獣が本来の力を最大限に発揮できるのは、侍獣巫女と変化している時のみというのは変わらず。使役中は基礎MPとPT枠を消費する。
使役雷獣の強さは種族レベルに加え、〔精霊魔法〕及び〔精霊化〕レベルにも依存するようになり、全体的に強化がなされた。
更に使役雷獣の能力を一時的に上昇させ、秘められた力を解放させる〔限界突破〕を使用することが出来る。
INT/MND/AGIをはじめ、知覚及び感知能力に補正大。
雷系精霊魔法の発動及び威力に補正極大。
解除後のクールタイム中のデメリットとして、全ステータスが以前より更に弱化し、その間〔衰弱〕のステータス異常が強制発動され続ける。対応スキルで衰弱症状の軽減は可能。
また〔限界突破〕を実行した使役雷獣は、その効果が切れると同時に〔気絶〕のステータス異常が強制発動する。
〔月精の寵授巫女〕
自らの命よりも大切な貴方の為に、自らの全てを捧げる意志を示した月の精霊の力を全て受け継いだ真なる姿。
月系精霊魔法以外の全ての攻撃及び防御スキルを封印する代償として、自身が認める同一エリア内の全味方へ全ステータス強化付与を行い続ける。
付与基本値は〔精霊化〕のレベルと等価なのは変わらないが、〔気品〕〔魅力〕両スキルを所持し〔舞踏〕〔祈誓〕いずれかのスキルを実行すると、その効果は大きく上昇するようになった。
その付与倍数は発動者との繫がりの差によって、下記のいずれかに分類される。この力は付与魔法と重複する。
全味方/一.五倍
自身のフレンド/二倍
所属クランメンバー/二倍
同一PTメンバー/三倍
祈りを捧げることにより、対象一人に自身の全ステータス(装備品値含む)を二倍にした上で付与、更に盟約を結んだ精霊の能力をも付与可能とし、身体ダメージ及びMP消費、デメリットを引き起こす状態異常全てをその身で引き受け自身を身代わりとする秘奥技〔献身〕を発動させる事が出来る。
状態異常耐性及び感知能力に補正大。
月系精霊魔法の発動及び威力に補正極大。
解除後のクールタイム中のデメリットとして、全ステータスが以前より更に弱化し、その間〔衰弱〕のステータス異常が強制発動され続ける。対応スキルで衰弱症状の軽減は可能。
また〔献身〕を解除した際には、必ず〔気絶〕のステータス異常が強制発動する。対応スキルで気絶時間の軽減は可能。
名 称:雷精の加護衣・改
状 態:特殊
種 別:装備品(セット装備)
耐 久:∞
重 量:1
付与枠:1
効 果:
精霊女王が感謝の気持ちを込めて作成した個人認証型御子専用装備一式。〔雷精の侍獣巫女〕を発動すれば自動的に装備され、解除すると外れる。持ち主に合わせて成長していく不思議なワンピース。
付与枠には自身のパッシブ系スキルを一つ自由にセットすることができ、その効果量は固定ながらも重複する。
秘技の進化と精霊女王の加護を受けて覚醒が促進されており、装備中は下記の効果が追加発動する。
INT/MND/AGIが精霊化のレベルに依存して上昇(レベルに対して1/4)
消費MP1/3
精霊化解除後のクールタイム1/4
名 称:月精の加護衣・改
状 態:特殊
種 別:装備品(セット装備)
耐 久:∞
重 量:1
付与枠:1
効 果:
精霊女王が感謝の気持ちを込めて作成した個人認証型御子専用装備。〔月精の寵授巫女〕を発動すれば自動的に装備され、解除すると外れる。持ち主に合わせて成長していく不思議な羽衣風ドレス。
付与枠には自身のパッシブ系スキルを一つ自由にセットすることができ、その効果量は固定ながらも重複する。
秘技の進化と精霊女王の加護を受けて覚醒が促進されており、装備中は下記の効果が追加発動する。
状態異常耐性値が精霊化のレベルに依存して上昇(レベルに対して二倍)
消費MP1/3、及び体力(HP)の自動回復付与
精霊化解除後のクールタイム1/4
このように〔精霊化〕の性能強化が恐ろしいレベルで行われていた。
カグヤの方は全体的にレベルアップしたとは取れるんだけど、ティアの方は今までとは全く違うことだけは分かる。
ハクやテンライ、リンの強化が出来るようになったのも大きい。
今までレベル十ごとだったのが五ごとになって、使役可能枠が余ることになった。ボク一人で決めても良かったんだけど、折角だしとみんなに相談した結果、レントからある提案があった。
その提案とは、防御型と火力型の使役雷獣を確保する事。
確かに言われてみればその通りなんだけど、自分じゃ気付かなかった。
ハクは元白虎で機動型陸戦近接タイプ。
テンライは機動型空戦偵察タイプ。
リンは元麒麟で機動型陸戦補助タイプ。
ボクの使役獣って、ボク自身が火力を担当するからか、火力特化タイプもいないんだけど、盾となれる防御特化タイプもいないんだよね。
これは邪霊戦において『避ける』『躱す』といった回避を重点に置いてきた為だったんだけど、確かに堅牢な防御タイプも考えなきゃいけない。
レントからは、「白虎と麒麟、そして朱雀化した鳥がいるんだから、あの麒麟を喚んだ時みたいに、防御タイプの玄武と火力タイプの青龍でも喚べばいいんじゃないか?」とあっさり言ってくれるけど、あれはたまたまそうなっただけで狙ってやった事じゃないんだからね。
まあレントが言いたい事もよく分かる。
あいつが言い出したきっかけなんだけど、それはみんなの前で〔使役獣強化〕の能力を試しとばかりにテンライに使用したら、文鳥のように小さく可愛らしかったその姿が大きく成長した事に端を発する。
所々黄色ががかっていたものの、雪のように白い体色をしていたテンライ。
それが燃え上がるような焔のような朱色へと変わり、随分と長くなった尾羽には金色のラインが走るという姿へと変化。
しかも鳳のように大きく、そして精悍で力強い体躯へと成長した上、時折黄金色の燐光が羽ばたきと共に周囲に舞い溢れるという幻想的な雰囲気を纏うようになり、契約したばかりのテンライとは似ても似つかぬ姿へと変貌を遂げたのだった。
それを見て「やっぱり朱雀になっちゃうんだね」とはティリルの弁。
いったい何がやっぱりなのかは知らないけど、強い鳥をイメージした際、確かによくある四聖獣の『朱雀』を思い浮かべちゃったから、それに引っ張られたかも知れなかった。
まあそんな格好のいい姿になっても、相変わらず舌っ足らずな甘えた思念ではあったけど。
うん、ギャップが酷い。
まあ、それはさておき。
パーティー枠の事を考えれば、レントの言う通り、使役獣は五柱までにして、後はひたすら強化をしていく形が一番いいんだろうな。
残る二枠も近いうちに契約しようと思うんだけど、みんなが言うような亀以外に防御特化タイプの召喚獣が思い付かない。
このままじゃ無意識なイメージに引っ張られて玄武になりそうな気もする。
それが駄目な訳じゃないけど、この追加の件は一旦保留として、後日行うことにしたのだった。
もちろんティアともゆっくり話し合うつもり。
そしてメリットが大きくなれば……という奴で。
やはり良いことばかりではなくて、もちろん精霊化解除によるデメリットも悪化している。
計算したところ、半減だったステータス低下率が更に半分の四分の一になってしまっている上、〔衰弱〕まで強制発動。
しかも各戦闘形態の必殺技みたいな力を使えば、気絶のおまけ付きだ。
ただそのデメリットの悪化を軽減する形で、加護衣の強化も成されている。この精霊化解除後のクールタイムの軽減は非常にありがたかった。更に半分になったからね。
エターニア様には、感謝の言葉しかない。
こちらの世界で一ヶ月もあった投票戦の間、馬車の製作などの次の旅の準備に明け暮れていたから、その間にボクの新しい能力について、色々試している。
精霊化を解除すると必ず〔衰弱〕してしまうようになっちゃったからね。
ちゃんと把握していないと危険だし。
ステータスダウンと〔衰弱〕は一緒じゃないのと思ったけど、この衰弱の効果は肉体だけでなく精神面、それと魔法やスキルにまで影響するのが判明した。
しかも結構体が怠く感じるし、その状態で動かないといけないのはかなりの骨だ。
当然ながら、衰弱に対応する耐性スキルも取っている。それでも寝る時間でクールタイムを消化したいと強く思うくらいキツかったんだよね。
じゃ〔精霊化〕するなよと言われそうだけど、その選択肢はなかった。
あまりにも〔精霊化〕の時の力が便利で、しかも強いせいだ。大切な人を守る力を持てる。
だからそれ無しでいれば、心許ないと感じてしまうようになってしまっている。
戦闘面だけじゃない。
二柱との心の繋がりが心地よく感じている。
その事実が、女の子になってしまう最大級のデメリットよりも、メリットの方が大きいと思ってしまって。
故に外せない。
やっぱりボクは色々弱いなぁと思いながら、内心溜め息を……。
「ほら♪」
そんなことを考えていたら、いきなりレトさんがボクの頬っぺたを左右に引っ張ってきた。
「ふぇ!? ふぁひぃふるんふぇふふぁ!?」
「あは♪ 何言ってるか分かんないわよ」
「誰のせいですか!」
抗議の声を上げるボクの頭を撫でつつ、レトさんは言う。
「まーた一人で悩んでいたでしょ。『ボクなんかが~』って」
「……」
「ほらほら、目を逸らさない。ほんとセイちゃんは分かりやすいわね。少しくらいポーカーフェイス出来ないと駄目よ」
「けど、これはボクの問題……」
「例えそうだったとしても。あなたには常に傍にいてくれる人達が、頼れる人達がいるでしょ。それを否定しちゃ駄目」
「……でも、ボクなんかに……」
「はい、『でも』と『ボクなんか』は禁止!
次そんな事言ったり考えたりしたら、その可愛らしいお口を塞いじゃうわよ。
──その、私の口で」
「ふぁ!? い、いいいったいなんて事言うの!?」
「あ、真っ赤になった」
「そ、そういうレトさんだって、顔が真っ赤っかじゃないですか!」
「当たり前じゃない。私だって初めてなんだから。男の子にこんな自制の効かない想い抱くの」
「……あ、うぅ」
こちらの世界で言えば、一か月前のイベントで会ったばかりのレトさん。
出会った時から押しが強かった彼女だけど、今やボクに対する好意を周囲に全く隠そうともせず、隙あらばとこのように迫ってきて。
「男の子なセイちゃんには分からないかも知れないけどね。いつだって女の子は好きな人の為になりたい、傍にいたいと全力で考えてるモノなんだから」
「そんな……ボクなんかでいいんですか?」
「はい、言っちゃったね。お仕置きよ。はむっ♪」
「むぐっ!?」
有言実行とばかりに、ボクの口を口で強引に塞いできたレトさんに、目を白黒させる。
この時のこれが、レトさんとの初めてのキスで。
「えへへ……。遂にやっちゃった、あげちゃった♪
ねぇ、私のファーストキスどうだった? どんな味? どんな気分?」
「し、知りません!」
「あーもう。拗ねちゃって♪ もう可愛い~♪
ほらほら~。ぎゅう~♪」
止めとばかりにギュッと抱き締めてくるレトさんの想いがとても暖かくて。
事あるごとに思考の迷路に陥りそうになるボクを救ってくれるみんなが。
だからボクはそんな彼女達の一人、レトさんへと感謝の言葉を返そうと口を開き……。
「おーい、セイ。もう起きてるか?」
「レトさん。そろそろ安全地帯に着くので、セイくんを起こし……」
ノックもなしにガチャリと扉を開けて顔を覗かせたレントとティリルが、こちらの体勢を見た瞬間に固まった。
当然ボクも突然の出来事に固まってしまう訳で。
唯一レトさんだけが一人上機嫌で暴走してて。
周りが全く目に入ってないようで、そっとボクの頬を押さえて自分の方へ向けさせると、もう一度唇を塞いできた。
二人の目の前で。
「……あー、すまん。俺は何も見てないから……。じゃあな」
「レント!? ちょっ、まっ……!?」
こちらを見てこの後の展開を察したレントが、その顔をひきつらせながらそくささと逃げ出す中、わなわなと震え始めるティリルを見て、何もしていないのにボクまで逃げたくなってきた。
「レトさん! じょ、条約違反です!
一時間ごとの交代膝枕には、キスのオプションは入ってません!」
「オプションって何!?」
訳のわからないことを叫んだティリルに思わず突っ込んでしまった。
「あはは……なんか気持ちのブレーキが効かなくなっちゃって」
「レトさんはいつもそうですよね!? ああ、もうどうしていつも抜け駆けしようとするんですか!」
レトさんの腕の中にいるボクを引っ張って、自分の腕の中に強奪すると、
「し、しかもセイくんのく、くち……唇……に」
トマトのように赤く染まってしまったボクの顔を至近距離で見つめ、何を考えて思ったのか、ばふっと音が出たように一瞬で茹で上がる。
「わ、わたしだって! ずっと誰よりもセイくんの事を想って……でも二人には迷惑だろうと、必死に……必死に我慢してきたのに! ずっとずっと、わたしはあなただけを見てきたのっ!!」
「ティ、ティリル?」
勢いがついてしまったのか。
引っ込みがつかなくなったのか。
紅潮し潤んだ瞳で、いつになく強い口調でボクに迫ってきて。
「なのに……なのに。こんなのもう耐えられないよっ! これ以上見てるだけはいやっ! わたしもセ、セイくんのことが大好き! 一生、何があっても愛し続けるよっ! だからずっと隣にいさせて欲しいの! 何でもするから、セイくんになら何されてもいいから!」
「うむぐっ!?」
目をギュッと閉じたまま、勢いよく口を合わせてきたティリル。ただし勢いが良すぎたのか、前歯がかち合い、痛みが走った。
「……いつぅ」
「ふえぇ……い、いちゃぁ……。
──うぅ、ずっとこの瞬間を夢見てたのに、これなんか違うよぉ……」
「……何やってるのよ、二人とも」
お互い口を押さえて痛みに悶えるボク達。その様子を呆れたようにレトさんが言うのを見て、
「「レトさんが言わないで下さい!」」
二人の息が揃い、ボク達は突っ込みを入れるのだった。
───────────────────────
名前:セイ
種族:古代森精種 種族レベル:33
職業:御子 職業レベル:14
HP:750
MP:715
STR:22
VIT:42
AGI:30
INT:55
MND:55
DEX:22
※上記はスキル及び装備品を含まない基礎ステータス
BP:0
SP:89
○所持スキル
種族系
〔精霊眼:森羅万象〕〔浮遊(精霊化時)〕〔物質透過(精霊化時)〕new
職業系
〔精霊魔法Lv89〕〔精霊召喚〕〔精霊顕現Lv68〕〔精霊化Lv27〕〔念話(対精霊)Lv55〕〔依り代Lv57〕
攻撃系
〔杖術Lv21〕〔体術Lv41〕〔魔法具操作Lv49〕
補佐系
〔メンタルアップLv4〕new〔HPアップLv45〕〔MPアップLv7(再修得)〕〔STRアップLv33〕〔VITアップLv41〕〔AGIアップLv45〕〔INTアップLv6(再修得)〕〔MNDアップLv6(再修得)〕〔DEXアップLv23〕〔気配察知Lv62〕〔夜目Lv57〕〔消費MP減少Lv61〕〔騎乗Lv49〕〔舞踊Lv53〕〔祈誓Lv23〕〔気品Lv28〕〔魅力Lv33〕
耐性系
〔毒耐性Lv35〕〔麻痺耐性Lv32〕〔暗闇耐性Lv23〕new〔沈黙耐性Lv23〕new〔封印(魔法)耐性Lv23〕new〔遅延Lv16〕new〔衰弱耐性Lv7〕new〔気絶耐性Lv3〕new
生産系
〔採取Lv39〕〔調合Lv20〕〔料理Lv89〕
◯クラスアップスキル
〔メンタルアップ〕(上限Lv100)
必要SP15(上級技能書対応)
統合スキルの一つ。限界値は高い。元となったスキルは消滅するが、再修得可能。
MPの値に補正。現在値にスキルレベル×3をプラス。
INTとMNDの値に補正。現在値にスキルレベル/2(端数切り上げ)をプラス。
○同行精霊
精霊王女(+ユズハ)
月の精霊
雷鳴の精霊
ハク(元聖獣・白虎)
テンライ(鳥型中級精霊)進化×1
リン(元聖獣・麒麟亜種) new
○精霊化形態
〔元精の戦巫女〕
〔雷精の侍獣巫女〕〔覚醒〕
〔月精の寵授巫女〕〔覚醒〕
○称号
精霊王女の寵愛
精霊王女の御子
雷鳴の精霊の深愛new
雷鳴の精霊の最愛のお兄様new
月の精霊の深愛new
忠犬(?)カグヤのご主人様 new
静寂の精霊の祝福
駄メイドのご主人様
精霊女王の加護new
女王様のお気に入りnew
精霊ホイホイnew
精霊女王の許状new
三冠王new
○新追加装備
女性服及び着ぐるみ更に追加(マツリ作)
雷精の加護衣・改
月精の加護衣・改
○新取得アイテム等
液体用小樽(在庫補充済)
食材多数
上級技能書×1
(上級技能書はSP15まで対応)
中級技術書×3
(中級技術書はSP10まで対応)
食材引換券200枚
品物引換券200枚
精霊石(大)1個
精霊石(中)4個
精霊石(小)8個
◯イベント褒賞
・総合個人一位
SP+10
魔法書引換券1枚(中級まで/譲渡可)
技能書引換券1枚(中級まで/譲渡可)
上級ポーション〔最高品質〕詰め合わせ×1
中級ポーション〔最高品質〕詰め合わせ×3
下級ポーション〔最高品質〕詰め合わせ×5
状態異常回復薬〔最高品質〕詰め合わせ×5
上級ポーション〔高品質〕詰め合わせ×3
中級ポーション〔高品質〕詰め合わせ×5
下級ポーション〔高品質〕詰め合わせ×10
状態異常回復薬〔高品質〕詰め合わせ×10
500万G
食材引換券50枚セット
素材引換券50枚セット
品物引換券50枚セット
精霊石(中)1個
精霊石(小)3個
称号『第三回総合個人一位』
・各サーバー個人一位
SP+30
魔法書引換券1枚(上級まで/譲渡可)
技能書引換券1枚(上級まで/譲渡可)
魔法書引換券1枚(中級まで/譲渡可)
技能書引換券1枚(中級まで/譲渡可)
上級ポーション〔最高品質〕詰め合わせ×5
中級ポーション〔最高品質〕詰め合わせ×10
下級ポーション〔最高品質〕詰め合わせ×15
状態異常回復薬〔最高品質〕詰め合わせ×20
上級ポーション〔高品質〕詰め合わせ×10
中級ポーション〔高品質〕詰め合わせ×15
下級ポーション〔高品質〕詰め合わせ×20
状態異常回復薬〔高品質〕詰め合わせ×30
1000万G
食材引換券100枚セット
素材引換券100枚セット
品物引換券100枚セット
精霊石(大)1個
精霊石(中)3個
精霊石(小)5個
称号『第三回各サーバー個人一位』
・サーバー別団体一位は決勝戦への切符のみ
・団体総合一位
PV化
SP+20
魔法書引換券1枚(上級まで/譲渡可)
技能書引換券1枚(上級まで/譲渡可)
魔法書引換券1枚(中級まで/譲渡可)
技能書引換券1枚(中級まで/譲渡可)
上級ポーション〔最高品質〕詰め合わせ×1
中級ポーション〔最高品質〕詰め合わせ×3
下級ポーション〔最高品質〕詰め合わせ×5
状態異常回復薬〔最高品質〕詰め合わせ×5
上級ポーション〔高品質〕詰め合わせ×3
中級ポーション〔高品質〕詰め合わせ×5
下級ポーション〔高品質〕詰め合わせ×10
状態異常回復薬〔高品質〕詰め合わせ×10
500万G
食材引換券50枚セット
素材引換券50枚セット
品物引換券50枚セット
称号『第三回総合団体一位』
・称号『第三回系』が三種取得の為、称号『三冠王(第三回)』として統合
次話より新章入る予定です。